ニールセンも注目、「ゲーム・ビデオ・コンテンツ(GVC)」の台頭
eスポーツやゲーム市場が盛り上がるにつれ、ブランドもこの変化を察知しており、市場プロファイリングニーズも高まっている。
このニーズを汲み取った市場調査大手ニールセンは2019年6月、米国のゲーム・ビデオ・コンテンツ視聴者を対象に実施した調査レポートを発表し、その特性をあぶり出している。
この調査レポートで強調されているのはミレニアル世代ゲームユーザーだ。X世代やZ世代に比べ、ゲーム関連支出が多いからだ。以下のような特徴が抽出された。
ミレニアル世代ゲームユーザーの54%は正社員雇用で、46%は子供がいると回答。また43%が大卒(学士号)以上で、平均世帯年収は5万8,000ドル(約610万円)。男女比率は、男性50%、女性48%(その他2%)となっている。
ゲーム関連支出額は月平均111.5ドル。これはZ世代より20ドル高く、X世代より53ドル高い額となる。ミレニアル世代の支出内訳は、ゲームソフト購入に39.09ドル、デジタルゲーム購入(ダウンロード)に30.45ドル、サブスクリプションサービスに20.04ドル、ゲーム内課金に21.96ドル支払っている。
このミレニアル世代ゲームユーザーの71%が自分でプレイするだけでなく、eスポーツ観戦やゲーム実況など他人がプレイしているコンテンツ(GVC)を視聴していると回答したのだ。この割合はZ世代では77%とさらに高くなっている。一方、X世代は43%にとどまる。若い世代ほどGVCを視聴する傾向が強いことが示唆されている。
GVCの視聴頻度と時間も明らかになった。1週間のうち何回GVCを視聴しているかという質問では、ミレニアル世代の39%が2〜6回視聴していると回答。また24%が少なくとも1日1回以上と回答。1回あたりの視聴時間に関しては、1時間以下が53%、1〜2時間が26%、3時間以上が22%となり、総じてミレニアル世代はGVC視聴に1週間平均6時間費やしていることがわかった。
1年間を52週間とすると、単純計算で一人あたりの年間GVC視聴時間は312時間に達する。NewZooが算出した米国ゲームユーザー数は1億8,000万人。ニールセンは、ミレニアル世代のゲームユーザー数は全体の40%を占めると推計している。つまり、ミレニアル世代のゲームユーザー数は7,200万人となる。このうち約70%の5,000万人がGVCを視聴しているとすると、米ミレニアル世代の年間合計GVC視聴時間は150億時間を超えることになる。ちなみに、ベンチャービートは2018年世界全体でYouTubeのゲーム系動画の視聴時間が500億時間に達したと報じている。
またGVC視聴にあたり、コンテンツクリエイターへの寄付やサブスクリプション購入で支出していることも判明。ミレニアル世代の寄付額は月平均で28.73ドルと、Z世代の23.62ドル、X世代の27.52ドルを上回った。一方、サブスクリプション支出額では、X世代が29.93ドルと、Z世代の28.64ドル、ミレニアル世代の25.21ドルを上回る結果となった。ミレニアル世代は、サブスクリプションより寄付でコンテンツクリエイターを支援する傾向が強いようだ。
企業・ブランド×GVCのコラボレーションの可能性
GVCの視聴者数や視聴時間から、メディア消費のあり方が大きく変化していることが読み取れるはずだ。eスポーツやゲーム、またGVCの文脈でブランディングやマーケティングを考えなくてはならない時代に入ったと言ってもいいだろう。
ニールセンも調査結果を受け、メディアやマーケターはこのことを念頭に置き、メディア戦略の中にゲームの要素を加えるべきと指摘。多くのミレニアル世代が今後もゲームユーザーであり続けること、またZ世代も同じような特徴を持っていることを考えると、必然のことと言えるだろう。
具体的な施策としては、eスポーツイベントでのスポンサーやGVCクリエイターとのコラボなどが考えられ、今後このような施策が増えてくることが予想される。
また、人気ゲームをモチーフとした「playable ads(遊べる広告)」も効果があるかもしれない。playable adsとは、ゲーム要素を組み込んだ広告のこと。ウェブサイトやモバイルアプリで遊べる簡易ゲームで、ニューバランスが実施した「Cloud Jumper」などが有名だ。
女性のゲームユーザーが増えているという視点も重要だ。コスメやアパレルのプロモーションにおいて、GVCやゲームをどのように活用するのかを考えるきっかけになるはずだ。ちなみに女性の間では、キャンディークラッシュのようなパズルゲームやワードスケープのようなワードゲームなどのカジュアルゲームの人気が高いと言われている。
eスポーツ、GVC、モバイルゲームなど、様々な要素が絡み合い大きく変化しているメディア消費。最近では、ゲーム視聴時間増にともないソーシャルメディアの視聴時間も減っているとの報道も散見されるようになってきている。Z世代とミレニアル世代、そのメディア消費の動向から目が離せない。