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西口一希と考えるマーケティング視点の経営

「数字の裏側にある人間心理をちゃんと見よ」BtoC西口一希×BtoB福田康隆“叩き上げ”対談

非獲得リードから商品開発のヒントを得る

スマートニュース マーケティング戦略顧問  西口一希氏
スマートニュース マーケティング戦略顧問 西口一希氏

西口:もうひとつ著書から質問ですが、BtoB領域におけるリードのリサイクル(※1)という考え方は、とても重要だと思いました。BtoC領域にはリサイクルの発想がないので、いわゆる焼き畑農業に終始して、耕せばちゃんと2年後に芽が出るのに何もやっていない、という状況が多く見受けられます。なのですごく共感しました。

 BtoCにも、購入に至らなかった人をリサイクルする考えは適用できると思う一方で、僕自身はこれまでそういう人の心理を、けっこう商品開発に使ってきたんですね。自社が満たせないニーズを捉えてR&Dのプロセスに入れ込む、という。そういう、商品開発のプロセスは、福田さんのモデルではどのように考えられているんですか?

福田:そうですよね、それは本当に大きなチャンスだと思うのですが、多分ここが西口さんと私のいちばんの差で、私はこれまで開発に関わったことがないんですよ。これは、という気づきがあっても、外資の組織上、R&Dに活かせるパスがなかった。もしその経験を積めていたら、もっと仕事が楽しかっただろうと、正直、自分のキャリアの中でいちばんフラストレーションがあるところなんです。

西口:え、転職(笑)?!

福田:(笑)。逆に西口さんは、ある商品で満たせていないニーズを別の商品で満たす、といった商品開発もされてきたんですよね。他にも西口さんの書籍の中にあった、オーバーラップ分析(※2)などは自分の経験になかったので、本当に興味深かったです。

 特に今、SaaSのアプリケーションだとカスタマーサクセスの概念が主流になって、ヘルスチェック(※3)などの考え方も広がっていますが、そのオペレーションにオーバーラップ分析を当てはめると、すごく高度なものができると思います。

※1 インサイドセールスと接点を持ったが、今すぐは購入時期ではない、失注した、などのリードに対するアプローチを筋道立てて、再度リード育成のプロセスに戻すこと

※2 自社と競合の、ロイヤル顧客~未認知顧客の数の重なりをマトリックス図で表し、自社で満たせていないニーズを競合が満たしているならその理由は何か、などを分析する手法

※3 サブスクリプションのビジネスにおいて、顧客の健全性や今後の継続性を活用状況などの様々な指標から把握すること

10代で起きている“テキスト検索離脱”

西口:自社が満たせていなくて、競合が満たしている指標は何か、ということですよね。それは有効だと思います。余談ですが、オーバーラップ分析をすると、必ず一定数は「自社も競合も使っていない/離脱した」という人がいます。そこから、自社でも競合でもない脅威が見えてくる。

 スマートニュースなら、どのニュースアプリも使わずにSNSでニュースを得ていたり、今の10代だとどのテキストベースのアプリからも離脱してInstagramを使っている、とか。高校生のうちの娘は、もはやGoogleのテキスト検索自体が、インスタ検索に置き換わっている。

福田:うちの中3の息子も、もっぱらインスタです。完全に移りましたね、ビジュアルベースに。

西口:テキストからの離脱って、考えられないですよね。さらに余談ですが、飲食系の方々に聞くと、今若いスタッフは店に予約電話がかかってきてもなかなか取らないそうです。要するに、既知の相手とのメッセが当たり前だから、誰かわからない人からの電話を取ることは一大事らしいです。電話予約がオペレーションサイドから成り立たなくなっているので、もっとWeb化しないといけない。

福田:予約する客の側も若いと、双方が電話から離脱するっていうことですよね。電話で思い出しましたが、2016年にセールスフォースからマルケトに移って、営業部からマーケティング部が顧客になったら、電話への評価が正反対でびっくりしたんですよね。

 たとえば営業の部長クラスの方だと、どんどん電話すること自体が「それでこそ営業だ」と割と評価されましたが、マーケ部長になった途端「電話なんてセンスがない!」となって。意外と、そういう気質というか、志向性を見ないといけないんだと思いました。

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この記事の著者

西口 一希(ニシグチ カズキ)

大阪大学経済学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G)マーケティング本部に入社。ブランドマネージャー、マーケティングディレクターを歴任。ロート製薬 執行役員マーケティング本部長として「肌ラボ」「Obagi」「メラノCC」「デオウ」「ロート目薬」などの60以上のブランドを統括。ロクシタンジャポン代表...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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MarkeZine(マーケジン)
2019/10/25 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32157

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