Netflixがグローバルで展開する採用ブランディング
仲:ウォンテッドリーではこの連載をはじめ、リクルートメント・マーケティングのフレームワークについて随所で発信してきましたが、2019年は認知獲得やブランディングを目的としたコンテンツ活用がHR界隈でも改めて大きな注目を集めた一年だったかなと思います。
Netflixといえば、“We Are Netflix”というスローガンのもとEmployer Branding(採用ブランディング)をグローバルに展開していますよね。この取り組みはどのような目的で行われているのでしょうか。

徳本:Netflixのカルチャーや、そこで働くメンバー、自分たちの仕事がもたらすインパクトについてストーリー化し、まずは職場としてのNetflixの魅力を知ってもらうこと、働きたいと思ってもらうことが目的です。私たちの職場では、1日として同じ日はありません。候補者の方々に少しでも就職先としての魅力を感じていただけるように、中の人のストーリーを伝えない手はないと思っています。
メディアなどの第三者に、Netflixの魅力を伝えてもらうのを待つよりも、我々から発信する手段を持つことが重要だと捉えています。We Are Netflixの主役はNetflixで働くメンバーであり、私たちの仲間ですから、正確に伝えてあげたいですよね。

「この会社で働きたい」という気持ちは条件からは生まれない
仲:情報爆発の時代だからこそ、潜在的な候補者に自社の姿を正しく伝えることの重要性はますます高まっていますよね。私たちの提供するビジネスSNS「Wantedly」は共感採用のプラットフォームとして30,000社以上の企業に利用いただいていますし、ブログ機能を通じて2019年だけでも合計40,000件近くのストーリーが投稿されました。
採用においてビジョンやカルチャーを発信することの意義は、こうしたコンテンツ活用への意識の高まりからも裏付けられると思います。ウォンテッドリー社内では専属の編集者を中心にコンテンツを制作していますが、Netflixではどのようにしてメッセージングの方向性を定めているのでしょうか。
徳本:その時々の採用課題に沿ってコンテンツを作ることが多いですね。たとえば2019年は制作チームの層を厚くした年でしたから、優秀なクリエイターに良質な映画やテレビシリーズを製作するスタジオとしてのNetflixの魅力を知ってもらい、転職先として想起してもらう必要がありました。優秀なクリエイターにはフリーランスで活動する人も多い。そこで、フリーランスを離れNetflixでのキャリアを選んだ12人のクリエイターについての特集記事を作りました。

徳本:事業会社に所属した経験のないフリーランスの人にいくら採用担当者が自社の魅力を解説したところで、自分には関係のない話のように受け取られてしまいます。だからこそ当事者たちの生の声を届けることで、ターゲットが共感できるポイントを増やしていくことが大切なのです。
とはいえ、いつも戦略的に発信内容を決めているわけではなく、ときには直感的に「これを伝えたい!」というものから素材を選ぶこともある。コンテンツ制作は、アートとサイエンスの両方を駆使する作業だと思います。
仲:アメリカでは条件を中心に募集要項を組む採用サイトが多いですが、Netflixはとにかくカルチャーや働きがいを中心にコンテンツを作っていますよね。そのあたりに、Wantedlyというプラットフォームの世界観とも非常に近いものを感じています。
徳本:ありがとうございます。私たちはトップクラスの報酬を出すからと言って、それだけに惹かれる人材が欲しいわけではありません。We Are Netflixでは待遇面を押し出すよりも、組織としての魅力をコンテンツ化することで候補者にインスピレーションを得てもらうほうが圧倒的に効果につながると思っています。
つまり、この会社には人生で最高の仕事があり、最高の挑戦と成長体験があり、厄介な決まりごとに縛られない「自由と責任の文化」のもと優秀なメンバーと仕事に打ち込める環境があることを伝えたい。それこそが、人が会社を選ぶ理由となるものです。