大学にも求められる、発信する姿勢
――近大はこれまでも斬新なPR施策を展開し、話題を呼んできました。片山さんと小笠原さんは広報活動に関わる中で、大切にしていることはありますか。

片山:そうですね。私たちは発信する姿勢をとても大切にしていて、毎年切り口を変えてPRを行っています。
かつて教育関係者には「テレビCMを打つような学校はダメだ」「黙っていても志願者が集まるのが理想」という認識が強かった時代もありました。しかし、少子化の時代ということもありますし、「せっかく良いものをもっているのなら、外に向かって発信しよう」「発信することで初めて皆さんにわかっていただける」、という考え方にシフトしていく必要があると考えています。

いずれも近畿大学Webサイトより
小笠原:私が近大の広報に携わっていて感じているのが、「未来」「夢」「希望」といった言葉や美しいキャンパスの映像などを使った紋切り型の表現は避け、近大らしいコミュニケーションをしていこう、という姿勢を強くもっていることです。
大学広報でよく使われる、理想を語るような表現がNGとなると、おのずと選択肢が狭まってくるものです(笑)。自分たちがもっている「広島」「工学」といった題材を使って、リアルな伝え方をしていくしかなくなる。近大広報のおもしろさは、ある意味、こうした制約の中から生まれているのかもしれませんね。
片山:「近大マグロ」も、元々こうした発想から生まれたコンテンツでした。世界で初めてマグロの完全養殖に成功したのが2002年のことだったのですが、当時は成功したことを報道してもらい、それで終わりになってしまっていました。
しかし数年後に「大学の外部にはまだまだ知られていない。眠らせていたらもったいないでしょう」と、大学の理念である「実学教育」を近大マグロというコンテンツで体現していくことにしたのです。
表現の方法にしても、型破りなものにチャレンジする場合はリスクもあり、覚悟をもってやらないといけない。しかし「固定概念をぶっ壊す」というスローガンを抱えている大学ですので、自らその姿勢を体現したいという思いもあります。
――最後に今回のお取り組みについて、感想をお願いいたします。
片山:想像以上の手ごたえです。Webの再生回数も、10万回を超えたらすごいんだろうなと思っていたら、最初の1週間で達成してしまいました。受験者も増えてくれるはずです。
別の視点では、MAGROBOをきっかけに学問以外の世界で取り組みができるとおもしろいと思っています。メーカーさんと組んでプラモデルやロボットを作るのも良いですし、こうしたPR戦略についても、積極的に発信していきたいですね。
小笠原:受験生にとって、大学選びや受験勉強は厳しいものだし、将来に対する不安はあります。心地よい言葉や美しい映像で伝えるのではなく、よりリアルな表現をしていくほうが良いコミュニケーションになるのではないかと考えています。これからも、顧客視点を重視した広報活動を続けていきたいです。
眞鍋:MAGROBOや「武器は、工学歴。」というコピーは、今は言ってしまえばコミュニケーション上だけの存在です。この動画に共感して入学した学生さんたちが、工学部での学びを活かして世界を舞台に活躍してもらうことで、その言葉が実体になっていくはずです。そのようにして、長く残っていくコンテンツになると嬉しいですね。
――本日はありがとうございました。