※本記事は、2018年11月25日刊行の定期誌『MarkeZine』35号に掲載したものです。
SVとEVを最大限に高い次元で実現する
日本電気株式会社 執行役員 兼 CMO 榎本 亮(えのもと・まこと)氏
1995年から2002年までArthur Andersen(後のBearing point)においてマーケティング戦略・営業改革等を推進するコンサルティング部門のパートナー。Bearing point合流後はCommunications領域のマネージングディレクターとして2008年まで従事。2009年から2014年までIBMで理事。2014年、Salesforce.comで執行役員に就任。2015年からNECの執行役員となり、コーポレートマーケティング本部を担当。2017年4月にNECの全社マーケティング活動を統括するCMOに就任し、現在に至る。
――榎本さんは外資系コンサルティング会社に20年以上勤められ、IBM、そしてセールスフォースを経て2015年にNECの執行役員に就任されました。ご自身のキャリアでは初めての日系企業になりますが、入社時のお考えと現在のミッションをうかがえますか?
コンサルタントとして多くの日本企業にマーケティング領域のサービスを提供してきて、当時の私には日本企業でマーケティング改革をしてみたいという思いがありました。そこにNECからオファーがあり、お引き受けした形です。コンサル時代に様々な企業の社風を感じてきたので、どんな組織でも驚かないと思っていましたが、実際に入ってみるとNECはすごくオープンな会社でしたね。中途入社を受け入れる素地があると思います。
昨年、CMOになりました。CXOは、そのX領域において自社業務やサービスを最適化することが役割だと思っています。私の場合はマーケティングなので、常にマーケットの目線で、NECがどうあるべきか、今の有り様が本当に正しいのかを点検することにあります。マーケティングの責任者として、マーケットを鏡にNECを常に最適化することがミッションだと捉えています。
――NECとしてありたい姿と、マーケットから望まれる姿は、必ずしも一致していないと思うのですが、その差を埋めていくということでしょうか?
理想論でいうと、その2つは常に一致しているべきですよね。NECは「2015中期経営計画」において「社会価値創造型企業」への変革を宣言し、社会ソリューション事業に注力しているので、SV(社会価値)とEV(経済価値)が融合する最も高い次元を見据え、その両立を具現化していくつもりです。
ただ、社会からの要請であるSVは、特に社会の変化のスピードが速い昨今において、刻々と変わります。一方で企業は事業戦略を立てて4月1日から実行し、うまくいけばそのまま進める……というサイクルがあります。ここにズレが生じていないか、市場の変化を誰よりも早く察知して会社にフィードバックし、期の途中だろうとタイムリーに軌道修正するのがマーケティングの役割です。
同時に、それだけでは流行りの後追いに留まるので、市場が気づく前に、新しいメッセージや価値観を投げかけることも重要です。たとえば最近、イベントの冠などでもICTをデジタルと言い換える動きが出ていますが、NECは1年以上先んじて様々な活動でICTをも包括する概念としてデジタルを標榜してきました。デジタルの圧倒的なスピードや膨大に生み出されるデータの可能性、またコンピューティングパワーやAIなどを有効に活用しないと競争優位を保てないというメッセージは、我々が少し先んじて市場に提案してきたものです。