「ナポリタン味で赤字」テレビ取材で公表
――なかなか、テレビ取材で赤字をみずから公表しませんよね(笑)。
それができるところも、当社の強みかなと(笑)。上場企業だったら絶対できないじゃないですか。お詫び広告に関しては取材も特に多かったですが、全部受けて、Yahoo!ニュースのトップにも何度も載りました。値上げをネガティブにではなく楽しんでもらって、期待していた売上回復にもつながりました。「値上げしたのに売上増」という点も記事になることを見越していたので、この一連の流れにはかなり手応えがありました。
――メディアも一般のファンも、どんどん巻き込んでいっているんですね。
それが基本的なスタンスですね。普通は隠すようなことも含めてオープンな姿勢でいると、メディアも好意的になってくれますし、こちらの意図に乗るような形でおもしろがってくれます。
ただ、そもそも情報量が膨大になる中、大手メーカーもネタ化するパブリシティ戦略に予算をかけ始めて、一般の皆さんも慣れてしまってなかなか以前のようには効かなくなっているとも感じています。なので、今は改めて商品自体に重点を置き、いろいろな場で皆さんが好きに広めてくれるような商品設計を模索しています。
――では、現在の方針をうかがえますか? ここまでくると、一度も買ったことがない新規顧客はもういないんじゃないかと思うのですが。

基本的にここまでずっと顧客の拡大を目指してきましたが、おっしゃるとおり、ありがたいことに「ガリガリ君を一度も買ったことがない」人は少なくなっています。そこで国内では、改めてガリガリ君が日本全国の皆さんの日常会話に上ることを目指して、たとえば地域限定商品を強化したり、シニア層にもう一度ガリガリ君の良さを知ってもらおうと、シニアのゴルフ選手権でサンプリングしたりと、草の根的な活動を重ねています。
一方で新規としては、現地企業の協力を得て海外展開に注力しています。たとえばタイでは、Jリーグの北海道コンサドーレ札幌とパートナーシップを締結し、タイ出身の選手を起用した広告を展開しています。今はメディアや企業にも「赤城乳業なら何かやってくれる」というイメージが広まったので、新しい取り組みのパートナーとして想起してもらえるようにもなりました。
スタッフに裁量を与え“好きなこと”を追求
――冒頭でメンバーが6人とうかがいましたが、ガリガリ君以外にもたくさんの人気ブランドがある中で、萩原さんの“巻き込む”手腕と実績をメンバーにどう引き継いでいこうとお考えですか?
裁量を持たせてくれる会社だから、私も自由に実験的なことができたんですが、たしかにその分、自分の“嗅覚”みたいなものを伝えていくことは課題でもありますね。
ただひとつ言えるのは、メンバーにも自由に、好きなことをやってもらいたい。なので仕事の自由度は与えるようにしていますね。私自身、ガンダムが好きでバンダイさんと“シャア専用アイス”を開発したりしてきて、数々のコラボ先企業の方からたくさん勉強させてもらいました。預ける予算も少額なら、別に失敗しても大きなダメージにはならないし、失敗から学んで成長できます。
今年は「プレミール濃厚いちご」という商品で、女性スタッフが主婦向けの昼ドラのような際どいWebムービーを企画しました(笑)。これは絶対に私からは出なかった発想なので、それぞれが個性を活かして、「あそびましょ。」のメッセージどおり遊ぶように仕事をしていけたらと思います。
――最後に、今後の展望をひとことお願いします!
今後の課題は「『ガリガリ君 ソーダ味』の圧倒的定番化」ですね。この7月、夏では初めて7本入りのファミリーパックの売上が1本入りの売上を抜いたんです。ファミリーパックは前述の「日常会話に上ること」を推す一環で、家庭で楽しんでもらうために注力してはいるのですが、予想以上の反響でした。消費の仕方も日々変化しているので、お客様や市場の変化もしっかり捉えながら、圧倒的な定番を目指していきます。