GAFAと情報銀行 信用に足るデータの預け先はどこか
GDPR以降、前出の「重いデータ」を含む「個人情報」取得という行為において、企業は態度を刻々と変化させている。最近の傾向としては、個人のデータ利用許諾に関する「罰則回避」モードから一転し、「許諾ボタンさえオプトインで押してもらえればデータ管理ができるので、押してもらいやすいUIを作ろう」という動きに転じている。さらには「データを預けられる機関があれば利便性が高まる」と、生活者の背中を押す論調が派生している。
図表1は2017年3月に内閣官房IT総合戦略室が発表した「情報銀行」の概念図である。

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「個人情報保護と利活用」の双方を目的に「情報銀行」の社会実装に向けた取り組みが行われ、情報銀行として認定される企業も登場した。電通は事実上政府とともに旗振り役として「マイデータ・インテリジェンス」を立ち上げ、博報堂DYでは「データ・エクスチェンジ・プラットフォーム設立準備室(DEX)」を立ち上げている。
米国の「GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)+Microsoft」や、政府と二人三脚の中国企業「BATH(Baidu・Alibaba・Tencent・Huawei)」等の企業は、既に「生活者が利便を感じているサービスの提供+大量の契約データ量」を展開している。日本独自の「情報銀行」は、それらの企業に今から対抗することができるのだろうか。
Google、Facebook、Amazon等は先行して、ほぼ無料で便利なサービスを生活者に提供する一方で、音声や顔認証までの生体データから、住所、金融情報まで、着実に「わたし」の「重いデータ」を蓄積している(ユーザーは許可を出した覚えがないという不満があるが)。
自分のデータの管理・保護よりも「めんどう」の解消を優先
2019年時点で論じられる人々の利便性とは「こんなことが新しくできるようになりました」という提案よりも、「これ、めんどう」を解消することが大きな価値を生み出している。生活者は、「利便性」と「信用」を天秤にかけて論理的に判断するのではなく、「めんどうを省く」思考で自身のデータを預ける企業や団体をイメージで選択する。
その一方で今後、新サービスの単体ごとに「わたし」のデータの利用範囲や用途を、毎回区分したり選択したりする機会が増大してくる。個人でこれらのデータ価値を権利や義務と比較して管理し続けるめんどうが増大するのだ。手間を任せるコンシェルジュ型サービスを選ぶことさえも、「めんどう」の範疇に入ってしまう。GAFA企業はそんなことはお見通しであり、生活者側も馴れ合いの関係にある。
「ユーザーが利便性を感じ信用する」ようなサービスの「アイデア」は、山ほど登場するのだが、それらの「新サービス」の入口の一括管理が生活者にはめんどうなのだ。そのめんどうな「入口・ゲート」を、GAFA企業たちは押さえにかかっている。安全基準を旗に立ち上がった日本の「情報銀行」だが、「めんどくさがりや」のユーザーはその機能よりも「イメージ」を優先する。
これらの新サービスの入口のゲートを広げる筆頭として、人々の「利便性=めんどうを省く」で引きつける機能が「SSO」である。この「入口獲得競争」の中で、生活者は自分のデータを「委ねる会社」を無意識にイメージで決めていく。その無意識的に開く入口のゲートを「さらに」広げるために、Facebookは「Libraの発行」によって世界に潜在する27億人の入口を開く構想を立ち上げた。セキュリティに強いイメージを保持するAppleは「Apple Cardの発行(ApplePay)」を先回りで稼働させ、世界10億人のiPhoneユーザーを待ち受ける。この構造を理解した上で、GAFA企業たちの動きを追えば「新サービス」のトレンドが見えてくる。