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nanaco会員を7iDに転換して売上3割増を実現したセブン&アイ OMO時代のデジタル戦略構想とは


顧客行動をスマホに寄せ、統一IDでCRMを徹底

 グループ間のデータ連携による成果は既に出始めている。百貨店のそごう・西武と、セブン‐イレブンの相互送客の仕組みもその1つだ。

 2018年12月にリニューアルした西武・そごう公式アプリは、セブン&アイHDが展開するマイルサービス「セブンマイルプログラム」に対応。2019年5月にはセブン‐イレブンアプリとも連携し、西武・そごうで一定額以上購入すると、セブン‐イレブンで利用できるクーポンを配布する施策を行った。

セブン&アイHD 2019年2月期決算説明会資料より
セブン&アイHD 2019年2月期決算説明会資料より

「名寄せをしたことで、西武・そごうで買い物をした人と、セブン‐イレブンで買い物をした人を同一人物として捉えられるようになりました。その上でスマートフォンでコミュニケーションすることで、相互送客を実現できました。今後も複数業態を有する強みを活かして様々な観点から相互送客を促すような施策を積極的に行っていきたい」と清水氏は説明する。

 さらに注目すべきは、こうしたアプリやデータ連携が、離脱防止施策や売上向上施策でも大きな効果を上げていることだ。

 たとえばセブンマイルプログラムでは、グループ店舗に8日以上来店がなかった顧客に対し、来店してアプリのバーコードを提示したらボーナスマイルを提供する「おかえりなさいマイル」を実施。これまでなら、顧客一人ひとりについて「8日以上来店がない」ということも把握できなかったが、アプリや統一IDのおかげで行動を把握しやすくなったため、再来店を促せるようになったという。

 こうしたCRM施策が奏効し、電子マネーのnanaco会員よりも、nanacoから7iDに移行した会員の方が3ヵ月の購買金額が月平均で1,535円(27%)も高くなり、購入回数でも3.2回(38%)上回るという成果も出た。

セブン&アイHD 2019年2月期決算説明会資料より
セブン&アイHD 2019年2月期決算説明会資料より

 清水氏は「7iDでお客様の趣味嗜好が少しずつわかり始めているので、それにふさわしいクーポンや情報を配信した結果、来店頻度や金額が上がったのでしょう」と分析する。

 こうしてデータがたまれば顧客理解が深まり、より良いサービスが可能になる。好循環を回すために、セブンマイルプログラムの特典を強化し、nanaco会員の7iDへの移行を積極的に進めてさらに多くのデータを収集する施策も展開している。

 具体的には、マイルを貯めるメリットを強化するために、特典の中心を「抽選での人気イベント招待」から、「nanacoポイントへの交換」や、「イベント優待特典への交換」「オムニ7商品への交換」などに9月からシフトしていく方針だ。

 こうしたロイヤリティプログラムは、すべてスマートフォンのセブン‐イレブンアプリに集約する方針だ。2019年7月から始まるセブン・ペイ決済では、当初、nanacoよりもポイント還元率をお得にするなどのメリットも打ち出す。スマートフォンでデータを取得できるように、あらゆる施策を集中させているのだ。

 セブン‐イレブンアプリで支払いまで完結するようになれば、nanacoから7iDへの移行は加速するに違いないし、利便性やメリットに注目して新たに7iDに加入するユーザーも増えるだろう。「顧客の行動をスマートフォンに寄せてデータを収集しつつ、データに基づいてカスタマーセントリックなサービスを展開していきます」と清水氏は語る。

錚々たる企業のデータが2ndパーティデータとして連携

 こうしたファーストパーティデータの整備・活用と共に、同社のデジタル戦略の核となっているのがANAホールディングス、NTTドコモ、ディー・エヌ・エー、東京急行電鉄、東京電力エナジーパートナー、三井住友フィナンシャルグループ、三井物産といった各界を代表する企業をパートナーとする「セブン&アイ・データラボ」だ。

日本を代表する企業のデータが相互につながる ※セブン&アイ・ホールディングス 四季報141号より抜粋
日本を代表する企業のデータが相互につながる ※セブン&アイ・ホールディングス 四季報141号より抜粋

 ファーストパーティデータの整備・活用をセブン&アイHDとして推進するかたわら、セブン&アイ・データラボはセカンドパーティデータの戦略的活用に特化する。

 ラボ立ち上げ時点では参加社は10社だったが、2019年6月現在は約20社に増えた。ラボではこうした協力企業と1対1で互いが持っている課題感やデータを共有しあい、分析方針を検討したり、インサイト発見に努めている。こうして1対1で得た成果をすべてのパートナーと共有し、新たな気付きや活用のヒントを模索しているという。

 今、セカンドパーティデータを活用することで、具体的なビジネス戦略につながる芽が見え始めたという。清水氏は「1社のデータだけではどうしても視野が限られますが、組み合わせることで一気に世界が広がることがわかりました。個人が特定されない統計データを統合するだけでも、様々な可能性が見えてきます」と説明する。

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企業間で足りないデータを補い合い、得られた知見を社会に還元

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

江川 守彦(編集部)(エガワ モリヒコ)

東京大学文学部を卒業後、総合広告代理店でマスメディアの媒体営業業務を経験し、出版社に転じて人文系の書籍編集に従事したのち、MarkeZine編集部に参画。2018年よりオーガナイザーとしてMarkeZine Dayの企画にも携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/26 10:12 https://markezine.jp/article/detail/31288

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