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ニューロマーケティングでさらに深める顧客理解

脳科学の応用は、マーケティングが「科学」に近づく第一歩/NTTデータ経営研究所・茨木氏インタビュー

科学的なアプローチをマーケティングに上手に活かす、5つの姿勢

――脳科学には大きな可能性がある反面、気を付けるべきことが多いこともわかりました。マーケターが気を付けたい点について、教えていただけますか。

茨木:ニューロテクノロジーの応用に限らず言えることですが、もし、マーケター自身が今のマーケティング業務を脳科学を通じて科学的かつ成功確率の高いものに変えて行きたいという強い動機があるのなら、次の5つの姿勢が大切だと思っています。

1. ツールとしての脳科学の限界を正しく認識する
2. 因果と相関を分離する
3. 再現性があるか確認する
4. 抽象的な概念は、その定義と指標化プロセス、機能的意義を吟味する
5. 「ユーザーの課題解決に至るか?」を見極める

茨木:たとえば2.において、「クリエイティブに犬の画像を出すと売れる」のような相関関係を見つけたときには、本当にそれが因果なのかを見極めなければ、実効性のない施策に投資することになりかねません。実は、たまたま時勢的に売れる商材について、犬のクリエイティブを使って大量に素材を投下している状況があるかもしれないのです。マーケターの期待と思い込みによって、マーケティングアクションを「因」、消費者の行動を「果」とみなしてしまうケースも多いのではないでしょうか。

 それから4.に示した通り、脳計測をツールとして使う場合、抽象的な概念が出てきたときには注意が必要です。「脳が喜んでいます」とか「この脳波は感情が高まっていることを示します」という話が出てきたとき、ツッコミを入れなければならないのは「脳が喜んでいる」の定義はなにか「感情」とはなにを指すのか、そして、5.にあるようにそれがわかったところで一体どんなアクションを次に起こせばいいのかという点です。

 極論を言ってしまえば、その人に買ってもらうということが目標なら、嬉しくても悲しくても好きでも嫌いでも、購買行動を起こしてもらえればそれで良い。わざわざ中間の指標を増やす必要はないわけです。

クリエイターの創造性を科学のアプローチで支援したい

――最後に、茨木さんご自身の今後の目指すところをお聞かせください。

茨木:最終製品・実際のサービス開発・実際の経営など、現実のビジネスの世界における課題に脳科学からもっともっと貢献していかなければ、と考えています。視覚・聴覚への刺激が主となる広告クリエイティブと比べると、製品そのものや空間設計への応用には、より多様な感覚処理が絡んできたり、これまでの経験や社会的情報がより強い変数となったりと、複雑さが増します。向こう3年間くらいで、より良いもの、買ってもらえるもの、価値のあるものを作れるように支援をしていきたいですね。

茨木:それから、クリエイターさんたちが良い作品を作れるよう、科学的なアプローチでお手伝いしていきたいです。実は私はアートが好きで、高校生の頃は絵ばかり描いていました。将来はアートディレクターになるか、広告代理店で仕事がしたいと思っていて、そのために消費者心理学を学びたいと大学に進んだのです。

 その後、脳研究に触れて脳とココロの因果関係を解明していくことがおもしろいと思うようになり、研究の道に進んだのですが、今でも、目と耳から情報を入れるだけで人々の行動を変えていけるクリエイターさんたちはかっこいい、シビレルなと思っています。科学的なアプローチで、彼らの創造性を支援していくことができれば嬉しいですね。

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この記事の著者

蓼沼 阿由子(編集部)(タデヌマ アユコ)

東北大学卒業後、テレビ局の報道部にてニュース番組の取材・制作に従事。その後MarkeZine編集部にてWeb・定期誌の記事制作、イベント・講座の企画等を担当。Voicy「耳から学ぶマーケティング」プロジェクト担当。修士(学術)。東京大学大学院学際情報学府修士課程在学中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/02/20 07:00 https://markezine.jp/article/detail/32744

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