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有園が訊く!

欧米で実用化進むプログラマティック配信 テレビCMのオンライン送稿が日本市場へもたらす未来

素材を識別するコードが手動で振られている現状

有園: これは田中さんへの質問というより私見なんですが、日本でここまで遅れたのは、反対勢力がたくさんいたからですよね。既存の仕組みを変えたくない、変えると損をするから。この事情は、既存の商習慣を踏まえて何とか成立した現状のオンライン送稿の構図にも垣間見えると思います。現在どうなっているか、グローバルスタンダードとの違いも合わせて教えていただけますか?

田中:この図は当社の説明資料のひとつなので、当社が中心にいますが、この送稿事業者の位置に前述の8社が入ってくるとお考えください。一般的にまず制作広告会社よりCM素材の広告主名や素材識別コードである10桁CMコードなどの基本情報と、媒体扱い広告会社の情報を指定します。

 次に、指定されたCM素材に対して制作会社・ポスプロより、詳細なメタデータや素材ファイルが支給されます。これらの情報は一度事業者のシステムを介して業界標準のテレビCMオンライン送稿システム「CMDeCo」へ登録されるようになっており、オンライン送稿される素材が登録された内容と一致しているかを確認する「オンライン認証」機能を担います。媒体扱い広告会社はオンライン認証を通過した素材に対してCMDeCoへオンライン送稿を指示し、事業者はその指示を基に放送局へ素材を搬入する仕組みです。

 グローバルスタンダードとの違いでいうと、まず素材識別のためのコードが自動発番されていないことが大きいです。現状、CMDeCoに登録される10桁CMコードは各社個別ルールに基づいて手動で採番されています。

有園: そもそも、このCMDeCoとは?

田中:これは、電通や博報堂をはじめ十数社の広告会社が、広告会社と媒体社間の広告取引情報の電子化を進めるために2002年に設立した広告EDIセンターという会社が運営しているサービスです。オンライン送稿については日本広告業協会と連携していて、同会のイニシアチブとして設立した業界標準システムという位置づけです。

 前述のようにCM素材のオンライン送稿にはCMDeCoへの事前登録とそれに対するオンライン認証が必要となっており、素材搬入事業者は素材を1本1局へ送るごとにCMDeCoのシステム利用料が発生しています。

「プリント費」をめぐる商習慣

有園: なるほど。そうすると、オンライン送稿になると、従来のように各局に1本ずつ物理的なテープを配送するのと違って、まるでPC上でファイルをコピペしてメール添付でピッと送れるようなイメージがありますが、結局1本ごとに手数料が発生していることには変わりないわけですね。

田中:そうですね。業界で「プリント費」といわれている、CM素材のコピーテープ作成費用は発生しなくなりますが、各局に1素材を入稿する度に我々事業者に費用が発生し、放送局とつなぐネットワーク回線費もあるので、これまで通り我々も素材を送る1回ごとに請求している状況です。

有園: プリント費は、いってしまえばただDVDのコピーを作るような作業なのに、確か1本数万円だったかと思います。当然ですが、オンライン送稿になって、その単価は下がっていますよね? 

田中:はい、個別には申し上げられませんが、各社ともぎりぎり5桁か5桁未満……という状況です。プリント費の単価も様々なので一概に言えませんが、従来のプリント費に比べて大幅に安くなる傾向が強く、当社としても想定以上に安くなるケースも出てきています。

有園: ある種、価格競争になってしまっているんですね。プリント費って、年間で積み上げると何億円の出費になるのですが、テレビCMが始まって60年来、なぜかここだけ“聖域”としてクライアントも追及してこなかった。

 編集や修正作業ごとに細かく発注・請求をせず、どれだけ手間がかかっても“総合受注額”として最初の取り決め額で制作を請け負ってきた商習慣があるので、プリント費がその補填になっていたんですよね。ポスプロとしては引き続きそれを確保しないと立ち行かないから、送稿サービスを始めざるを得ない、という状況がある。

田中:有園さんが最初から指摘されているように、テレビCMをめぐる商習慣は60年の歴史があり、そこに対して当社のような会社は完全に新参者です。だから、グローバルでの実績があるからといって当社が寡占するような状況にはなっていないんです。

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最終的にビジネスが厳しくなるのはテレビ局

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/12/20 07:00 https://markezine.jp/article/detail/29752

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