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定期誌『MarkeZine』特集

自社なりの形を模索し実装していく VAIOが取り組むABM

相次ぐツールの導入で加速した自社なりのABM

――いわゆる“企業単位(Account Base)”とは少し違う?

 一般的には個社のターゲットを決めてアプローチしていくのがABMだと思いますが、当社では厳密には最初から個社を捉えているわけではありません。ある程度広めにターゲティングして集客した上で、いくつかのセグメントに分けて各セグメントを分析し、商談につながりやすい業種・業界をピックアップ。そこからマーケティング・インサイドセールス・営業が一体となって個別の案件につなげていく……といった流れで進行しています。

――なるほど。そのあたりも後ほど詳しくうかがいますが、まずは独立以降のBtoBマーケティングの変遷を教えていただけますか?

 独立時点でBtoB強化という方針はあったのですが、ソニー時代に引き続いて1年ほどは販売代理店を介した活動に留まっていました。本格的に社内に法人営業チームを発足したのが、独立翌年の2015年9月です。同年、新たにインサイドセールスを置き、2016年6月に改めて本腰を入れるべく「BtoBビジネス強化プロジェクト」を開始しました。

 2017年にSFAとMA、さらにターゲティングツールの「FORCAS」を導入したことで、我々なりのABMが徐々に進化していきました。そして、2018年末には組織変更でマーケティング部内にBtoBマーケティング課を設置しました。

 並行して、この3年で展示会出展や、コンテンツマーケティング施策として働き方改革をテーマにしたWebマガジン「Work×IT(ワーク・イット)」(https://workit.vaio.com/)、日本マイクロソフト、Slackなど各種パートナーと協業したミニセミナーなどを始めています(図表1)。

図表1 法人ビジネス強化の歩み(タップで拡大)
図表1 法人ビジネス強化の歩み(タップで拡大)

限られた営業リソースでいかにスケールするか?

――数ヵ月単位で動きがある感じですね。この流れですと、ABMはいつごろから開始した形になるのでしょうか?

 前述のように、現場の課題を踏まえて当社に適した形を模索してきたので厳密にはいえませんが、本格化したのは相次いでツールを導入した2017年と捉えています。

――今おっしゃった「現場の課題」とは?

 やはり、営業のリソースが限られる中で、いかに効率的に動いてスケールするかという部分です。2015年は効率的に新規顧客を開拓するために、まずはインサイドセールスを置きました。

 ただ、企業分析に工数がかかりスピードも遅く、また顧客の関心度や温度をつかむのが難しいため、営業へつなげてからも期待するほど成約率が高まっていませんでした(図表2)。

図表2 ABM開始前(タップで拡大)
図表2 ABM開始前(タップで拡大)

 インサイドセールスを置くだけでは限界があるという状況で、ちょうど有効なターゲティングツールが複数登場してきていたので、少人数で効果を最大化する目的で導入に踏み切りました。いくつかのツールのうち、当社に適した粒度でターゲットアカウントを抽出できるか、現場での操作性などの観点で選定しました。

――その結果、どう変わったのでしょうか?

 もちろん、ツールを入れたからといってすぐに成果が上がるわけではありませんが、まず企業データベースから自動分析でターゲットアカウントを抽出できるようになったので、インサイドセールスのポテンシャルを大きく引き上げられました。新規ターゲットアカウントに対してマーケティングが顧客を醸成し、そこで得られる顧客行動を可視化して継続的に分析した上で、ホットリードになったらインサイドセールスにつなげる流れができました(図表3)。

図表3 ABM開始後(タップで拡大)
図表3 ABM開始後(タップで拡大)

 そして個別のフォローをしながら、関心度や温度が高まったタイミングで営業が商談に向かうので、初回訪問から受注までの離脱がかなり減りましたし、時間も短縮できるようになりました。その結果、営業が訪問してからのクローズ率は大幅に向上しました。

ABM導入にともなう現場への説明は地道に実施

――ABMの導入・実装には、インサイドセールスの強化や営業とマーケティング部門の連携などが求められ、組織改編が必要になるケースも多いと聞きます。そのあたりでは、どのような苦労がありましたか?

 旧来の、顧客リストに電話をかけてリードを獲得し、営業が足を運んでアプローチする営業主導型から、現在は、マーケティング強化型に転換しました。まずマーケティング部門でターゲティングし、こうした顧客ならより可能性があるのではと分析した上で集客して、MAツールを活用したデジタルマーケティング、また電話も含めてアプローチを重ね、最終的に確度の高いリードを営業につなげています。

 この転換時においては、現場の営業は今までの仕事の進め方が多少なりとも変わるので、根気よく説明して理解を促しました。入力システムなどの細かい作業部分でも、習慣化していることを変えたり新たに増やしたりするのは機械的にはできないので、そこは時間をかけました。

 また、インサイドセールスを置いている企業でも、フィールドセールス(営業)の数よりはずっと少ない場合が一般的だと思いますが、当社では同じくらい数をそろえて、営業につなげる時点での確度をできるだけ高めることを目指しています。

 他の企業では営業とマーケティングの連携については、難しさがあるようですが、当社の場合はそもそもそこまで大きい会社ではなく、ワンフロアの顔が見える範囲で皆が仕事をしているので、あまり意思疎通のハードルは感じませんね。マーケティング部は営業マーケティング本部の傘の下にあり、両方を一人の担当役員がみていることも、円滑に進んでいる要因だと思います。部署間連携が必要なABMの実装には、マネジメント全体を巻き込むことも必要でしょう。

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ABM導入後は商談の割合が数倍に

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:40 https://markezine.jp/article/detail/32006

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