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MarkeZine Day 2026 Spring

定期誌『MarkeZine』特集

ソフトバンクがフジロックで5Gプレサービスを行ってわかった、その魅力と課題

5Gがどう生活者の体験を変えていくのか

――5Gネットワークが浸透していくと、マーケティングの面ではどのような変化が起きると思いますか。

牛田:多分先にテクノロジーがあって、その後マーケティングに変化を与えていくようになると思います。

中村:全業界で共通してこう変わる、と断言するのは難しいので音楽業界にフォーカスを当ててお話ししたいと思います。まず5Gになると「音源のハイレゾ化」が起こる可能性が高いです。ハイレゾは高解像度な音源ということですが、これまでアーティストがサブスクリプションサービスに進出しない理由としてあった「CD以下の音源となることが嫌」を解消することができます。これにより、サブスクリプションサービスの質が向上するかもしれません。また、CDもしくはそれ以上の音質が担保できるとなると、CDの記録媒体としての本質的な価値は薄れ、所有することの価値が見直されていくことも予想されます。

 また、フジロックのアプリのように、現場の臨場感をインポートして、熱狂を体感できるようになれば、リモートが本物を超えるライブ体験を提供できる可能性もあると思っています。ソフトバンクさんも「5G╳IoTStudio」を立ち上げていたり、既に4Gでも360°VR動画でライブを提供するサービスを開始していたりするので、よりそのような取り組みは広がると思います。たとえばバーチャルライブでリアルタイムにギフティングをするような体験や、配信を見ている人の間に割り込み、ARやMR技術を使って、実際にはそこの会場にないものを足すようなことも行われていますし、遠隔地のアーティスト同士がライブセッションすることも可能になるはず。

 「音楽╳5G」で見ても、これだけの広がりが考えられるので、他の業界でも使い方次第で顧客体験を大きく変えていけると思います。

――今回はVRを駆使した施策も行われていましたが、比較的新しいテクノロジーを活用する際に気を付けておくべき点があれば教えてください。

牛田:現時点で最も体験してわかりやすくお客様の喜びが出やすいのが、VRやARだと思っています。小難しい技術が今後ますます出てくるでしょうが、いかにわかりやすく体験型の価値として提供できるかの見極めが非常に重要になっていくと思います。

中村:今難しいのが、VRの場合だとヘッドマウントディスプレイを持っている人が何割いるのかという話ですよね。やはりマーケティングとテクノロジーをある程度共存するように考えると、テレビCMがそもそもそうですが、最大公約数の人に振り向いてもらったり、良いものだと思ってもらったりする必要がある。先鋭的なことをするのも役目ではありますが、最終的には大多数の人に使ってもらえる、インフラになり得るものは何か、それをするために新しいテクノロジーをどう試験的に使っていくか、両方を俯瞰した目線でマーケティング戦略を考えるのが必要ではないでしょうか。

――最後に、今後の展望について教えてください。5Gのサービス開始となる2020年3月、そしてその先を踏まえて5Gをどのように浸透させていきたいですか。

牛田:5Gはあくまでも通信インフラです。この先生活に浸透していくようになれば、それを最大限活用して、いかにお客様に価値を提供していくかの話へと進んでいくと思います。我々は通信事業者なので小難しい話が多いですが、それをPARTYのような会社と協力しながら、わかりやすく・楽しく5Gを翻訳して価値を伝えていくことを続けていきたいです。

中村:地に足が着いたところでお話しすると、来年もフジロックのアプリを手掛けられるとしたら、天気のデータをぜひ取り入れたい。今の天気データを活用すれば、時間推移で何時間後に雨雲がくるかが見えるようになっていたりします。そうしたユーザーにとって役立つ機能を追加したいです。

 それと5Gは、音楽以外の場面でもたくさんの可能性を秘めているので、それをお客様に届けられる形にして届けていきたいですね。たとえば、現在は皆スマホが中心となっていますが、将来的にスマホも使わなくなる時代が来るかもしれません。5Gの技術がどのように活かされていくのかは、かなり未知数なので、素早く情報をキャッチアップしていきたいと思います。

牛田:中村さんの話はかなり先の未来になると思います。我々としては、当分の間は5Gを通じて提供されるサービスの多くはスマホを中心にしたものだと思っています。自動運転や遠隔治療にしてもスマホと連動したものになる可能性が高いでしょう。そのため、5Gというインフラの上でスマホが中心となり、革新的な出来事がいろいろと起きていき、ライフスタイルが変化していくことを想定しています。

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この記事の著者

畑中 杏樹(ハタナカ アズキ)

フリーランスライター。広告・マーケティング系出版社の雑誌編集を経てフリーランスに。デジタルマーケティング、広告宣伝、SP分野を中心にWebや雑誌で執筆中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:40 https://markezine.jp/article/detail/32225

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