「ユーザーファースト」の姿勢を厳しく徹底

押久保:なるほど。ただ、それだけ絞り込むとなると、社員の方にはもしかして戸惑いもあったのではと感じます。何か、共通の指針や価値観を打ち出したりされたのでしょうか?
榊:社内には「ユーザーファースト」の姿勢を徹底しました。これも元々社内の文化としてあったものですが、事業の規模が大きくなると、どうしても営業目標が優先されたり、別の部署の意見にひきずられたりすることがあります。働いているのは異なる役割を持つ一人ひとりなので、クライアントの施設に満足してほしいとか、自分が成長したいとか、目標も立場も違う。迷うものですよね、企業って。
押久保:そうですね、いろいろなファクターがありますから。
榊:そのすべては、ユーザーにいいサービスを提供し、喜んでいただけたときに初めて解決すると思います。そうして売上が上がり、クライアントも喜び、自分たちも成長する、この順番を間違えてはいけません。むしろ、これ以外に皆の方程式を解く方法はないんじゃないでしょうか。
押久保:なるほど。ユーザーファーストを掲げる企業は少なくないですが、本当に実現できているケースは少ないのでは、と思います。
榊:それをどのくらい厳しく徹底するか、ですよね。私は相当厳しく“アンチ・ユーザーファースト”を排除してきたと思います。たとえば営業がクライアントフォローのために、マーケティングに「このオファーを東京全域の顧客に伝えて」と言ってきても、絶対に許しません。誰に伝えるかは、ユーザーの利益を考えてマーケやデータサイエンスで決めますから。
マーケターとデータサイエンティストの3つの役割
押久保:企業都合の考えの一切を許さない、ということですね。
榊:ユーザーファーストの姿勢と同時にフラットな組織づくりにも注力しているので、今では「それはお客さんにとって良くないよ」と考える姿勢も浸透していると思いますね。お客さんって、何も言わずに去っていくじゃないですか。その怖さをわかっているよね? と、いつも念押ししているつもりです。
押久保:本当に、徹底されているんですね。でも、だからこそ社員が迷わずついていけるんだなという気もします。先ほどマーケやデータサイエンスという言葉も挙がりましたが、マーケターやデータサイエンティストに、どのような役割を求められていますか?
榊:主に、3つの役割を定義しています。ひとつは、一般的にデータサイエンティストが担うとされているデータ分析。2つ目は、ビジネスへのコミットです。当社もレコメンドやメルマガ配信などのツールを内製化して、社内で仕組みを構築できるようにしていますが、何がどうなればビジネスに貢献するかという観点をもってデータに向き合うことが大切です。
そして3つ目は、実際に手を動かせること。具体的には、仕組みを自分で回せることです。これらのうち、2つを満たす人ならマーケターもしくはデータサイエンティストが務まると考えています。ただ、データの扱いに関しては経験値によりますが、ユーザーやクライアント企業の課題解決をビジネスにしている限り、データとビジネスはセットというのは当たり前だと思うんですよね。