Journey Builderで描き、ユーザー毎に最適なチャネル・コンテンツを採用
同社のカスタマーマーケティングは、Journey Builderで問題点を可視化し、Marketing Cloudでデータを管理しながら最適なタイミングで施策を実施する。この循環こそ、カスタマーマーケティング部が他部門の架け橋となるからこそ得られた知見という大きな武器である。
「高速バスチケットとテーマパークへの入場チケットのセット販売策もやっていますが、ここでも新規が多い一方で、リピーターが少ない懸案を抱えています。つまずく要因を“チケットの受け取り方”や“乗り場の不案内”などと挙げていきながら、Journey Builder を使ってお客様一人ひとりを追いかけて、チャネル別で適したサポートをするようにしました。たとえば、利用促進のためのメールをすぐに送らず、“半年前、行きましたよね。また行きませんか?”と180日後に送る設定にしたり、Journey Builderで最適なタイミングを管理しています」(杉山氏)
「テーマパークのカスタマージャーニーを突き詰めると、ご利用から半年以降のお客様が増える傾向も見えてきています。他にも、コンサートユーザーには記念日や誕生日に紐付けた働きかけを加えるなど、イベントごとで対応を変えながら、今後はそれぞれに適ったタイミングで最適なコンテンツを用意したいです」(磯田氏)
訪日時のトリガーに WILLERが目指すこれからの顧客体験
着実に成果をあげるWILLERだが、これからどのように取り組みを広げていくのだろうか。最後にそれぞれへ今後の展望を伺った。
「当社は現在、日本人のお客様を中心にサービスを展開していますが、今後は海外からの訪日外国人にももっとアプローチし、WILLERの利用を訪日時のトリガーにしていきたいと思っています。また、メール中心の運用から徐々にLINE連携も始めているので、プッシュ通知を活かしたLINE活用の強化もしていきたいです」(杉山氏)
「移動業界は価格で比較されがちですが、『楽しい体験ができるから』という理由で選んでもらえるよう、これからもお客様に寄り添ったサービスを展開していきたいです。そのために、今後はMarketing Cloudの活用幅を広げ、サイト改修や乗務員の接客態度の改善にも取り組んでいこうと考えています」(磯田氏)
カスタマージャーニー研究プロジェクトチームのコメント
加藤:顧客の声に耳を傾ける。その先に最適なカスタマージャーニーがあるわけですが、その実現は容易ではありません。同社では、顧客の「困っていること」へ情報収集とその理解、理解をコミュニケーションにまで落とし込める新しい組織体制、ジャーニーの実装、この3つが実現されています。これはひとえに磯田氏のリーダーシップと杉山氏の実行力の高さ、そして顧客と向き合うお二人の真摯な姿勢で実現されていることが実感できるインタビューでした。ビジョンを実現するこれからのマーケターのあり方だと感じます。
押久保:同社のカスタマーマーケティング部は、創設当時から現場と現場をつなぐ部署になる、というミッションをもっています。社内の架け橋になるといえば聞こえはよいですが、他部署からの信頼を得るのは並大抵の努力ではできません。その壁を突破した大きな要因の一つは磯田さん、杉山さんのお人柄なのかなと取材を通して感じました。1to1マーケティングの実現も、結局は人次第なのでしょう。
カスタマージャーニー研究プロジェクトとは?
「カスタマージャーニー」、顧客の一連のブランド体験を旅に例えた言葉。デジタルやリアルの接点が交差し、顧客の行動が複雑化する中、「真の顧客視点」に立って、マーケティングを実践する重要性が増してきました。
カスタマージャーニーに基づいたマーケティングの必要性は、その認知が進む一方で、「きちんと“顧客視点に基づいたシナリオ”を作成し、運用できている企業はまだまだ少ない」多くのマーケターに意見を聞くと、そのように認識されています。
今回、押久保率いるMarkeZine編集部とセールスフォース・ドットコム マーケティングディレクターとして、各企業とジャーニーを研究してきた加藤希尊氏を中心に、共同でカスタマージャーニー研究プロジェクトを立ち上げました。本プロジェクトでは、「顧客視点のマーケティング」における成功例を取り上げ、様々なアプローチ方法をご紹介していきます。その他の成功例はこちら。