短期的な売上獲得と長期の市場創造のバランス
――市場創造や需要開拓に取り組まれるからこそ、現状の課題に気づいてもらうところから企業がしなければならないわけですよね。健康という観点に輪をかけて、そうしたPR的な部分にも難しさがあると思います。一方で、企業として短期的な売上と利益を求める部分も当然あると思いますが、そのあたりを御社の方々はどう理解されているのですか?
おっしゃるとおり、そのバランスも難題です。事業はボランティアではないので、当社でも売上その他のビジネス指標は重視しています。ただひとつ言えるのは、決して短期的な売上だけで物事を見る会社ではありません。事業と、社会的課題の解決を両立するのが僕らの使命だと認識していますし、それは経営陣もよく理解している部分です。お話ししたように、創業の精神が企業文化として浸透していますから、人のためになったり、人を楽しませたりする結果として、利益が得られるようにする姿勢は徹底していると思います。
――なぜ、そのような企業文化が徹底できていると思われますか?
トップ自身から発信されるメッセージに常々「創業の精神」が含まれており、「創業の精神」が企業理念や社員の行動規範、社員教育にも強く結びついているからだと思います。入社式・年頭式・イントラネットなどで定期的に、社長の言葉を通じて「事業を通じて社会に貢献する」という考えを社員に発信することで、社員一人ひとりが自分の仕事の中で振り返り、落とし込む企業文化が形成されているのだと思います。
丁寧な情報展開で熱狂的なファンを育てる
――今、様々な指標が測れるようになっているからこそ、短期的な数値に追われてしまうマーケターも多いと思います。御社ではどのような指標を重視していますか?

顧客満足が大事だと考えています。将来の顧客満足やブランド価値の向上を重視し、どれだけ知られ、どれだけ多くの方に買っていただけたか、その量が増えたかといった個別のKPIの推移を重視していますね。その結果が売上だと思っています。また、それにより、次なる施策のヒントも見えてきます。
――ありがとうございました。最後にうかがいたいのですが、情報の伝達が複雑になり難しくなっている今、強いメッセージを伝えるにはマーケティングだけでなく広告やPRなど社内の連携が不可欠になっていると感じます。インターナルコミュニケーションを含めて、今後のコミュニケーションの展望をお聞かせいただけますか?
おっしゃるとおり、部門間の連携がうまくいかないとメッセージは伝わらないと思います。さらにその前提として、一人ひとりがよくブランドを理解する必要があります。その共通認識をベースに皆が議論しているので、あまりぶれることがないですね。ブランドの共通認識があるから、その旗印の下に皆が自発的に活動することができます。
そのとき、外からどう見られているかを把握し、将来我々がどこへ向かうべきかを描いて社内とチューニングするのは僕らの役割です。それが、マーケティング活動における重要なところだと思います。
デジタル時代になって、これまで見えなかった顧客が見えるようになりました。それは大きな利点ですし、マス広告と連動した接触効率の研究などもしていますが、人間の本質はあまり変わっていないとも思います。それぞれの顧客に必要な情報をきめ細かに流すことが、エンゲージメントを高めることにつながります。これからは、熱狂的なファンの存在が一層大切になっていくと思うので、より丁寧な活動をしていきたいです。