エンドツーエンドの視点で顧客課題を解決
IBMはコンピュータの会社として知られ、近年ではコグニティブ・コンピューティング・システム「IBM Watson」、まったく新しいアプローチにより従来のコンピュータの限界を超えた計算能力で新たな時代を切り拓く量子コンピュータなどの取り組みを進めている。
同社はマーケティング領域においてもSilverpop、Tealeafなど7社を買収し「Watson Marketing」としてポートフォリオを構築している。その中で、樋口氏が強調するのが「エンドツーエンドの視点」だ。
「顧客体験を考える時、顧客とのコミュニケーションやECの使い勝手だけでなく、商品の配送スピードなども重要。そういった裏側への投資も必要だ」と同氏が語るように、部分的ではなく全体的な視点での支援が求められる。IBMでは「Watson Marketing」以外にも、ECやオムニチャネル・コマースに関しては「Watson Commerce」、受注管理やフルフィルメント、サプライチェーンに関しては「Watson Supply Chain」を用意することで、顧客の目に見えない部分の最適化も支援している。
顧客体験を重視する企業が増えている中で、樋口氏は、顧客の購買に至るまでのニーズや関心の推移、チャネルをまたいだ行動を理解し、「個客」にフォーカスしたマーケティングを実現する「Watson Marketing」の最新テクノロジーと顧客事例をいくつか紹介した。
マツモトキヨシが離反率を8%改善、その理由は
最初に紹介したのは、インバウンドの波に乗り順調に売上高を伸ばしているマツモトキヨシが採用しているというMAの事例だ。マツモトキヨシは売上高1兆円を目指しており、全国にある合計1,600店という店舗展開を生かしたオムニチャネル化を進めている。適切なタイミング、場所、デバイスで顧客にアプローチするためには、購入に至るまでのニーズから関心の推移、チャネルをまたいだ購買行動をより深く理解しなければならない。
同社は購買データの分析はしていたものの、「先手を打つような体制、仕組みづくりが整備されていなかったため、限定的なプロモーションしか行うことができず、チャンスを取り逃がしていた」と樋口氏。
そこでIBMは、予測分析ソフトウェア「IBM SPSS」を中心とした分析プラットフォームとキャンペーン管理プラットフォーム「IBM Campaign」を連動させた仕組みを構築。これにより、シナリオ分析から施策の実行、効果検証に至るPDCAサイクルの自動化を実現したという。
具体的には、顧客の興味や関心などの予測分析を行い、その結果をもとにポイントカード会員へレシートクーポンやキャンペーンメールを送信。予測分析から先手を打った施策は成功し、同会員の離反率は約8%も削減された。マツモトキヨシの担当者も満足とコメントした。