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MarkeZine Day 2019 Autumn

パナソニックに学ぶ、デジタルマーケティングの組織改革 強い組織の築き方とは

スモールサクセスを重ねて全社マターに DLHが推進する改革

 DLHが目指すのは、多種多様なビジネスモデルやビジネス規模、マーケットに対応可能な唯一無二のデジタルマーケティング組織である。そのためにまず取り組んだのは、行動原理の根幹となる「Mission」「Vision」「Value」の設定だ。

 次に、人によって違っていた「デジタルマーケティング」や「データドリブン」の定義を明文化していった。

 「いきなり手法論の有効性を解くのではなく、再現性のある手法を用いて顧客最適を実現するという共通認識を全社で持てるようにしました」

 ネットワーキングや人材育成においてもアウトプットを行った。異なる集団が相互に結びつき合うことで価値を生み出していく「弱い紐帯の強み」は先に述べられたが、この結び目にDLHを位置付け、社内外に存在するメンターを招いた講義や勉強会を行っている。

 大きな目標を掲げる一方で、「会社の実態をきちんと把握することも忘れてはならない」と大畑氏は語る。DLHに所属する意識の高い一部のメンバーだけでなく、20万人以上いるパナソニックメンバーのデジタルリテラシーを調査し、理想と現実のギャップを可視化するようにしているという。

 デジタルマーケティング推進に付き物のツール問題についても大畑氏は言及した。マーケターが使うツールはIT部門が管轄するツールと違いなかなかノウハウが共有されず、個人やチームに閉じた活用になっていた。

 この実態を受け、各職場の課題にマッチしたBIツールやコンサルティングツールをDLHでピックアップし社内に横展開していったところ、社内浸透が実現し、マーケティングツールをより身近に感じてもらえるようになった。

 DLHでは海外マーケットの状況をキャッチアップするために、全社向けの勉強会も開催している。特に変化の激しい中国市場に関する知識の高位標準化を目指し、その領域に明るいメンバーが中心となって勉強会を開いたところ、多くのメンバーが参加し満足度も高かったという。

 マーケティングの汎用的なスキルであるデータ分析への取り組みを説明するにあたり、大畑氏はパナソニックがスポンサーでもあるガンバ大阪の事例を紹介した。ガンバ大阪には集客やEC、実店舗に関するデータが大量に眠っていたが、上手く活用されていなかった。また、DLHのメンバーもデータ分析の実務経験を積む必要性を感じていた。

 双方の課題を解決するべく、DLHのメンバーがガンバ大阪のデータ分析業務をサポートするに至った。大畑氏は「こうしたスモールサクセスを重ねて施策提言につなげていきたい」と語った。

ボトムアップのデジマ推進で全社ごとに

 現場レベルでは様々な取り組みを行い、スモールサクセスを重ねてきたDLHだが、目指すゴールは全社のデジタルシフトだ。個別の現場の困りごとを解決するだけでなく、トップへの働きかけも抜かりない。

 「『10% for Digital』というキャッチコピーを掲げ、10%でも良いからお客様との関係性や働き方をデジタルシフトしましょう、と人事のトップ役員に提案しました。この提案をベースにパイロットプログラムも開始され、全社マターとして号令がかかる期待感をもっています」(大畑氏)

 大畑氏は最後にイノベーションというキーワードに触れてセッションを締めた。

 「イノベーションの父として知られるヨーゼフ・シュンペーター氏は『イノベーションとは決して技術革新ではなく、あるものとあるものの新結合』と発言しています。我々が目指すべきイノベーションはデジタル専門性の追求ではなく、ビジネス視点での専門性と各自の熱意の融合によってもたらされるのではないでしょうか。組織の改革に答えはありませんが、多種多様、多数の人を巻き込んだボトムアップによるデジマの推進をDLHでは一つの方向性だと捉えています」

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/11/15 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32246

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