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「見えないものは改善できない」アスクル・LOHACOの超データドリブン運営&独自価値を生む2つの方法

「今すぐ」ニーズを減らす工夫で、実店舗との競合に対応

 LOHACOがまとめて注文を促進している背景には、別の要因も存在している。それは商品の入手に必要な消費者の移動距離と所要時間の関係に基づく、競合との差別化戦略だ。

 日用品の購入において、ECサイトと競合するのは実店舗だろう。実店舗では、消費者が商品を入手するまでの移動距離が遠くなるほど、入手までに要する時間も長くなる。たとえばコンビニエンスストアは移動距離が少なく、商品はすぐに手に入る。スーパーマーケットやドラッグストアはもう少し距離や時間が伸び、ホームセンターや大規模な総合スーパーの場合はさらに伸びる。

 一方LOHACOのようなECサイトは、注文するまでの時間は圧倒的に短くて済むものの、手元に届くまでの時間は最も長い。つまり、距離においては圧倒的に有利だが、リードタイムという点では消費者に負担を強いることになる。しかし、生活サイクルに合わせてアイテムを切らす前に注文をしてもらえれば、「すぐに欲しい」というニーズは少なくなり、ハンデを克服できるというわけだ。

「見えないものは改善できない」徹底した可視化で価値を創出

 続いて成松氏は、LOHACOの成長戦略について言及。持続可能な成長を実現するため、独自の価値を打ち出すことに注力していると明かした。

 「LOHACOが扱う商材は、生活において必ず必要になるものですが、どんなものでも良いというわけではありません。お客様の買い物には、暮らしの中で困っていることを解決したいからこの商品を選ぶ、という『小さな意思選択』がたくさん含まれているはずです。その意思選択において独自の価値を発揮することで、収益性を上げていきたいと考えています」(成松氏)

 独自価値を創出するためには、既にある商品をより良いものへと改善していく「1→10」のアプローチと、世の中にまだないものを生み出していく「0→1」のアプローチが存在する。成松氏は、LOHACOにおける1→10の実践から説明を始めた。

 1→10はデジタルの得意領域で、ものごとの可視化最適化パーソナライズ化を通じて実現していく。たとえば、購入履歴や閲覧履歴を分析して商品をレコメンドする、納品書にも1to1でパーソナライズされたコンテンツを掲載するといった施策がこれにあたる。

 とりわけLOHACOでは、施策の効果を徹底的に可視化している。その前提にあるのは「見えないものは改善できない」という考え方だ。商品画像の枚数がCVにどう影響しているのか。欠品が発生した理由は何で、逸失した売上額はいくらなのか。顧客はどのような探し方で商品に到達したのか。検索後に出てくるリストページ上で、どの商品が誰に何回表示されたのかなどを把握できるようにしている。

 可視化のために必要なのは、データの収集・蓄積と利活用の環境整備だ。成松氏はそのポイントについて、次のように語った。

 「ビッグデータは、その量ばかりが注目されがちですが、量、バラエティー、柔軟性の3つの性質を担保することが不可欠です。

 そして実際に活用するためには、アクショナブルな環境こそがもっとも重要。わかりづらい、信用できない、使いづらいなどと思われたら、誰もデータを使わなくなってしまいます」(成松氏)

 また成松氏が強調したのが、マーケターやアナリストに留まらず、マーチャンダイザーやクリエイター、調達・物流センターのスタッフなど、部門を超えて誰もが同じ環境で、同じ数字を見る重要性だ。そのため、ツールはなるべく数を絞って導入する、勉強会を定期的に開催するなど、社内のデータドリブン文化を醸成する取り組みを数多く行っている。

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0→1はデータを通じた他社との協業で生み出す

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この記事の著者

田崎 亮子(タサキ リョウコ)

マーケティング&コミュニケーション領域の編集・執筆・翻訳を手掛ける。コミュニケーション領域の専門誌編集、コーポレートコミュニケーション領域の制作会社を経て、現在はフリーランス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/30 08:00 https://markezine.jp/article/detail/32149

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