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あの小売企業はなぜeギフトで売上を伸ばせたのか サーティワン、スタバ、日比谷花壇の事例に学ぶ

 感謝の気持ちを伝えたい時など、SNSやメールでのコミュニケーションの中でちょっとしたプレゼントを贈る「eギフト」サービスを提供するギフティ。近年、eギフトをリアル店舗への集客やCRMに使い売上を成長させる企業が増えているという。最新の取り組み事例を2019年6月20日に開催されたパートナーミーティングで取材した。

さくっと送れる手軽さが魅力

 SNSを使ったコミュニケーションが日常にとけこみ、私たちは「いいね!」ボタンやスタンプで、簡単に気持ちを表現するようになった。その延長線上で、SNSなどを通じてギフトを送れる「eギフト」が注目を集めている。

 ギフトといえば、従来は誕生日のようなライフイベントや、お中元・お歳暮のような儀礼イベントが主な利用シーンだった。これとは対照的に、eギフトは日常生活のちょっとしたタイミングで、100円から1,000円程度で気軽に送信できる「コミュニケーション手段」なのだ。

 ギフティでは「決済」「ギフトカード作成」「ギフトURLの送信」の3ステップで簡単にeギフトを贈る仕組みを提供している。編集部でもeギフトを多数そろえている「giftee.co」でギフトを実家の家族に贈ってみたところ、スマホでスターバックスのドリンクチケットを購入し、LINEで送信するまで、わずか数分程度で完了。手軽さを実感した。

デジタルギフトのURLをタップするだけでギフトが表示できる
デジタルギフトのURLをタップするだけでギフトが表示できる

 ユーザーはメールやSNSのタイムラインを使い、「ありがとう」を伝えたい時にはスイーツ、「お疲れさま」を伝えたい時にはコーヒーを贈る、といった使い方ができる。ギフトを贈られた人は店頭におもむき、ショップスタッフに画面を見せれば品物と交換できるという仕組みだ。

eギフトが店舗にお客様を集める仕組み

 そんなギフティが小売事業者のビジネスを支援するために提供しているシステムが「eGift System」である。「eGift System」の導入により、小売事業者は自社ブランドのeギフトの生成、配信、流通、販売までが可能となり、現在では国内70社超が利用している。SaaSで提供しているため、小売事業者は導入コストを抑えてスピーディーにサービスを使い始めることができる。

 「eGift System」でeギフトを生成すると、小売事業者のアプリやキャンペーンで配信するのはもちろんのこと、「giftee.co」をはじめとする個人向けのLINEやcotocoなどの販売チャネル、また、eギフトを活用した法人向けのソリューション「giftee for Business」などのチャネルでeギフトを流通させることができる。店舗オペレーションやシステムの追加はほぼ不要なのも大きなメリットだ。

 こうした複数のチャネルを通じて、小売事業者はギフト需要を新たに開拓でき、店舗送客によって発生する併売などで売上を拡大でき、ギフトという文脈で自社商品が露出することでブランドイメージを向上させることができる。

新規顧客との接点が増え、ファン層にはさらに喜んでもらえるように

 では実際にこのサービスをどのように活用しているのか。「eGift System」導入企業の一社であるB-R サーティワンアイスクリームの渡邉氏に話を聞いた。

B-R サーティワンアイスクリーム 渡邉直樹氏
B-R サーティワンアイスクリーム 渡邉直樹氏

――ギフティの「eGift System」を導入した目的から聞かせていただけますか。

 創業時から受け継がれている私たちの理念「We make people happy. ―アイスクリームを通じてお客様に幸せをお届けする―」を実践することに加え、普段はなかなか店舗に来てもらえないお客様の新しい喫食機会を作りたいと考えたからです。

 「サーティワンeGift」を通して私たちの存在を知ってもらい、ファンになってもらい、また店舗に来てきてほしいという狙いがあります。私たちのお客様は「女性」「若年層」「ファミリー層」が中心という特徴がありますが、ギフトであれば接点を持てるお客様が広がります。

 たとえば、法人向けのギフト需要では通販会社の他、住宅展示場への来場や携帯キャリアなどの店舗への来店促進に使ってもらっています。最近ではソーシャルゲーム、Twitterや企業の公式SNSアカウントフォローなどへのデジタルインセンティブとして利用される例も出てきました。

――「サーティワンeGift」の具体的な活用方法はどんなものでしょうか。

 弊社のeギフト専用サイト「サーティワンeGift」でお客様に販売していますし、アプリ「31cLub」の会員向けプレゼントとしてクーポンを発行する使い方もしています。

