正確なカスタマージャーニーマップが描けない要因とは?
企業と生活者の間に、なぜこうしたギャップが生まれるのだろうか。その理由として、大きく2つのことが考えられる。
1つ目は、オンライン・オフラインを横断する生活者の消費行動の複雑化によって、企業側が正確なカスタマージャーニーマップを描けていないということ。2つ目は、オフライン・オンライン横断施策を実行するためのデータの利活用の環境が整っていない企業が多いということだ。
前者の要因として、マーケティング担当者が経験や主観でカスタマージャーニーマップを描いてしまい、実際の顧客の声や行動を把握できていないことが考えられる。また、顧客を同世代や同年代という属性で一括りにしてしまうという問題もありがちだ。
「DNPでは、ライフスタイルや購入履歴などから価値観に準じて生活者をクラスタリングするDNP独自の『価値観クラスター』というサービスを提供しています。実際にM1層(20代〜30代前半)の男性をクラスタリングした例では、同一年代・性別でも、オフラインメディアを重視するペルソナとオンラインメディアを重視するペルソナの2つに大別できるという結果が出ています」(小路氏)
このように、同一世代でも、オンライン・オフラインという切り口でターゲットのタイプは大きく変わってくる。マーケティングにおいては、さらにさまざまな視点で捉えていかないと、顧客を正確に把握することができないだろう。
カスタマージャーニーマップを生成するサービス
DNPでは、オンライン・オフラインを横断する消費者行動をデータ起点で把握し、カスタマージャーニーマップを作成するための2つのサービスを提供している。
1つ目は、Emotion Techと共同開発した「エモーショナルカスタマージャーニーマップ」。顧客ロイヤリティーをたった1つの質問でスコアリングするNPS(ネットプロモータスコア)を活用することで、カスタマージャーニーマップのタッチポイントにおいて、どこに生活者が抱える課題があるのかを数値化・視覚化する。
そして2つ目は、コレクシアと共同開発した「価値観カスタマージャーニーマップ」。生活者や顧客にネットアンケートでオンライン・オフライン双方での購買行動に関する質問を行い、一人ひとりのカスタマージャーニーマップを自動で生成するものだ。これらのサービスにより、多種多様な価値観を持つ顧客にペルソナデータを紐づけ、オンライン・オフライン融合した形での消費行動を把握することができる。
こうしてカスタマージャーニーマップを活用し、オンライン・オフラインを横断する顧客の課題を顕在化させても、体験価値の向上につながる施策の実行ができない場合がある。その要因として、各部署がバラバラにデータを管理しているなど、オンライン・オフラインのデータ統合が困難だという背景がある。
「オンライン・オフラインのデータ統合をしようと思うと、巨大なデータウェアハウスのような統合システムが必要となり、莫大なコストと人手、時間を要するので難しいという問題が出てきます。また、データを統合することができたとしても、それらを利活用するスキルが不足しているという課題もあります」(小路氏)