施策の実施前に定めるべき、たった一つのこと
――では、個々の施策を策定・実行するときに気をつけるべきことはありますか。
白井:施策を実行する前に、あらかじめ“成功の条件”を定めておくと良いでしょう。
たとえばDMを始めてみたいという場合にも、その目的がメールだけでは情報が届かない層に情報を届けるためなのか、それとも来店、来場を促すものなのかによって、内容はもちろん、打ち方も変わってきますよね。前者であればユニークURLを発行してDMに印刷し、クリック率を測るなどの仕掛けを入れて「何人の見込み客がWebサイトにアクセスしてくれたのか」、後者であれば「何人の見込み客が来店、来場してくれたのか」など、測定可能な到達点を定めておきましょう。
――施策によっては売り上げに直結しないものもあり、経営層に説明するのが難しいという声も聞かれるのですが……。
白井:経営層はプロセスの全体を見ているので、マーケターは個別の施策が経営目標に到達するためのプロセスのどの部分に位置づくのか、ストーリーを組んで説明する必要があります。その際に先ほど紹介したプロセスが役に立ちますし、成功の条件を交えながら数字を入れてお話しすることによって、「やってみなさい」と後押ししてもらうことができるはずです。
MAツールの担当者というのは、経営者の視点を学ぶことができる立場でもあると個人的には思います。一つの施策に閉じずに、シナリオ全体を見渡す意識をもつようにすると、企業の収益向上を加速するレベニュードライバーとして他部門の巻き込み方も変わってくるはずです。
DMで態度変容への手厚いフォローを実現
――少し視点を変えて、MAツールとDMとの連携についておうかがいします。白井さんは各企業の取り組みについて、現在はどのようなフェーズであると見ていますか。
白井:ここ1、2年で、MAツールとの連携に挑戦するお客様は増えています。というのも、マス向けの認知拡大・訴求だけでなく、より手厚く態度変容を促したい、という場面でDMを活用するケースが多くなっているのです。
――たとえばどのようなシーンなのでしょうか。
白井:有償化サービスにアップグレードしていただく、プレミアム会員になっていただく、または口座を開設していただくなど、先ほどお伝えした「ステージ」を動かしていくために、デジタルだけでは届かない部分にDMを組み合わせるかたちですね。
実証実験でも結果が出ていましたが(参考記事)、特にデジタル中心の施策が多い現在では、手元に残る嬉しさや「わざわざDMを送ってくれた」という特別感が大きいのだと思います。
――ここぞ、というときにインパクトを残すような使い方が、これからも増えていきそうですね。
白井:そうですね。だからこそ、タイミングやメッセージには十分注意を払う必要があります。 既に購入した商品、サービスの案内を再度送ってしまうような場合、コストをかけて制作したDMがそのままゴミ箱に行ってしまいますし、届いた本人以外の周囲の方にマイナスの印象を与えてしまいかねません。
「Marketo Engage」にもデジタル×アナログの最適なマーケティング手法を研究する「コミケト」というユーザー分科会があるのですが、設計したシナリオを基に、どの段階でDMを活用すると最も効果的なのか、という点について深い議論が行われるようになっています。