特典提供における「eGift System」活用例
特典提供における「eGift System」活用例
プレゼントされるeギフトの例
プレゼントされるeギフトの例

 会員向けにeギフトを使うことで、「31cLub」への入会率が従来比で10倍アップし、会員の来店回数も0.8回/月から1.38回/月になりました。アプリで会員組織を作る企業は多いと思いますが、eギフトの仕組みは既存顧客を手厚くサポートする上で有効と実感しています。

 さらに「サーティワンeGift」の利用履歴とアプリの会員データを紐付けて分析すれば、新しくファンになってもらったお客様に対し、有効なアプローチを仕掛けていくこともできそうです。

――実現すればより効果的に施策を展開できますね。技術的な話になりますが、ギフティの「eGift System」を導入した際、電子スタンプを使うことにしたのはなぜですか。

 以前から紙のスタンプキャンペーンを展開していたので、電子スタンプならデジタルに変更した場合でも店舗スタッフの心理的抵抗感が少ないのではないかと考えたのです。また、実際の運用では、全国1,000以上の店舗のどこでどのぐらいギフト利用があったかを正確に本部に報告できる仕組みが必須です。デジタルであれば、スタンプの押し間違いや押し忘れも回避できますし、シンプルな構造なので導入にともなう店舗側の負担も小さいと思いました。

各店舗に電子スタンプを設置することで、POS改修せずにチケットの消込ができるようになる
各店舗に電子スタンプを設置することで、POS改修せずにチケットの消込ができるようになる

――全体を振り返って、取り組み成果をどのように評価していますか。

 eギフトの最大のメリットは、紙のギフト券ではリーチできていなかった新しいお客様とつながる手段を得られることです。SNSで新しいお客様への喫食機会を提供でき、新しくファンになってもらえるという、今の時代だからこその好循環を作ることができたと感じています。

――これから試してみたいことを聞かせてください。

 たくさんありますが、「フレーバーアルバム」のような、集める楽しさを実感できるギミックがおもしろいのではないかと考えています。

 私たちのブランド「サーティワン」の由来は、お客様に1ヵ月(31日)毎日違った美味しさを楽しんでほしいという願いからサーティワン(31)アイスクリームとしております。また、世界52カ国・8,000店以上を持つ、世界最大のアイスクリーム専門店チェーンです。1,300種類以上ものオリジナルフレーバーから季節に合わせた31種類のアイスクリームを店舗で提供しています。

 来店やeギフト利用によってアプリの中でフレーバーカードを集める仕組みを作れたら、新しいファン体験が生まれると思います。

 現時点のeギフトの種類は個人向けに「レギュラーシングルギフト券」と「500円ギフト券」、法人向けには、これに加えて「200円ギフト券」と「300円ギフト券」ですが、「アイスクリームケーキ」のようにより高単価の商品への需要を取り込む券種や新しいフレーバーを試すことのできる券種を増やしたいという意図もあります。

 この他にアプリ側に予約機能を付け、家族の忘れがちだけれど大切な記念日ですとか、適切なタイミングで間違いなくプレゼントが届く仕組みが実現できればとも思います。「eGift System」の仕組みをベースにアプリも活用し、お客様に喜んでもらい、ハッピーな体験してもらうツールとしてeギフトを活用していきたいと思います。

eギフトをもらって喜んでいる人のSNS投稿で手応え実感

 パートナーミーティングのプログラムでは、パネルディスカッションが行われ、「eGift System」を導入して実感したメリットや今後の展望などが語られた。

左から、日比谷花壇 吉田貴之氏、スターバックスコーヒージャパン 土井英人氏、ギフティ 太田睦氏
左から、日比谷花壇 吉田貴之氏、スターバックスコーヒージャパン 土井英人氏、ギフティ 太田睦氏

太田:スターバックスコーヒージャパン様が「eGift System」を導入したのは2014年と比較的早い時期になります。導入のきっかけや実感しているメリットを聞かせていただけますか。

土井:私たちのミッションは「人々の生活を豊かで活力のあるものにするために―ひとりのお客様、一杯のコーヒー、そしてひとつのコミュニティから」というものです。人と人とのつながりをデジタル上でも生み出せるサービスを実現したいと考え、「Starbucks eGift」の提供を決めました。

 実感しているメリットは複数あります。特に実感しているのは、TwitterやInstagramなどを見ていて、「Starbucks eGift」をもらった時のうれしい気持ちが伝わる投稿を目にすることでしょうか。

