顧客中心の考え方の定着が必要不可欠(ガートナー ジャパン)
2018年を振り返って
2018年を振り返ると、クライアント企業の関心はデジタルマーケティングの域を超え、あらゆる顧客接点にわたって一貫性が必要とされるカスタマーエクスペリエンスに移ってきたように思います。これに寄与するデジタルテクノロジーも急速に進展を遂げており、中でもAIを含めたさらなるデータ活用に大きな期待が寄せられています。しかしながら顧客の視点から抜本的にデジタルトランスフォーメーションを推進することで競争力を高めようとする企業は現時点ではそれほど多くはなく、経営レベルでの意思決定や部門間の連携に苦慮している企業が多いと感じています。
2019年へ向けて
2019年は消費税率の改定や新たな決済手段の導入、オリンピックを控えたインバウンドへの対応などが待ったなしの状況になります。デジタルへの取り組みが遅れると目先の課題に終始することになり、海外から、あるいは異業種からの参入を含め競合他社の先行を許すことになります。また、持続力のある競争優位を確保するには企業本位ではなく顧客中心の考え方を定着させることが必要不可欠です。ガートナーでは2019年を、クライアント企業が市場のリーダーとなれるよう、顧客中心的で先取的なデジタルトランスフォーメーションの推進をさらに強化する年と位置付けます。

リサーチ&アドバイザリ部門 顧客関係管理/カスタマー・エクスペリエンス管理担当 シニアディレクターアナリスト 川辺 謙介氏
ガートナージャパンにおいて、CRM/CXを中心とした調査・分析・予測と、それに基づいたクライアント企業への提言を行っている。ガートナージャパン入社以前は、無線電気通信事業者においてCRM(顧客分析、顧客戦略およびプランニングを通じたダイレクト・マーケティング)業務、ITコンサルティング会社やSIベンダーにて販売分析システムやCRMシステム、ECサイト構築などに従事。
徹底的にやりきる極端さを事業競争力へ(サイバーエージェント)
2018年を振り返って
「GAFA」という言葉が2018年の流行語大賞にもノミネートされましたが、まさにGoogle、Apple、Facebook、Amazonを筆頭にプラットフォームの影響力がさらに強まっており、各々から提供されるマーケティング手法への依存度が高まっているように感じます。今こそ原点回帰し、誰に何をどのような文脈で伝えていくかストーリーを持った上で、俯瞰した戦略を描くことが必要ではないでしょうか。AbemaTVではダイレクト型の投資からコミュニケーション型の投資に切り替えて、大きくプロモーションを変え、そして今まで以上に成果を得られた学びの多い1年でした。
2019年へ向けて
すべての事業・サービスにおいて、改めて「Search」を起点にし、アプリとブラウザ、各PFの相互作用など「構造」としてのアプローチを推進させます。そのためには、日々変化する生活者の生態系を細かく知ること、各メディア、PF、手法の思想・論理の理解度を高めること、その上でそれらを一つの流れとして線で結ぶプランニングのPDCAが重要です。それらの膨大な情報を使いこなせるプレーヤー育成、組織体制の構築も一つのカギになります。マーケティングで当たり前のことを徹底的にやりきる極端さを、2019年の事業競争力へと昇華させていきます。

宣伝本部長 野村 智寿氏
2004年サイバーエージェント入社。インターネット広告事業本部にて様々な業界のナショナルクライアントを担当。2011年10月に新規事業開発のため、プロデューサーに転身。2012年12月にAmebaプロモーション室室長に就任し、2014年10月に宣伝本部立ち上げ、本部長就任。AbemaTVやAWA、ゲームなど自社事業のマーケティング・プロモーションを手がける。
事業全体で顧客を把握するビューを実現(セールスフォース・ドットコム)
2018年を振り返って
「パーソナライゼーション」を実現するマーケティング、さらには顧客体験の創造への注目を実感した年でした。顧客が多様化する中、顧客ロイヤリティの向上を課題とする企業が増えており、特に業界変革が起きている金融サービスや小売業界などの支援を多く行いました。弊社では昨年から顧客セグメンテーションの自動化を可能にするAI機能の拡充に加え、コンテンツの反応から消費者インサイトを詳細に分析し、より効果的なマーケティングキャンペーンの実施を支援するGoogleアナリティクス360とMarketing Cloudの連携ソリューションの提供も開始しました。
2019年へ向けて
キーワードは「カスタマー360」。パーソナライゼーションの延長として、企業がより優れた顧客体験を提供するための取り組みをさらに推進していきます。マーケティング、カスタマーサービス、コマースといった顧客接点で得られる顧客情報を部門を横断して一元管理・活用することで、ビジネス全体として顧客を把握するためのビューを実現し、優れた顧客体験の提供につなげます。また、これまで以上に弊社製品間の連携を強化し、基盤の提供を整えます。そして、昨年夏に買収したDatoramaとの統合を進め、マーケティングインテリジェンスにおける支援も強化していきます。

専務執行役員 ジェネラルマネージャー デジタルマーケティング・ビジネスユニット 兼 クラウドセールス 兼 韓国リージョン 笹 俊文氏
1990年にPwCコンサルティングに入社。その後、ERPベンダー等で導入コンサルティングからマーケティングまで幅広い分野で活躍。2011年にセールスフォース・ドットコムに入社。公共・金融業界を担当する営業技術部を統括後、2014年6月より同社にてMarketing Cloud本部を立ち上げ、現在はB2C Digital Marketingのソリューションのみならずすべての製品営業部を統括。
デジタル化や顧客志向への変革は最重要課題(デロイト トーマツ コンサルティング)
2018年を振り返って
幅広いブランドがデジタルシフトを進めていますが、いわゆるGAFAやNetflix、Uber、Grab等、顧客体験(CX)をデジタルでリードするブランドと比較して、顧客の期待を大きく超えた新しい価値を提供できるまでには至っていません。特にブランドが強みとすべき、モノ・ソフトウェア・サービスが一体となったCXの提供は道半ばでしょう。ただし、多くの企業が顧客理解・分析の基礎となるCDP(Customer Data Platform)構築や、新たなデジタル推進組織の立ち上げに取り組んでおり、それらのビジネスへの貢献に期待しています。
2019年へ向けて
BtoCに限らず、BtoBや公共機関においても、デジタル化や顧客志向への変革は最重要課題です。経済産業省の提言した“デザイン経営”も一つの契機となるでしょう。また、5Gや2020年のオリンピック・パラリンピックを前提とした、新たな挑戦にも期待が高まります。自社IDの活用だけでなく、ソーシャル・店舗を含め多様な接点で得られるデータを活用し、より深いCXの提供を実現するためには、テクノロジーの活用に加え、経営層・マーケターによるブランド全体での横断的なリーダーシップの発揮、人材育成、カルチャーチェンジ、M&Aを含めたエコシステムの構築が必要でしょう。

シニアマネジャー 武藤 隆是氏
Deloitte Digital/モニターデロイトにおける、Digital Strategy Lead。デジタルトランスフォーメーションをテーマとした、事業モデル変革、マーケティングマネジメント、テクノロジー戦略等、幅広いプロジェクトを手掛けている。