社内の各部門をつなぐ「架け橋」へ
カスタマーマーケティング部のミッションは、1to1マーケティングのための顧客対応だけではない。一貫した顧客体験を提供するために、社内の「ハブ」となることが求められたという。
「カスタマーマーケティング部は、創設当時から現場と現場をつなぐ部署になる、というミッションをもっています。たとえば、コンタクトセンターや乗務員の声を収集するだけでは足りず、集まった声の内容を嚙み砕いて理解して、問題点を分析したら、その内容をきちんと反映する必要があります。納得がいかない改修は抵抗されるだけなので、システム開発部門やサイト構築部門に、改修の意図をきちんと理解してもらわなければならないのです。私たちが社内の“架け橋”となれれば、抵抗は最小限になるはずです」(磯田氏)
WILLERは、業務の内製化を心がける社内方針を持ち、Marketing Cloudもカスタマーマーケティング部が主導となって自前で運用している。「内製化することで、顧客の声をダイレクトかつ即座に施策へと反映できる」と磯田氏は話す。もちろん、即座の反映には部署間の密なコミュニケーションが重要となってくる。2名は積極的に他部署とコミュニケーションを図ることを心がけているという。
「Marketing Cloudは会社として新しい取り組みだったので、最初は周りからの理解がない状況でした。『一体何をやっている部署なの?』と。そこで、どういった取り組みを行い、どのような成果が出ているのか、小さく細かなことでもとにかく会議で話を出すなどして、社内共有することを徹底しました。その甲斐があって、少しずつ様々な部署から“こういうメールを送ってほしい”“カスタマーマーケティング部ではどこまでできる?”といった積極的な提案の声が増えています」(杉山氏)
メール開封率が7%から40%へ劇的に改善
導入から1年以上が経過。カスタマージャーニーに基づいたメール配信によって、開封率は7%から40%に伸長したという。「お客様が情報を欲しいと感じるタイミングもつかみつつあります」と杉山氏は述べる。
また同社は、Marketing Cloudの導入とともに「Journey Builder(ジャーニービルダー)」も積極的に活用している。チャネル別、デバイス別のカスタマージャーニーが描きやすくなるツールの活用で、顧客行動のタイミングを視覚化し、顧客が接しやすいチャネルへの働きかけを可能にしたのだ。
「バスの場合、新規のお客様が再度ご利用いただくケースがあまりなく、再利用へのハードルが高い現実があるので、リピートの促進策で行うクーポンの配信は、Journey Builder でタイミングを計るように変更しました。効果的なタイミングを模索中です」(磯田氏)
Journey Builder 活用の最大の利点は、有料のプレミア会員数の増加が挙げられる。WILLERでは、年会費1,080円の有料会員を設けており、有料会員は1回の乗車ごとに300円引きの特典が受けられる。一方で、特典の訴求が不十分で、有料会員数の伸び悩みがボトルネックとなっていた。
「2往復すると1,200円引きですので、3度乗ったお客様には“損をしているかもしれませんよ”というメールを送りました。その結果、プレミア会員になる割合が現段階で約150%も増えています。プレミア会員になると、1年のLTVが1,000円も上がるというデータも出ているので、強い手応えを感じています。Twitterで“会員になった!”というつぶやきもちらほらと見かけるようになっています」(磯田氏)