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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

AIによるセレンディピティは人間の発想を刺激する

AIはパワードスーツとして人間を支援

――なるほど。こうした試みは、テレビ以外のマス広告にも横展開できるのでしょうか?

 データがあればできると思います。新聞や雑誌は、何号の何特集がどこで何部売れたのかといったデータを整えるのが難しそうですが、可能性はあると思います。弊社では、屋外広告にも応用が利かないかといったことを考えています。

 また、テレビでは視聴率を予測しましたが、マーケティング上では予測のモデルは様々なところで活用できると思います。テレビ番組のデータとTwitterの発言の両方を使った、トレンド予測の仕組みは既にできていますし、他には店舗の来店客数を予測し、広告を最適化するといった施策も可能性がありそうですね。クライアントの各事業で何を“予測”すると役立ちそうか、そのシステムが作れないか、既に動き出しています。

 2018年5月にリリースして反響が大きかった「ADVANCED CREATIVE MAKER」というシステムも、バナー広告を自動生成してCTRが高いものを予測して絞り込む、予測モデルを活用しています。1,000案から絞り込んだ10案を、実際に配信して精緻化するといったことが可能ですね。バナー広告を作ってきたクリエイターが開発を手がけたので、とても使い勝手はいいのですが、まだ人間が手を入れる必要はあります。

――となると、マーケティングやクリエイティブ領域でいくつもの活動が進みながら、現状では人間のサポートやアシストが中心ということなのでしょうか?

 そうですね、基本的にはそう考えています。人間の代替というより、単機能の道具として人間の思考能力を広げる方向に寄ってきていると思います。よくセミナーなどでも「AIはパワードスーツ」とお話ししているのですが、人間が身につけることで、その力やスピードが強化されるというイメージですね。

スタッフに裁量を与え“好きなこと”を追求

――ではマーケティング領域全体で、AIの活用は今後どうなっていくとお考えですか?

 全業界の中では、マーケティングにおけるAI活用は進んでいるほうだと思います。特にデジタル関連ではディープラーニングが出てくる前から回帰分析や機械学習を使った精緻化の研究がなされていたので、アドバンテージがあると思います。その上で、現在は各社がクリエイティブや、マス広告など非デジタル分野で模索しながら、いろいろな動きを見せています。まだこれからなので、非常にチャンスは大きいと思いますね。私自身、自分なりに仮説を持って、実験的な取り組みを複数進めている最中です。

――マーケターのAIに関するリテラシーも濃淡があると思いますが、どのような姿勢で役立てていけばいいでしょうか?

 そうですね、AIと言っても技術の幅が非常に広いので、業種や課題によって企業の活用のバリエーションも相当だと思います。そのため技術から入るのではなく、自社や自身の課題、今後なし得たいことを明確にした上で、いろいろな人とディスカッションして発想を広げることが大事かなと思います。

 もうひとつポイントは、トライ&エラーが重要だということですね。AIは一般的なシステム開発と違って、データ量が足りるのか、精度が出るのか、やってみないとわからない不確定要素が多いので、決め打ちが難しいです。いろいろ小さく試してみて、その中で可能性が高いものを仕事に活かせないか具体化していく。課題と取り組みをブレイクダウンして、機動的に実験と検証を重ねながら、成果を積み重ねて目的に近づいていくというのが成功しやすい道ではないかと思います。

 よく「ある程度のデータ量が必要では」という質問も受けますが、データは確かに必要なものの、整っていないデータをきれいにしたりそこから学んだりというのもAIによって可能になるケースもあります。顧客との対話ログや、業務週報のような言語データなど、今まであまり定量的に分析できなかったものも使えたりするので、今あるものを何かに使えないかという緩めの発想で始めてもいい気がしますね。店内カメラで捕捉したユーザー行動の情報もデータ化が可能なので、音声や行動などデータ化されていなかった要素の活用という視点も役立つと思います。

――最後に、今後の展望をうかがえますか?

 社内レベルでは知見や開発リソースもかなり蓄積できてきたので、今後は外部企業や団体、学術機関と協業して新しい取り組みをしていくフェーズにしたいと思っています。外部にはまだまだ眠っているデータや資源があるので、元々広告会社である我々のアイデアの力を掛け算して、世の中を動かすような価値や事業を作りたいと考えています。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/25 13:15 https://markezine.jp/article/detail/29442

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