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イベントレポート

CMOは「コラボレーション」を主導せよ アクセンチュアが提唱する新たな役割

事業部ごとのマーケ実施が増加

アクセンチュア株式会社 デジタル コンサルティング本部 アクセンチュア インタラクティブ マネジング・ディレクター 望月 良太氏

アクセンチュア株式会社 デジタル コンサルティング本部
アクセンチュア インタラクティブ マネジング・ディレクター 望月 良太氏

 続いてアクセンチュア インタラクティブ マネジング・ディレクターの望月氏が、日本企業におけるCMOの課題を整理し、「コラボレーション主導」を実現する際のポイントを共有した。望月氏はアクセンチュアにてコンサルティング業務に従事した後、広告代理店に転職。昨年、再びアクセンチュアに戻った経歴をもつ人物である。

 「コラボレーション主導型CMOというのが最先端だとすると、日本は2段階遅れている」と望月氏。CMOそのものが不在の企業が、いまだに多数あるからだ。その結果、CMOがリードすべき、全社を挙げてのマーケティングが機能していない。

 日本においてCMOが定着しないのは、プロダクトアウト志向が強いためだという。

 「宣伝広告部の部長やCEOを含む執行役員と話をする中で感じるのは、強い製品をもっている企業ほど、マーケティング志向が弱いということです。そのような企業では、マーケティング部門の発言力が弱く、営業部門のサポートにまわるという形が多く見られます」(望月氏)

 しかし今後は、マーケティング主導の発想がこれまで以上に必要となる。望月氏はその理由として「2つの変化」を挙げた。

 ひとつは消費者の変化である。マス広告で伝えられた同じ商品を一斉に買うという購買スタイルを脱し、カスタマイズ化・パーソナライズ化された商品や、グローバルスタンダードな商品を求める傾向が強まっている。もうひとつは、メディア・プラットフォームの変化だ。メディアのデジタル化によって、コンテンツがあふれ、読みたい情報を深堀できる環境が生まれた。それに呼応して、消費者も自分の好みに特化するという循環が続いている。

マーケティング業務の複雑化にともなう変化
マーケティング業務の複雑化にともなう変化

 こうした変化にともない、マーケティングに関する業務は複雑化し、作業量も増加している。すると、企業の主力でない製品には宣伝部の手が回らなくなる。そのため各事業部が直接、宣伝部を通さずに広告代理店に発注したり、コンサルティング会社に依頼したりというケースが増えているという。

 「私が昨年アクセンチュアに戻って一番驚いたのが、10年前にはなかったRFPや依頼内容が増えていたことです。以前だと電通さん、博報堂さんにお願いしていた依頼をお受けしています」(望月氏)

日本のCMOが求めるべきは「権限と責任」

 望月氏は、デジタルマーケティングが進展しない日本企業には、3つの構造的な問題が存在していると分析する。

 ひとつはデジタル人材不足と組織の未整備である。望月氏はあるクライアントから「デジタルマーケティングの部署にはいつも新人しかいない」という話を聞いたことがあるそうだ。一般的な日本企業ではジョブローテーションを基本とするため、人材を育てようとしても、数年経つと次の部署に移ってしまい、また新人が入ってくるという繰り返しになってしまう。

 その結果、デジタルマーケティングの領域に関しての知識やスキルをもった人材が育たず、広告代理店やコンサルティング会社に一任するケースが多い。すると、依頼して出てきたアウトプットが正しいかどうか判断できないという問題が残ってしまう。

 2つ目は、事業部単位の縦割りによる個別最適化。宣伝部を通さないマーケティングのアプローチが増えたことによる弊害である。顧客をトラッキングできるデジタルマーケティングにおいては、本来フルファネルで考えることが望ましい。ところが各事業部によって個別のKPIやKGIが設定されてしまい、ファネルをまたがった戦略の設定・実行ができていないのが現状だ。

 3つ目は、データ整備とシステム対応の遅れである。マーケティングにおいて重要となる「自社顧客データの利活用」が、部署間の壁によるサイロ化やシステムの老朽化によって阻害されている。分析に必要なデータを他の事業部が管理しているという状態では、データの利活用は進まない。

日本版コラボレーション主導型CMOへの提言
日本版コラボレーション主導型CMOへの提言

 こうした問題を踏まえて、日本におけるCMOの役割を再定義するとき、望月氏は「全社最適化の視点」がカギになると考えている。広告・宣伝の領域だけでなく、組織や業務プロセス、システムに関して全体のあり方を検討する必要があるのだ。

 全社最適化の視点で取り組む際に欠かせないのが、権限と責任だ。CMOは他のCクラスと対等に渡り合う力をもつ必要がある。たとえばデジタルマーケティングの観点から、これまでとは異なる人材の採用が必要となったとしても、人事部門の最高責任者と対等な立場でディスカッションできなければ、改革は難しい。

 執行役員としての存在感を高めるには、経営への責任をもつことが必要だ。事業KGIとマーケティングのKPIを結びつけて可視化し、経営への関与を高めることで、コラボレーションへの道が拓ける。

 さらに望月氏は、望ましいコラボレーションのあり方について次のように補足した。

 「コラボレーションは、Cクラス同士の単なるコミュニケーションではありません。こういうことがあった、という共有だけでは足りず、組織や人材について共通のミッションを掲げて、推進するのが大切なのです」(望月氏)

 マーケティングや広告というと、アウトプットに視点が向くことが多い。しかし望月氏は、一見遠回りに見える「デジタルに精通した組織の整備」が、アウトプットに大きく影響すると語った。広告代理店やコンサルティング会社が、前提となる知識の説明に時間を割くことなく、新しい提案やクリエイティブな提案をできるからだという。

 デジタルに強い組織を整備し、ビジネスを推進させられるかどうかは、CMOが「新しい役割」を果たせるか否かにかかっている。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/01/29 07:00 https://markezine.jp/article/detail/30210

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