4者が考える、2020年のキーワード
セッション後半には、登壇者それぞれが思う「2020年のキーワード」が発表された。
加治氏があげたのは、「社会課題とビジネスを結ぶマーケティング」だ。現状から積みあげた戦略計画を「フォアキャスティング」、SDGsのような理想の実現を目指した戦略計画を「バックキャスティング」といい、この両方にはできないギャップが発生する。加治氏はこのギャップを埋める役割を担うのがマーケティング部門だと話す。
「バックキャスティングで、どんどん社内外で変革を起こして欲しい。テクノロジーのスピードも今以上に遅くなることがない中で、来年マーケティングをどういう風にしていくのか期待しています」(加治氏)
川嵜氏があげたキーワードは、「THE MOST DIVERSE」である。
「これは企業のスタンスだけでなく個人的にもそう。先日『LIFE WILL』という感情を定量分析するサービスを立ち上げました。これはTwitterの投稿内容から感情を読み、今の置かれている感情から“Well-being”になれる住まいをレコメンドするサービスなのですが、この“Well-being”には、ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情も含めた様々な感情に触れることが大切です。そうした感情の多様性『Emodiversity(エモダイバーシティ)』も『THE MOST DIVERSE』につながると思うので、僕自身も色々な感情や体験をもって、多様な視点を身につけていきたいです」(川嵜氏)
木村氏は、漢字の「想」をあげた。
「今年は、価値の回帰が起こると考えています。これまでの企業が一方的に情報を押し付ける『自分本位』から『相手の心ベース』に(相と心で“想”)。また『創造』でなんとかしようとしてきたものは、まずはどうなるのかを『想像』することが重要になるでしょう」(木村氏)

また、ソーシャル疲れという言葉もあるが、SNSは“想シャル(想いをシェアする)”に、コミュニケーションは断絶から“想方向”へと形を変えていくと木村氏。
「また新しい価値の芽生えとして、『想活(想いを行動に)』、『想育(想いを育てる)』といった、これまでに忘れてしまっていた概念が出てくるのではないでしょうか。心がない時間がいかに空しいかがはっきりする時代だと思うので、心が充実するモノやサービス、イベントが求められるようになると思います」(木村氏)
最後に、江端氏からは、「アナログへの回帰」というワードが語られた。
「デジタルマーケティング、テクノロジーが発達しているからこそ、アナログへのより戻しがきて、人間がどんな動物なのかを見直したいという気持ちが出てくるのではないでしょうか」と江端氏。
「コトラー教授が、前述のサミットの中で、『Profit』(経済的健全性)・『People』(Well-Being)・『Planet』(SDGs)が今後大事になってくると話していましたが、それに『Peace』を加えたものが、マーケティングの新しい4Pになる可能性を感じています。既存のマーケティングの4Pに加え、これからのマーケティングにはこうした要素が重要になってくるのだと思います」と述べ、セッションを締めくくった。