丁寧なコミュニケーションがコストにならない、CSの仕組みとは
西井:続いて、カスタマーサクセスについても教えてください。お客様との基本のコミュニケーションは、すべてLINEなんですよね。
杉岡:はい。ママやパパからは「ベビーフードを食べてくれない」「いつから食べさせるといいの?」といったお問い合わせが届きます。ミタスのカスタマーサクセスチームは、その悩みのひとつひとつを、チャットで解消していきます。カウンセリングやコンシェルジュに近い感覚ですね。
西井:その体験価値が、高い継続率につながっているのでしょうね。丁寧なコミュニケーションを実現するために、工夫していることはありますか。
杉岡:私たちのチームは少し変わった仕組みを採用しているんです。お客様へのチャット対応は業務委託している主婦の方や元保育士・栄養士の方に支えてもらっているのですが、対応時間に応じて給与をお支払いするのではなく、対応の件数でお支払いをさせていただいています。
時間を指標にした場合、企業としては「1時間かかった対応よりも5分間で終わった対応のほうが、コストが少なくて済むため望ましい」という判断をせざるを得ないと思います。しかし、コミュニケーションはミタスが届ける価値の根幹であり、経営者としても、お客様のリアルな声をたくさん集められる機会は貴重です。
そのため、スタッフの方にブランドにロイヤリティをもってもらい、モチベーション高く働いてもらえる状態を保つことができれば、時間ではなく数を指標にしたほうが、うまく機能すると考えています。
西井:なるほど、おもしろい仕組みですね。お客様がミタスを使い始めるきっかけや、使い続ける動機については、いかがでしょうか。
杉岡:入会時は、時短やストレスフリーを求めている方が多い印象ですが、使い続けてもらううちに、それ以上の価値に気づいていただいていると思います。
たとえば、ミタスは“食べてくれるまで”を保証の対象にしていて、お子さんが食べてくれなかった場合は、違う味のものと交換しています。また、ベビーフードにまつわる情報をまとめた動画をLINEで配信したり、2回目の配送時にベビーシッターサービスの割引券をつけたりと、子育て世帯の“食体験”にプラスになることをトータルでお届けしているのです。
西井:ベビーフードを売っているのではなく、ライフスタイルそのものを支えているのですね。よく、「定期通販とサブスクリプションは何が違うんですか?」と質問されますが、両者はまったく違うものです。定期通販は同じ商品を買い続けるから、商品を使いこなせなかったり、飽きられてしまったりして、顧客が離れていってしまうことがあります。
一方、データを活かして商品やサービスの改善を重ねるサブスクリプションは、顧客に“暮らし”を提案することができる。だから、入会時の動機と続ける動機が体験を通して変わっていく。サブスクリプションにおいて、とても大事なポイントです。
ブランドの信頼性を高めるファンがグロースを後押し
株式会社シンクロ代表取締役社長 西井敏恭氏
西井:現在は、どのようなプロモーション活動をされていますか。
杉岡:基本はバイラルですが、お友達紹介キャンペーンやミタスを体験いただくイベントなども展開しています。リスティングやアフィリエイト広告なども少しずつ始めていて、オーガニック検索も増えてきました。
西井:ミタスには、元陸上選手の為末大さんや、サッカーの長友佑都選手、体育学者の岡田隆先生など、スポーツに関連した投資家の方々がいらっしゃいますね。
杉岡:はい。やはり身体が資本のみなさんですから、食や健康に関心が高く、ミタスのメッセージにも共感いただいています。とくに為末さんには、サービスの立ち上げの頃から関わっていただいているんです。発信力をお持ちで、メッセージに信頼性がある方たちに助けられたことも、ミタスの認知拡大につながっています。
西井:ソーシャル時代に入り、ブランドやサービスの価値観に共感し、応援してくださるファンは、本当に大切な存在です。心から「このブランドが好き」と発信してくれる支援者やファンの存在は、心強いですね。