 もう一つ、私たちの店舗スタッフはお客様とのコミュニケーションを積極的に楽しむ人が多いという特徴があります。ギフトをもらう人の中にはあまり来店頻度が高くないお客様もいらっしゃるのですが、店舗スタッフから新しいドリンク商品やカスタマイズ方法などのユニークな提案をさせていただくことが、エンゲージメントを高める機会につながっていると感じます。

太田:ギフトカードのクリエイティブを多数そろえているのはどういった狙いなのでしょうか。

土井:eギフトのサービス認知度にはまだ伸びしろがあることもあり、今は新規のお客様が中心です。とはいえ、リピーターのお客様もたくさんいらっしゃるので、その層に向けては季節ごとに新しいものを用意しています。一人でも多くのお客様にお楽しみいただけるよう、クリエイティブの多様性を重視しています。

太田:季節性という意味では、クリスマス恒例の「Coffee Santa」キャンペーンはインスタ映えする取り組みですね。これはどんなきっかけで始めたのでしょうか。

土井:「Coffee Santa」は「Starbucks eGift」を使ってドリンクを引き換える際に、お客様にミニフィギュアをプレゼントする施策です。

 キャンペーンの実施アンケートの結果からは、購入した人も利用した人も多くが「eギフトビギナー」であることがわかっています。SNSで拡散していただき、「Starbucks eGift」を使ったことがない方にもハッシュタグで検索してもらい「やってみようかな」と思っていただくのが狙いでした。

新しい顧客層をつかむ、コラボギフト企画

太田:日比谷花壇様は2016年から「HIBIYA-KADAN eギフト」を始めていますね。どんな目的で「eGift System」導入を決めたのでしょうか。

HIBIYA-KADAN eギフト
HIBIYA-KADAN eギフト

吉田:大きく3つあります。まずECでは3,000円以上のアイテムが多く、予算感が合わずにお花の購入をあきらめるお客様がいらっしゃいましたが、eギフトなら500円からのチケットとしてご提供でき、ニーズに応えられるということ。

 次に誕生日や結婚記念日のように当日に必ず届けなくてはならない場合、忙しくて手配のタイミングが遅れると間に合わないというお客様の課題を解決したいと考えました。

 最後にeギフトを通じて、新しいお客様に店舗に来ていただくきっかけを作りたいと考えたことです。

太田:お花の場合、ギフト需要が高まるのはそもそもいつなのですか。

吉田:母の日が最大のピークで、この他にホワイトデーや3月末の歓送迎のお祝いがあります。購入単価が最も高いのは母の日のギフトですが、eギフトでは一つ上の価格帯のものが売れる傾向にあります。

 eギフトがおもしろいのは、購入から利用までの時間が長いことですね。ただし、母の日の場合は贈られた翌日に来店いただきお花を受け取っていただく傾向が顕著です。贈り主の子供さんに早く返事をしようとするからかもしれません。

太田:吉田さんは大変なアイデアマンで、他ブランドとのギフトコラボにも積極的に取り組んでいます。コラボ企画の例を一つ紹介していただけますか。

吉田:リラクゼーションスペースの「ラフィネ」様と共に、母の日ギフトのタイアップ企画を展開しました。「ラフィネ e-Gift」を購入すると、期間中に利用すると日比谷花壇の交換ギフト券が立ち上がるというもので、マッサージでリラックスした後に花を楽しんでもらうという趣向です。新しいお客様の認知を獲得でき、サプライズでお花をもらえるとあってSNSでもポジティブな形で拡散されました。

 花を贈ることは気持ちを伝えることでもあります。他にも食事や何かの鑑賞などの体験と合わせたコラボ企画を作り、特集ページで提案するようにしていきたいですね。

太田:最後に今後の展望についてお願いします。

吉田:実際のログを見て驚いたことがありました。それは購買日が別々なのに、すべてのギフト券が同じ店舗で数10枚使われていたことです。調べたらコンサートがあった時、歌手の方にお祝いの花を贈るために全国のファンを代表して幹事の方が交換に来ていたのです。クラウドファンディング的な使い方をしていたわけで、ソーシャルに着目すると、新しいアイデアが生まれそうに思います。

太田:ギフティの仕組みを使えば「ソーシャルギフト」という仕組みを作ることができそうです。土井さんはいかがですか。

土井:KakaoTalk上でeギフトを贈ることが日常化している韓国などと比べると、日本はまだeギフトの市場規模が大きくありません。若者だけでも構わないので、eギフトが早く文化として根付けばいいと思います。お客様がギフトを買って、贈って、引き換えるまでの一連の体験で良いことが続けば、リピートしていただけるでしょう。ご利用いただく一人ひとりの体験の質を高めることを大事にしていきたいと思います。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタン...

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/08/19 11:00 https://markezine.jp/article/detail/31387