生活者と企業が安心してデータ活用できるために
次に登壇したのは、DataCurrent取締役社長の多田哲郎氏。2019年6月3日にサイバー・コミュニケーションズ(以下、CCI)が設立した、生活者主体の考え方に基づくデータ活用を推進する専門会社がDataCurrentだ。
昨今では、多くの企業がデータを活用しマーケティングの高度化を推し進めている。しかし、データを収集する工程において、適切な方法で利用許諾を得て、適切な環境で分類・管理できているかという問題がある。また、企業自体がデータの共有範囲を把握し、適切な手順で施策に活用できているかなど、データの取り扱いに関しては様々な課題を抱えている状況だ。同社では、データ提供元情報を開示して連携可能なオーディエンスデータの他に、匿名化されたオーディエンスデータを持ち、それを独自に解析した情報を提供している。
多田氏は、データ運用基盤の企画設計・開発からマーケティング活動における運用支援までを行うデータコンサルティング事業と、個人情報を含む顧客データを取り扱うプロモーションコンサルティング事業を通し、企業のデータを基軸としたビジネスの拡大に貢献していくと抱負を述べた。
デカビタCのTikTokを活用した若年層への「全力」アプローチ
サントリーフーズが販売する炭酸飲料「デカビタC」は2019年2月のリニューアルにあたり、高校生・大学生をターゲットにしたキャンペーンを展開した。その施策について、「若年層に受け入れられるコミュニケーション」をテーマに宣伝担当であるサントリーコミュニケーションズの小林真由美氏、同キャンペーンを手がけたCCIの加藤雅康氏が壇上で語った。
若年層は多くの情報が氾濫する現代生活の中で、自分向けと感じる情報のみを無意識下で取捨選択する傾向がある。そうした層へのコミュニケーションの勝ちパターンを模索していったと小林氏は話す。
コミュニケーション設計にあたり、単純にテレビCMを配信するのではなく、若年層に「おもしろい!」「参加したい!」といった共感を得られるコンテンツを多く投下していくことで、ブランドのファンを増やすことを第一の目的と設定。その起点として、若年層ユーザーの多いTikTokを活用した。そのTikTokの中で鉄板コンテンツとして若者に浸透していた「全力」をコミュニケーションワードとして、全体の施策を組み立てていった。具体的な施策としては、2月末のリニューアル発売を前に、若年層にとって非常に大きなモーメントである「バレンタイン」をテーマにした「#全力告白」というハッシュタグチャレンジをTikTokで実施。テレビCMでも同じ楽曲を使用することで、ダブルスクリーンに慣れテレビを専念的に視聴しない若年層にも気に留めてもらえる仕掛けを施した。また、若年層を主役とする番組「全力TV」をAbemaTVで制作・放送し、SNS媒体でダイジェスト動画を配信。単純な広告ではなく、若年層向けのコンテンツを多数制作することで、ブランドのファンを育成することを狙った。
結果として、TikTokではバレンタインのモーメントを捉えた楽曲が若年層にヒットし、著名インフルエンサーがオーガニックで動画投稿するなど大きな盛り上がりを見せ、動画再生数は1,845万回、動画投稿数は4,281回を記録。AbemaTVの視聴数も目標を上回り、売り上げも前年を超えたという。
加藤氏によると、動画投稿キャンペーンはハードルが高いと思われがちだが、TikTokは投稿を簡単に促すことができ、エンゲージメントを多く獲得できるメディアだという。若者の目線に合わせたフォーマット、そして「告白」というシーズナルにあった展開が結果につながったのだろうと分析した。