個客へのアプローチに必要なデータとは
次に樋口氏は、“個客”マーケティングを実現する方法について解説した。「一人ひとりの顧客=個客」へアプローチするには、基本となる行動データや属性データ以外のデータを掛け合わせることが求められる。樋口氏は様々なデータがある中で天気予報、位置情報、サイコグラフィックデータの活用が重要だとした。
まず、天気予報。IBMは2017年にThe Weather Companyを買収し気象データの利活用を進めており、重要なデータと捉えているようだ。
たとえば全国展開するチェーン店の場合、札幌と那覇の2店舗周辺が同じ15度だったとしても、暑かった日が続いた後の15度、10度が続いた後の15度では、それぞれ「涼しくなった」「暖かくなった」と感じるため、顧客が求める商品も変わってくる。そこで顧客属性に、天気による顧客心理の変化を加えることで、地域ごとに顧客行動を「先読みした」プロモーションの展開が可能になる。
続いては位置情報。こちらに関してもIBMは、ロケーション・トリガー機能とAIによるターゲティング機能の提供を通じて個客へのアプローチを支援する。
ロケーション・トリガー機能は位置情報をもとにメッセージ配信ができるもので、たとえば店舗の半径500メートル以内に入ったら、顧客のスマホにメッセージを配信することができる。
一方、AIによるターゲティング機能では、通知のタイミングをより最適化し、顧客の読みたいコンテンツを読みたいときに配信が可能だ。たとえば、働く20代女性に話題の新作コスメ特集を朝の通勤時間帯に配信したり、ワインのリピーターに対して新着ワイン特集を夕方に配信したりして、最寄りの店舗への来店を促すことも可能だ。
サイコグラフィックデータを活用して顧客に合った情報を
最後の価値観、ライフスタイル、趣味などのサイコグラフィックデータに関しては、日本航空のバーチャルアシスタント「マカナちゃん」の事例を通じて解説した。
「マカナちゃん」はチャット形式でハワイのレストランやアクティビティといった様々な現地情報をユーザーに合わせておすすめするサービス。「Watson」の画像認識機能を活用しており、写真からおすすめスポットを提案してもらうこともできる。
また、旅行サイトの「トリップアドバイザー」とも連携しているため、最新の口コミ情報なども合わせてチェックすることができる。
同サービスによる高精度な提案を実現しているのは、SNS、コミュニティサイト、チャットボットなどから自然言語を分析して、パーソナリティ(性格)を推定する「IBM Watson Personality Insights」だ。知的好奇心、誠実性、外向性、協調性、感情起伏の性格(Big 5)、現状維持、快楽主義など5つのセグメントを持つ価値観など合計95のセグメント因子で性格を予想する。