完全自動運転は誰にとって嬉しい機能なのか?
同調査において「運転操作が不要な自動運転機能が実現したら利用したい」と答えた層(=積極層)が35.6%、「運転操作が不要な自動運転機能が実現しても自分で運転をしたい」と答えた層(=消極層)が31.5%であった。
では、積極層はどのような人たちなのだろうか。積極層と消極層の2群間でいくつかの項目を比較し、ターゲットを理解しよう。今回ピックアップしたのは、性別・年代・自動車価値観に関するアンケート結果だ(図表2、図表3)。

サンプルサイズ:積極層 n=25,215、 消極層 n=22,939

性別の構成を見ると、積極層は男女半々、消極層は男性が6割と若干男性が多くなっている。年代別では10代後半〜50代では大きな差はないが、60代になると積極層が多くなることから、運転における疲労や年齢からの不安が要因であると想像できる。
自動車に対する価値観を見ると、積極層はクルマを単なる移動手段と捉えており、運転自体を楽しむ人は少なそうだ。一方で消極層は、運転することやクルマを操ることに歓びや楽しさを感じており、笑顔でハンドルを握っている様子が目に浮かぶ。
“生活者のDNA”から、ターゲットを理解する
完全自動運転が実現すると、移動中の可処分時間の獲得競争が激化する。ドライバーは移動する間、「運転」から解放され別のことを行えるようになる。そこには自ずと新たな飲食の機会、娯楽コンテンツの提供、広告チャネルとしての活用、さらにはネットショッピングなど、これまでにない様々なビジネスチャンスが思い浮かぶ。
ここでは、自動運転積極層の生活価値観を分析し、完全自動運転中に車内で求められるサービスや商品開発のヒントを探っていきたい。
生活価値観の分析にあたっては、インテージの“生活者のDNA”(顧客のDNA)というデータを用いた。
これは数百項目にも及ぶ生活意識アンケート結果をもとに多変量解析を行い、食や買い物への意識など、10テーマ80種の因子で特徴をスコア化したもので、あらゆる角度から生活者の意識に迫ることができる。
図表4(1)は、自動運転積極層と消極層の“生活者のDNA”のうち、特徴的な項目を抜粋したものである。ここから積極層をプロファイルしてみよう。

積極層は買い物に特にこだわりが強いわけではないが、ブランド感や特別感など、情緒的価値を重んじる。人付き合いは内向的で、個人の時間を大切にしていることがうかがえる。食や調理に関しては簡便志向が強い。
さて、ここまでの考察をもとに、完全自動運転時にドライバーにどのような空間を提供するべきか? その空間で何を楽しんでもらうのか? という命題に対し、2つのコンセプトを妄想してみた。
飲料・食品業界の場合:「流れゆく車窓の景色を恋人と眺めながら、プチ贅沢なスイーツを楽しむ。」
エンタメ業界の場合:「長旅のひととき、映画館よりも上質なシートと音響に包まれて、大好きな映画を心ゆくまで。」
これらは単なる妄想だろうか? データを携えながら、もう少し考察を続けていこう。