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なぜアリババは地方の中小店舗をフランチャイズ化するのか ニューリテールがマーケティングを変える理由

小売企業買収でEC化率の低い中小都市の購買行動をデータ化

――アリババら巨大EC企業による資本政策を含めたオフライン接点強化の動きがあるそうですが、最新の情勢はいかがでしょうか。

サージェント:ご指摘のとおり、アリババやテンセント、JD.com(京東商城/ジンドン)といった巨大EC企業が、オフライン接点を強化しています。その一番の手法は伝統的な小売企業の買収やフランチャイズ化です。9月に中国第3位のEC企業であるSuning.com(蘇寧易購/スニン)が、カルフールの中国事業を買収したことは記憶に新しいところです。

 一方、アリババもオフラインの統合を進めていますが、そのやり方としては中小規模の小売店舗をフランチャイズ化し組織化するというもの。アリババはフランチャイズ化した小売店からデータを吸い上げるかわりに、BIツールを提供したり、分析結果やパーソナライズに基づくレコメンドを行いやすいシステムなどを提供しています。

――ここでいう「中小規模の店舗」とはいわゆる街の個人商店「パパママ・ストア」くらいの規模のものまで含むのでしょうか。

サージェント:コンビニエンスストアや専門店、あるいは小規模なスーパーマーケットといったところでしょうか。コンビニエンスストアなら、セブン-イレブン北京はすでに美団外売にもElemaにも対応しており、家にいながらにして商品を受け取ることができます。「パパママ・ストア」より少し大きめのスーパーマーケット、英語でいうところのグローサリーくらいの規模感の店舗でもEC化が続々と進んでいます。

 中小規模の店舗はEC化率の低い中国西部に多いのですが、これらを組織化することで、デジタル企業は今まで手つかずだった膨大な購買データを得ることができるのです。

――小売企業側では、このようなニューリテールの台頭をチャンスだと捉えているのでしょうか、それともディスラプトされるかもしれないという脅威を感じているのでしょうか。

サージェント:EC化、O2Oの拡大は商圏を広げることにつながりますから、多くの企業はチャンスと捉えているでしょう。確かになかなか簡単に商圏を広げることができなかった小売企業にとっては、大きなチャンスです。

 とはいえ、諸手を挙げてチャンスだと言い切れない部分もあるのが実情です。特に設備的な部分で制約が多い店舗を抱えている類のオフライン型小売企業は、時流についていく難しさに直面しています。

 中国には非常にたくさんのオフライン型小売企業があります。彼らの商圏にはグローバル企業がどんどん進出してきますし、ニューリテールと手を結んだローカル小売店舗との競争も激しくなっています。率直に言ってオフライン型小売企業はとてつもなくチャレンジングな環境に身を置いていると思います。

店頭でスマホ片手にトライアルし、オンラインで賢く買う

――中国の消費者はオフライン・オンライン店舗にどのような購買体験を期待していますか。

サージェント:オフラインもオンラインもテクノロジーが急速に発展し、消費者の期待値は急激に高まってきています。

 彼らがオフライン店舗での体験に期待することは、陳列されている商品を実際に触ってお気に入りを探すことと、新製品に出会うことです。中国の消費者の場合、店頭でトライアルしたり新製品を手に取って使用感を実感したりすることを、オフラインならではの購買体験として重視しています。

 一方、オンラインの体験には、徹底したパーソナライゼーションを期待しています。中国の消費者は、あふれんばかりの情報の中から検索して商品を見つけるのは面倒だと感じているので、ECサイトの商品ラインアップが自分好みになっていて、魅力的な商品がレコメンドされているかは非常に重視していますね。

――中国の消費者のオフライン・オンラインにおける購買行動には、それぞれどのような違いがありますか。

サージェント:オフラインでは、日本の消費者と同様、店頭でデジタルデバイスを手にしながら価格を比較したり、セール情報や特典を見比べたりしています。中国の消費者は特に価格の安さにこだわる傾向があるので、これからもその傾向は加速するでしょう。

 オンラインの購買行動としては、11月11日「独身の日」のようなオンラインフェスティバルを待って「安い時に買う」傾向が強くなっていますね。消費者がどんどんクレバーになって、お金をうまく使うようになっています。

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たったの1分36秒で1,500億円売り上げる「独身の日」

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この記事の著者

石川 香苗子(イシカワ カナコ)

ライター。リクルートHRマーケティングで営業を経験したのちライターへ。IT、マーケティング、テレビなどが得意領域。詳細はこちらから(これまでの仕事をまとめてあります)。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

江川 守彦(編集部)(エガワ モリヒコ)

東京大学文学部を卒業後、総合広告代理店でマスメディアの媒体営業業務を経験し、出版社に転じて人文系の書籍編集に従事したのち、MarkeZine編集部に参画。2018年よりオーガナイザーとしてMarkeZine Dayの企画にも携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/12/19 09:00 https://markezine.jp/article/detail/32593

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