知っておきたいFinTechサービスにおける11カテゴリー
では、FinTechを独自に11のカテゴリーに分け、代表的なサービスとそのビジネスについてご紹介します(図表1)。
スマートペイメント
スマートペイメントは、現金以外で決済をする手段のことを指し、大きくクレジットカード系とQRコード決済のプレーヤーに分かれます。
クレジットカード系
まずは、私たちカンムが提供するバンドルカードを例に、クレジットカード系のスマートペイメントを解説します。クレジットカードには、Visaやアメックスなどのクレジットカード決済を提供するカードブランドがあり、メガバンク系や信販系、流通系などのカード発行会社(イシュア)と加盟店を管理するカード管理会社(アクアイヤラー)の3つが関係しています。カンムのバンドルカードは、オリエントコーポレーションと提携したアプリ内のバーチャルカード。登録するとカード番号が付与され、チャージをすることでクレジットカードと同じように決済ができるVisaプリペイドカードです。同業に、LINE Payカードなどがあります。
ターゲットは、クレジットカードを持てない若年層。彼らは、ゲームやECなど、スマートフォンで少額決済をするシーンが多々あります。代引きやコンビニ決済も利用できますが、クレジットカードがあれば今すぐ解決するニーズに向けて、バンドルカードを提案しています。
このように、クレジットカードの課題をテクノロジーで解決し、より多くの消費者にベネフィットを提供しているのがクレジットカード系のスマートペイメントサービスです。その他にも、スマートフォンを用いて手軽にカード決済機能端末を導入し、加盟店の決済手数料を抑えるカード決済のコイニーなどがあります。
QRコード決済
一方、QRコード決済は、LINE Payやメルカリのメルペイなどが代表です。これらはVisaやMaster Cardといった従来のカードブランドを通さない決済のため、カード手数料がかかりません。IT企業の参入が続きますが、ITと金融は相性が良く、サービス基盤がオンラインであるため、データの収集や活用につなげやすいという利点があるためでしょう。
また、自社のサービスをより強くインフラ化したいという狙いもうかがえます。中国においてEC発の決済Alipayや、WeChatPayが成功しているという背景も、後押しになっていると思います。
インフラとなるには、クレジットカードの加盟店数規模に利用店舗を増やす必要があり、ここへどれほどの投資をしていくのかがシェア拡大のポイントとなるでしょう。LINEは2018年8月から、LINE Payの店舗用アプリの決済手数料を3年間無料にすると発表しましたが、この取り組みの目的は加盟店拡大の加速でしょう。
仮想通貨
図表1には、円などの法定通貨と仮想通貨をつなぐ取引所を掲載しています。グローバルでは、マイニング(仮想通貨の取引を確認・承認すること)企業のひとつBitmainがIPOを目指しているとの報道もあり、新たなプレーヤーが出てきています。
仮想通貨というと、ブロックチェーンというイメージがありますが、ブロックチェーンはあくまでインフラの技術です。たとえば国内では、Gunosyと割り勘アプリpaymoを運営するAnyPayが、2018年8月にLayerXというブロックチェーン関連事業を行う合弁会社を設立しました。仮想通貨まわりでも、新しいことに取り組み始めている企業が出てきています。
投資・資産運用・ロボアドバイザー
専門知識が必要だったり、口座開設が複雑だったりという資産運用の高いハードルを下げているのが、この分野です。たとえば、お金のデザインの「THEO(テオ)」は、ロボアドバイザーが資産を運用するサービスです。ポートフォリオは数多くある投資先をテーマごとに選定し、投資することができます。またOne Tap BUYは、スマートフォン専業の証券会社です。通常は株数単位で購入しますが、同社が買い付けた株を1,000円単位で購入できるというサービスで、ミニ株とも呼ばれます。そして、毎日の買い物で発生するおつりを投資に活用しようというサービスが、トラノコです。
これまで日本人はあまり投資や資産運用に積極的ではありませんでした。しかし、これらの身近で便利な「新しい投資・資産運用」サービスの登場により、若年層を筆頭に意識は急速に変わっていくでしょう。
クラウドファンディング
クラウドファンディングには3つのパターンがあると考えています。1つは、資金を集めて商品を製作し販売する、ECに近い購入型。2つめの寄付型は、あくまで寄付としての資金集めです。そして3つめは、投資型のクラウドファンディングです。これは2015年に金融商品取引法の一部が改正されたことにより解禁され、2017年に国内初の事例が登場しました。今後は投資としてのクラウドファンディングが増えてくるかもしれません。
ソーシャルレンディング
ソーシャルレンディングとは、個人間の貸し付けです。このマップに掲載されているサービスは、お金を借りたい・貸したい個人を結びつけるハブとなっています。
日本国内における2017年のソーシャルレンディング市場規模は、前年比2.5倍の1,316億円(クラウドポート調査)。市場は急拡大を続けており、参入企業も増加しています。
融資(レンディング)
レンディングは、法人が個人または法人への融資を行うビジネスです。売り上げデータや与信データを参考にし、財務状況を見ながら貸し付けを行っています。
実は日本はグローバルで見たときに、上限金利が低い国です。そのため、貸金業でビジネスがしづらいという背景があり、また融資を必要とする人も借りられないという課題があります。この状況に、独自の与信モデルを構築し、変えていこうという試みを行っています。
法人向けサポート
SaaS型の会計サポート・経費精算、労務管理の他、ラクーンのPaidなど、BtoBのファクタリングを行うサービスも集めました。ファクタリングとは、企業の売掛金を買い取る仕組みです。入金前に現金化ができるため、中小企業はリスクヘッジにつながります。日本ではまだ普及していない分、今後参入してくる企業が増えることも予想され、おもしろい分野になりそうです。
PFM(Personal Financial Management)
個人財務管理と呼ばれる分野です。認知も高まり、家計簿の代わりに使われている方も多いと思います。次のステップとして、POS連動などを行い「何を買ったか?」のデータを収集していくと私は考えています。電子レシートが進めば決済データの精度が上がり、データ活用の範囲も広がるのではないでしょうか。
送金・割り勘
図表1では、個人間の送金サービスをまとめました。ほとんどが、同じアプリユーザー間での送金を前提としたサービス設計をしています。さらに資金をオンラインで移動するには、本人確認書類と転送不要郵便が必要です。そのため、広く普及はしていないのが現状です。しかし2020年を目途に、オンライン上で本人確認が完結できるようになる動きがあります。このタイミングを目指して、一新されたサービスが登場するかもしれません。
保険
新しい保険を集めました。justInCaseは、スマートフォンで申し込みが完結するスマホ保険を提供しています。現在は、スマートフォンの修理費用などを保障する保険を提供しており、AIで使用行動を分析し、保険料が変わる仕組みなども取り入れています。今後は、人から借りたカメラや楽器など、24時間単位で物品にかける損害保険の提供を予定しています。
またSmartDriveは、アクサ損害保険と組み、テレマティクス保険(自動車の走行量や運転の安全性に応じて保険料を割り引く仕組み)の開発に取り組んでいます。人が何に対してリスクヘッジするかという市場は、広がり続けています。IoTと連携してデータが取れるようになると、参入しやすいと思います。
金融情報
金融系の情報発信やデータの売買を行う企業をピックアップしました。日本は個人情報保護法が強いため、精度の高いデータを得ることは難しいとされています。しかし収集可能範囲のクレジットカードデータやPOSデータから、伸びそうな企業や領域を分析し、データを提供しているのがナウキャストです。今あるデータに価値を見出し、マネタイズができている企業と言えます。
