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採用マーケティングは認知から退職までの体験をデザインすること メルカリとマルケトの方法論とは

最初の一歩は入社したばかりの人に質問すること

――採用マーケティングはどのように進めていくといいのでしょうか。オウンドメディアやツールが必要なのかと肩肘を張ってしまう方もいるかもしれません。

千葉:私としては、自分がツールベンダーにいるのでテクノロジーを使うのが当たり前だという感覚があります。しかし、何のために使うのかから考えなくてはなりません。そうすると、必ずしもツールやテクノロジーを使わなくてもいいと思います。

 最初にできることとしては、入社したばかりの方にいろいろと質問することでしょうか。自社をどこで知ったのか、なぜエントリーしようと思ったのか、他社とどういう面で比べたのか、最終的になぜ自社を選んだのか。それと、入社までの間に担当者からどんな対応を受けたのか、人事の印象はどうだったか、現場の雰囲気はどうだったかといったことですね。同じような質問を他社に転職してしまった方にしてみてもいいと思います。採用に関する様々な数字と共に、それらのインタビューからの定性的な情報を踏まえて課題を特定することから始めるのがシンプルです。

石黒:千葉さんのおっしゃるように、まず何をやりたいのかを明確にすべきですね。採用マーケティングを始める場合、おそらく人事部門がマーケティング部門とある程度は連携することもあると思いますが、両者にはかなりの情報格差があると思います。人事部門はマーケティングのことを知らないことも多いでしょうし、マーケティング部門もたとえばHRBPについて知らないでしょう。ですから、お互いに当たり前のことを教え合うことが大事ですね。

千葉:どうやって共通言語を作っていくかですよね。外資系企業だと部長職が採用権限を持っているので話を進めやすいかもしれません。

――採用マーケティングは採用して終わりではなく、入社した方にどう成長し、どう活躍してもらうかという体験も作っていかなければならないと思います。石黒さんはタレントマネジメントを担当されていますが、入社前と入社後をつなげていくためにどんなことをされていますか?

石黒:EXジャーニーを作るところから始めました。会社を知る、面接を受ける、内定をもらう、入社してオリエンテーションを受ける、1.5ヵ月後に面談を受ける、とプロセスがありますよね。また、試用期間ではどんな体験があるか、キャリアチェンジはあるのか、役割はどうか、退職したいときはどうするか、あるいは再雇用はありうるのか、といったことも考えます。従業員としてメルカリを知るところから退職、時には再雇用するまでのEXジャーニーを作れば、各ポイントでスコアリングしてその変化を見ることができるようになります

千葉:マーケティングにおけるDMPは人事の領域でも利用できるようになると思います。勤怠やパフォーマンス、モチベーション、体調、受けたトレーニングなどの情報を個人に紐付けて管理すれば、どこに問題があってどのように解決すればいいのか見えてくるはずです。こうしたことを実行するにはやはりテクノロジーは欠かせないでしょうね。

石黒:入社前のやり取りでメールのレスポンスが早い人は入社後のパフォーマンスも高い、という相関があるかもしれませんね(笑)。

採用マーケティングはいい組織作り

――DMPを利用するとなるといよいよマーケターの領分ですし、顧客の購買行動と採用候補者の就職活動はとても似ています。では、採用活動においてマーケターはどのように活躍できるのでしょうか。

石黒:意思決定を作るところは非常に似ているので、活躍の場は広いと思います。たとえばマーケティングでは、社会的信用を作るのがブランディングで、競合との違いを作るのがコンテンツですよね。採用でも候補者の意思決定を促すために必要なあらゆる手を打っていくことになります

 メルカリは中途採用で認知されてきましたが、オンラインだけだとシニア層にアプローチするのが難しかったんです。そこで新聞広告を利用してみようという話になり、やってみたらより幅広い認知がとれました。それどころか採用のための広告だったことでとても注目され、広告賞までいただいてしまいました。

千葉:採用マーケティングはマーケティング発想で人事を変えることだと言われますが、手法を変えるだけでなく、マーケティング畑の方が人事部門に移ってみるといいキャリアパスになるのではないかと思います。

石黒:マーケターだからマーケティングツールを人事に使えるという考え方はありますし、スケーリングを予定しているなら最初からツールを導入したほうがいいのは間違いありません。また、マーケティングのフレームワークを利用すれば弱点がわかってくるので、効率的に課題解決ができるようになります。ですが、ツールを使うかどうかはやはり本質的なことではないですよね。

千葉:採用マーケティングで重要なことは、新卒でも中途採用でも中長期的につながるということです。以前お客さんに教えてもらってはっとした話があります。その会社で雇った中途採用の方が、実は新卒のときに落とされていたと本人に言われてわかったというんです。社内の人が誰もそれを知らなかったと。その方にとって忘れられていたという体験は非常にマイナスに響きますよね。ですから、採用候補者のことを知っておくというシンプルなことが大切なんです。

 採用マーケティングを言いかえると、いい組織作りだと思います。会社がいい組織になっていれば優れた候補者を採用できますし、社員が辞めたあともいい会社だったと言ってくれるんですよ。

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

翔泳社所属。翔泳社から刊行した本の紹介記事などを執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/05/22 16:18 https://markezine.jp/article/detail/30932

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