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リクルートメント・マーケティング 採用活動をマーケティングでハックせよ

コンテンツを「ただ出せばよい」わけではない サイボウズ×メドレーと考える採用コミュニケーション


採用オペレーションも含め、コミュニケーションに一貫性を持たせる

小池:その他、タッチポイントを作る際に心がけていることはありますか?

加藤:先ほどもお話ししましたが、多くの企業が情報発信を重視していますよね。でもそれはリクルートメント・マーケティングの一部でしかない。バリューチェーンの原点に立ち返るという意味で、採用オペレーションを洗練させることが必要ではないでしょうか。

 仕事柄、採用活動に関するご相談をいただくことが増えてきたのですが、面談や面接の時に使っている会社説明資料を見させていただくと、ほとんどが会社の内部資料を調整したものなので、候補者視点から見ると構成がバラバラで魅力がわからないものが多いなという印象を受けます。どういう記事コンテンツを作ったらいいでしょうとか、どういうイベントを打ったらいいでしょう、という施策について考える前に、まずこういう基本的な資料や募集要項、スカウト文面などを候補者視点で整備し直すほうが大切なのではないでしょうか。

 転職エージェントの方に募集内容についてご説明する時も「現状の組織図を見せて簡単に話して終わり」ではなく、「現状はこうだけれど、こんな課題があって、3ヵ月〜1年後はこんなことをしていたい、だから組織のこの部署に〇〇な人を入れたい」という将来展望を時系列でお伝えする。

 基本的なことですが、採用に関わる人の目線でオペレーションやプロセスを組み直すことが大事な時期もあると思います。今のメドレーはまさにそのフェーズで、発信する記事を減らして、あらためて採用の土台作りにリソースを割いているところです。

小池:なるほど、社内でも「ブランドって受け手の体験に根ざすもの。ならば最初の接点から入社後まで一貫性がないといけないよね」という話をしています。オンラインの発信に力を入れて良いイメージを作ってみたけれど、いざ面接に行ったら印象が違ってしまっているようでは、発信する意味も薄れてしまう。この連載でもお伝えしてきた通り、候補者起点に立ってコミュニケーションの全体像を設計することが重要だと思っています。

皆が同じ方向を向いていけるように

小池:これは個人的な所感ですけれど、最近は新しい人事制度を作ることが流行していますよね。しかし、会社のイメージと制度の乖離が生まれている組織も多い。「私たちにはこういうカルチャーがあるから、こういう制度を作っている」というロジックを組まないと思うのですが、個人的にはまだまだ制度作り自体を目的にしてしまっている会社が多いと感じています。サイボウズは企業ブランドと社内制度の整合性が取れているというイメージがありますが、どのように社内外でのコミュニケーションに一貫性を持たせているのでしょうか?

藤村:理由として考えられるのは、社内の隅々にまで情報共有の文化が浸透しているんですね。経営陣とそうでないメンバーの間に情報格差がほぼなくて、会議をオープンにして「誰でも参加していいですよ」としている。オンラインにもkintone(サイボウズが提供する業務改善プラットフォーム)などを使って全社に情報を公開して意見交換の素材にする仕組みを作っています。ここまでオープンにすると、メンバーが自分の言葉で話せるようになるんですよ。

 これは例の一つですが、社内の情報システム担当者がイベントに登壇した時に、会社の理念を自分の言葉で巧みに話したそうです。するとお客さんから、「なぜ情シスの担当者なのに、それだけ理念と言葉を結びつけて話せるのでしょうか?」と聞かれた。うちでは普通のことで、意見を交換するから言葉が醸成され、誰もが自分の考えを自分なりの言葉で話せるようになるんです。

 意見交換が活発なので「僕たちはこういう組織だ」が明確になる、だから社内外でのコミュニケーションに筋が通るのだと思います。人事と経営層が「〇〇を作ったから今後はこれでやってね」では自分の言葉で話せませんし、社内に浸透しませんから。そこで思うのは、作ったものを社内外に浸透させるのって難しいじゃないですか。メドレーさんではどうやっているんですか?  逆に興味があります。

加藤:メドレーでは細かいルールや突飛な人事制度はありません。事業の成長を促進し、邪魔をしないよう、必要最低限の取り決めをして、運用しているのが現状です。代わりに「凡事徹底」というバリューがあり、「誰にでもできる凡事を非凡な水準で成し遂げる」ことを行動規範としています。これについては、それを成し遂げるための9つの項目を定義し、それぞれについて成長できたかどうかなどを評価のタイミングで全社員が振り返ることで、皆が同じ方向を向いていけるようにしていますし、全員が常に自分をアップデートしていこうとする文化につながっていると思います。

 現在の会社の基本方針は「医療ヘルスケアの未来をつくる」「産業のデジタルトランスフォーメーションを推進する」「そのために作る会社に生まれ変わる」というシンプルなもので、それについては社内では全体会議やConfluence(社内の情報共有を円滑にするシステム)を通じて随時共有しています。社外に対しては、インタビューや登壇イベントでの発信、それからコーポレートサイトのトーンを通じて、同様のメッセージを発信し続けています。

 何か新しいことを始める時には、これまでの会社の歴史がある中で、「新しく気づいた社会課題に対して向き合うために、これまで以上にもっと大きなチャレンジをしていきます」というメッセージと一貫するような文化作りや情報発信を行っています。

小池:ありがとうございます。今回改めて思ったことは、会社のフェーズや歴史を踏まえること、採用プロセスも含めてコミュニケーションを整備すること、そして社内の文化形成の重要性でしょうか。

 文化ができていれば外部に発信しやすくなる。するとミッションに惹かれた人を採用しやすくなり、ブランドが強固になっていく。そこからさらに内省、情報発信、フローの整備、採用の循環を回していく。リクルートメント・マーケティングを行う際は、どうしても手法という「点」に焦点が当たりがちですが、時系列を考えて「線」にしていかなければいけないことが理解できました。本日はありがとうございます。

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この記事の著者

小池 弾(コイケ ダン)

ウォンテッドリー株式会社 Recruitment Marketing Evangelist / Business Hiring Manager
慶應義塾大学経済学部卒。大手SIer、HRスタートアップを経て、2018年1月にウォンテッドリーのビジネス採用担当としてジョイン。現在は、ビジネスサイドのHR責任者として、組...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/11/19 13:31 https://markezine.jp/article/detail/32255

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