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どの顧客接点からでも提供する価値は同じ 堀場エステックがMarketo Engageで進める営業変革

CoEの設置をきっかけに進んだ透明性のあるMA活用

――次にグループ全体での活用の話を聞きたいのですが、ノウハウを共有し、全社的に展開した方が最終的な成果が大きくなるという理解があって、活用が進んだと思います。きっかけは何だったのでしょうか。

志知:最初の導入は弊社を含む二つの組織でしたが、他にもいくつか使いたいという事業部が出てきたのです。それぞれが導入コンサルティングを受け始め、収拾がつかなくなってきたときにアドビから提案されたのが、組織横断的に取り組みを進めるCoE(Center of Excellence)の設置でした。

 バーチャルな組織で、タスクフォースを作ったわけではありませんが、インスタンスやデータを整理し、「こんな時はこうする」というルール作りを皆で考えて進めました。明文化されたルールがあれば、困ったことがあっても、サポートに聞くよりスムースに解決できますし、サポートに聞いたことは皆で共有すれば、グループ全体のナレッジになります。そのナレッジベースを作るルールも皆で考えました。失敗したことは学びの材料に、成功したことはテンプレート化して展開するわけです。

 今では毎週火曜日にリモートで定例会議をして、月に一度データをクレンジングすることを繰り返しています。誰かがイベントに参加したら、その内容も共有します。ルール作りは難しいですが、最初の頃によくあった情報を隠すようなことはなくなり、透明性のあるMAの使い方ができていると思います。

――オペレーションの設計とシナリオの設計は必要なスキルが違うのかもしれませんね。

志知:関西のユーザー会に参加した時、「ソフトウェアの業界では繰り返し作業を疑う」という言葉を聞いてハッとしたことを覚えています。マーケティングの施策の中でも、準備作業は繰り返しが多く、効率化できるところがあると気づきました。効率化ができれば、考えることに時間を使うことができます。CoEで皆が集まるまではMarketo Engageの良さを活かせていなかったと思いました。今はインスタンスを見れば、どの事業部が何をやっているかがはっきりわかります。少しずつMarketo Engageをきれいに使えるようになったのではないでしょうか。

プロセスが効率化された結果、データを基に判断ができるように

――志知さんにぜひ聞いてみたいことがあります。MAの活用で部署内を優先するか、全体最適を優先するかで社内での衝突は起きなかったのでしょうか。

志知:ルールを杓子定規に当てはめることはしていないので、目立ったものはありません。「事業部に相談すること」か「皆で決める方がいいこと」は、臨機応変に判断しています。メンバーに恵まれているからかもしれません。ITに強い人、デザインが得意な人、間接部門との調整が得意な人が揃っているので、適材適所で役割分担ができていることも大きいと思います。

――実際にはどのぐらい仕事の効率化が進みましたか。国内のグループ全体がMAを活用することで得た具体的なインパクトを教えてください。

志知:施策の準備から実施、アフターフォローまでのプロセスがテンプレート化され、工数が削減できたと思います。それから皆でデータを見ているので、たとえば「この半年、Webサイトへのアクセスがないお客様へのアプローチはやめた方がいい。コミュニケーションが再開してからご案内をしよう」とデータを基に判断できるようにもなりました。

 私は「MA」や「デジタルマーケティング」という言葉が一人歩きしている状況を残念に思っています。よく「MAでやる」「MAで回す」という言葉を聞きますが、それには大きな違和感があります。MAやSFAはプロセスマネジメントの概念で、プロセスを管理してワークフローを自動化するもののはずです。メールを送れることやWebのアクセス履歴がわかることは手段であって、目的ではありません。これからマーケティングをやろうとしている事業部にはそのことを訴えていきたいです。

 メールだけでなく、使える機能はどんどん活用したらいいと思いますし、パイプラインを見ながら改善にMAを活用することが大事だと思います。

次のページ
今後は営業活動全体の効率化を目指す

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

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MarkeZine(マーケジン)
2019/11/05 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32110

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