顧客基盤ができるとリピートビジネスは跳ねる

西口:売上20億円から100億円だと、利益率はものすごい伸びでしたよね、きっと。
西井:そうですね、通常時で5%、最大で30%いきました。
西口:BtoCの商材は、スケールすると大変なことになりますよね、うれしい悲鳴。特にシーラボはリピート通販のモデルで、今でいうサブスクリプションだから、それもおもしろかったんじゃないですか?
西井:そうなんですよ、自分でやりながら、リピートビジネスの底力を知りました。顧客基盤ができると、利益率が圧倒的に高くなる。新規獲得にフォーカスしたマーケティングから、新規も獲るけどリテンションもしっかり獲る設計に変えて、最終的に高い利益率で回るビジネスにもっていけました。
西口:そういう取捨選択って、当然ですがPLをもっていないとできないですよね。
西井:もちろん、そうですね。何にどう投資して結果どうなったか、そのビジネスにあったKPIを設計することがマーケティングそのものと言えます。PLを見ずにマーケティングを考えるってあり得ないし、できないと思います。
西口:その話、後ほどもっと掘り下げたいですね。それで2014年からオイラ大地(当時:オイシックス)の役員になり、起業された。その決断は、どういう理由から?
西井:ええと、オイシックスの前にもう一回世界一周しているんですよね。
「西井さん、ひとつより2つやるほうがおもしろいよ」

西口:なんと(笑)。
西井:30代も後半になって、デジタルマーケターとしてそれなりに結果を出せるようになったけど、この後じゃあ化粧品会社の社長をしたいかというと、そうでもない。とりあえず、何もなかった10年前と違って、今度はビジネス視点ももって、海外の新しいサービスやスタートアップも見てこようと思ったんです。
で、オイラ大地からはその旅行中、コンサルティングの打診を高島(オイラ大地 代表取締役社長の高島宏平氏)から直接受けまして、リモートで引き受けることになりました。「今から南極に行くので、2週間くらい連絡取れないです」といっても理解してくれて(笑)。
西口:自由すぎますね。それで帰国後、コンサルよりもぐっと踏み込んでCMTに就任されたんですね。
西井:そのときも起業を考えていたので入るつもりはなかったんですが、帰国したあと高島が「両方やったら? 僕や西井さんみたいな思考の持ち主は、ひとつよりも2つやるほうがおもしろいよ」と言ってくれたので、僕も「そうか、2倍働けばいいんだ!」と。せっかくの人生だから、両方やってみようかなと思って、今に至ります。
このときも、やはり社長と話が合ったというか、高島自身が起業家でとてもおもしろい人だったのが大きかったですね。
西口:なるほど。体力はさておき、2つ、3つと違う仕事をすると相乗効果が上がるのはよくわかります。でも、普通なら囲い込みたいと思うところ「両方」と背中を押した高島さんの発想もすごい。
西井:だから高島には本当に感謝しています、あのときどっちかに絞っていたら、今の自分はないので。事業会社でPLをもっているから、シンクロのクライアントとも外部アドバイザーではなく“自分の会社”と思えるような関係ができているし、結果も出しやすくなっている。今、すごくいいスパイラルが生まれていますね。
後編では、実際に西井さんがどのような仕事をしているのか、また今後マーケターに求められるキャリア形成の観点などをうかがいます。お見逃しなく!