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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

インターネット広告の歴史と未来

これからのインターネット広告の話をしよう 2020年の5G・IoT時代に問われる企業の哲学


手作業によるレポーティングの限界とインハウス化の動き

鹿毛:今までマクロな視点で語ってきましたが、もう少し身近な視点で言うと、プラットフォームがますます増えていく中で、それを一つずつ手作業で見ていくことは、とても困難になってきています。レポーティングと会議体、報告というのはセットで、今はパワーポイントとエクセルでプロジェクトの進捗を管理することがほとんどです。しかし、それだと、ちょっと切り口を変えてデータを確認、比較、ドリルダウンし、議論したいという場合に、すぐに対応ができなくなってしまいます。脱エクセル化をして、リアルタイムにデータをダッシュボードでモニタリングするという流れは、どんどん進む。この流れがはっきり見えてきました。

鹿毛:もう一つ、これだけ広告の種類が増えていて、リアルタイムに変化が起こる中で、従来型の代理店による上げ膳据え膳型のサービスでは、業務が追いつかなくなってきていると感じます。広告の種類、媒体、機能、広告と関係のある周辺のことのバリエーションが非常に多いため、「レポート作成→報告→議論」のすべてを人力で提供することが物理的に難しくなっています。議論以前の「レポート作成→報告」までは自動化し、あわせて運用型広告は基本的にはインハウスの流れになってくると思います。ただ、そうなると社内のリソースだと知見も限られてしまうので、社外の有識者とうまくパートナーシップを結んでビジネスを動かしていく、ということがこれまで以上に進んでいくのではないでしょうか。この2つが、マクロな変化を受けて進んでいく現場の変化だと思います。

2020年の5G・IoT時代に問われる企業のフィロソフィー

杉原:2020年の5Gが到来することによって、IoTを含めて世の中が激変すると思います。VRやARなど、いろいろなものが出てくると思います。その中で、広告の配信面というのもどんどん変わっていくはずです。AIがマーケティングにおけるシナリオ設計を下支えする存在として今後ますます重要になる一方で、その基盤となるデータがないと何もできないといった時代になってくるのだと思います。お客様を理解するためのデータを、いかに多く持っているかが大事になってくるのではないでしょうか。

鹿毛:数万、数百万通りを機械学習で細かく合わせていく方向というのが一つ。もう一つは、自分たちはどんなプロダクトとコミュニケーションを一体化させた価値を提供できるのか、というところをしっかり掘り下げて、お客様のニーズをtakeするだけではなく、自分たちから新しい価値をgiveする、世の中に価値を伝えていく。そういった2系統に分かれていくのではないかと思います。

 たとえば、iPhoneが出たときに、iPhoneはユーザーに合わせて開発されたわけではありませんよね。自分たちはこういう未来を作りたいからiPhoneを作ったんだ、というメッセージを発信しました。そういった企業のコミュニケーションは、今後増えていくのではないかと思います。なぜそれをやるのか、というフィロソフィー(哲学)のようなものが、より重要になってくるのではないでしょうか。

 広告の未来は、これは半分期待を込めて、ではありますが、データドリブン、オートメーション、AI等のその先で、広告やそれに携わる人々に人間性への回帰や広告の民主化をもたらすものになるはず、と考えています。

杓谷:これまで、Googleが品質スコアという形でユーザーの求める情報と関連性を高めて広告を提供することで成功を収め、Facebookがそれに追随するという形でプラットフォームが進化してきました。菅野さんの目から見て、これからのインターネット広告はどうなっていくと思いますか?

ファイブ株式会社/FIVE Inc. 代表取締役CEO 菅野 圭介さん
ファイブ株式会社/FIVE Inc. 代表取締役CEO 菅野 圭介さん

菅野圭介(以下、菅野):動画広告に携わるプレーヤーとして、5Gや機械学習の分野での変化には、もちろん注目しています。一方で、今のインターネット広告は、テクノロジー的な未来予測も大切ですが、いちユーザーとしての素朴な体感を見つめ直すことが未来につながる時期でもあると思います。

 各プラットフォームが進化し、機械学習でターゲティング精度が上がったり、データ連携でクリエイティブが動的に変わっていくのはすごいことなのですが、ユーザーの視点から見ると目の前にある広告コンテンツの裏側の話なので、どうでもよいと言えば、どうでもよいわけです。

 産業の発展段階としてインターネット広告は完全に大人になりつつあり、事業を運営する中でも、ユーザーや広告主に対して担保しなくてはならない水準が上がってきていることを感じています。ここ数年で、広告に限らず、巨大テックプラットフォームへの風向きも変わりました。

 これまで、マスメディアへのアンチテーゼを掲げながら、広告効果測定を武器にクリック経済を牽引してきた、成長してきた、ある意味で無邪気な自己像もあったと思うんです。そんな自己像も、そろそろ許されなくなってきている。ネット広告も、マスメディアが担保してきたような質的な担保を要請される現象が続いていくわけです。

 しかしながら、パブリッシャーとコンテンツが無限増殖し、アドテクノロジーで自動化される前提の作りになっているインターネットメディア環境で、事業者が足並みを揃えることは不可能に近い。産業全体で見たときに、この相反する要請をいかに両立できるのか。

 グローバルとローカルの要請もますます衝突します。GDPRはじめとしたプライバシーイシュー、Better Ads をはじめとしたアドエクスペリエンス、ブランドセーフティ、ビューアビリティなどは、ユーザー保護・広告主保護の側面で、本質的にはローカルな課題でもあります。一方、グローバルプラットフォームが国をまたがってシェアを持っている現実がある。その中で、ローカルマーケットごとに、どのようなルールを持って折り合うかの議論が活発になる流れは続くと思います。これらをこなしたうえで産業としてのインターネット広告は、次の成長に向かう流れになるのかなと見ています。

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インターネット広告の「インターネット」が取り払われたときに

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この記事の著者

杓谷 匠(シャクヤ タクミ)

Jellyfish Japan株式会社 Data Strategy Director
2008年に新卒一期生としてグーグル株式会社に入社。2010年にスタートアップの立ち上げに参画したのち、しばらく川原でひざを抱える日々を経験。2013年からトリップアドバイザー株式会社にてSEMアナリスト、BIアナリストを経験したのち、20...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 10:03 https://markezine.jp/article/detail/29838

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