ネット広告のシェア拡大から業界全体のDXまで、戦略は?
――では、各事業における具体的なアプローチについても教えていただけますか。
新澤:2019年2月に発表した中期経営計画では、いくつかのフェーズに分けて成長シナリオを説明しています。まずはネット広告市場においてシェア拡大を目指します。計画の核に据えているのが、事業の垂直統合です。
これまでは各々が垂直統合と競争優位性の向上を目指していましたが、統合にともないパフォーマンス広告/ブランド広告の両市場をカバーできるようになりました。その総合力を武器に、CARTAがいわゆる上流工程からメディアの領域までをすべて網羅していくことを理想として動いています。
そのことが、クライアント様に「透明性があるね」「CARTAが間に入っていると、価値が上がるね」という実感を持っていただくことにつながるはずです。

宇佐美:実際にこの1年間で、事業セグメントの変更や、両社で重複しているプロダクトの整理・統合を行ってきました。エンジニアが1つひとつのプロダクトにより集中できるような、そういう体制作りですね。
新しい取り組みのプロダクトとしては、ブランド領域において、2019年の4月にブランド広告向けアドプラットフォーム「PORTO」をリリースし、現在も機能拡充を進めています。ブランド領域への挑戦はまさに、経営統合しなければできなかったことだと思います。
新澤:また、統合力をより高めていくために、専門領域に関して深堀ってプランニングをする専門子会社として、DtoC領域では「Barriz」、BPO領域では「ビズテーラー・パートナーズ」を設立しました。
こうした事業を推進しながら、次のフェーズとして、先ほどお話したテレビ/OOH広告市場における業務プロセスのデジタル化、さらにはビジネスモデル全体の変革を先導していくことを見据えています。さらにその先として、その経験を他産業のデジタルトランスフォーメーションに展開していくことを想定しています。
それぞれの存在を前提に、最大公約数を言語化する
――では、少し視点を変えて組織体制の整備についておうかがいします。制度も文化も異なる2社の統合は簡単なことではないと思いますが、どんなことから着手されたのでしょうか。
宇佐美:おっしゃる通り、既にそれぞれ拠点も持っていましたし、就業規則も人事制度もバラバラで、お互いに大切にしている価値観もありました。
そこで一旦、お互いがどういうことをやっているのかを知ることから始めました。その上でCARTAという会社がスタッフに対して求めるもの、スタッフたちがCARTAに対して、どういう姿勢で臨んでほしいかという原理原則を作っていきました。
――なるほど。詳しく教えていただけますか。
宇佐美:元々あった2つの会社を一気に1つの会社にして新しい価値観を作っていくのではなく、それぞれが存在することを前提として、共通して実現すべき最大公約数のところをしっかりと言語化していく、ということでしょうか。
たとえばCARTAが大切にしたい価値観を語るときには、働き甲斐という言葉を使うのが良いのか、働きやすさという言葉のほうが良いのか。それぞれの会社で、これまで理想としていたけれど実現できていなかった事柄を洗い出しつつ、1つひとつ言葉にこだわりながら、すり合わせを行っていった感じですね。
新澤:昨年のインタビューで宇佐美さんが強調していた、いわゆる“対等な精神での統合”は、言うのは簡単なんですけれど、実行するのは結構難しくって。それでも、共通言語を作るということにこだわって取り組んできたのは、とても良かったなと思っています。
宇佐美:現場ではコミュニケーションインフラの統合も完了しました。オフィスこそ渋谷と東銀座に分かれて事業をしていますが、だいぶ、1つの会社なんだなっていうことを実感し始めているようです。決してまだ、諸手を挙げてすべてが上手くいっているっていうわけではないのですが、最近は「統合ではなく、融合だよね」という言葉も出てくるようになっていいます。