「ブランドマーケティング」の組織名に込めた課題意識
栗原:才流の栗原です。今回はSmartHRの執行役員、Vice President of Marketingの岡本剛典さんをお招きし、いくつかの観点からお話をうかいがいたいと思います。早速ですが、2020年になってから組織体制を大きく変更されたそうですね。
SmartHR 執行役員 Vice President of Marketing 岡本剛典さん
2009年GMOクリック証券株式会社に入社。プロダクトマーケティング職を経て、マーケティング責任者に着任。2018年10月よりマーケティング責任者としてSmartHRに参画。これまでに約100億円を投下し、デジタルからマスマーケティングまでを統合したマーケティング・ブランディング戦略の策定・実行し、事業成長に貢献。
岡本:はい。元々はネット広告やMAツール運用などを行うオンライン、展示会やセミナー、イベント、テレビCMでコミュニケーションをしていくオフラインという機能別で組織を分けていました。
ところがこの体制でやっていると、どうしてもKPIがリード獲得に寄りすぎてしまい、マーケティングとしては獲得型の施策ばかり走るような状態になってしまいます。途中まではそれで良かったのですが、徐々に「取れるリード数に限界が生じているよね」「中長期的な潜在層と言われる人たちにもリーチしていく必要があるよね」という感覚が大きくなってきて、体制変更に至りました。
現在は、獲得型の施策を行う「リードマネジメント」と、認知を獲得していく「ブランドマーケティング」の2つに再編成しています。
栗原:なるほど。リードマネジメントについては何となく理解できるのですが、ブランドマーケティングというふうに設定した背景は?
岡本:名称については「マスマーケティング」などでも良かったのですが、今僕たちが何をしなければいけないか、という課題を明確にするために付けました。
SmartHRというプロダクトが出た当時は、人事労務のクラウドソフトウェアという領域では日本で初めてのサービスだったため、完全なブルーオーシャンでした。
しかし徐々に競合が出てきて、セールスの商談でもコンペが増え始めてきたんです。自分たちは「他社とのプロダクトとは違うぞ」と思っていても、お客様には違いが分かりにくくなっていて、「値段が高い/安い」のような論点になってしまうこともある。明確な差別化が必要だ、ブランディング活動をちゃんとやっていこう、という意味も込めて、ブランドマーケティングという名称を掲げました。
栗原:面白いですね。この領域は効果測定が非常に難しいのではないか思うのですが……。
岡本:そうですね。迷いながら正解を見つけているというのが現状です。行っていることとしては、リサーチ会社を使った認知調査、指名検索数の推移チェック。それから指名検索が意味のある検索だったのかを追う意味で、サイトでのCVRも見ています。
世の中の空気を踏まえ、土壇場で方針転換
栗原:実際いかがですか?2020年から体制変更されて。
岡本:最初はメンバーたちも「どこから手を付けるんだっけ?」という状態で、少し緩やかな走り出しだったのですが、ここ最近はスムーズに動いてます。テレワーク訴求の交通広告は、反響がありましたね。他にもテレビCMを打ったり、新聞折り込みチラシをやってみたりと、いろいろトライしています。
栗原:とても動きが速いなと思ったのですが、どんな意思決定経路でスピーディに進まれてるんですか?
岡本:交通広告は、4月中旬くらいに掲載されたものです。元々春は入退社シーズンなのでアクセルを踏んでいこうということで、マス施策を行うことは決めていました。
コロナの状況は想定できていなかったので、「業務効率化できますよと」と、ストレートなメッセージで入稿物を用意していたのですが、準備をしていく段階で、「状況が変わってきたな」という感覚があって。本当に入稿ギリギリの土壇場で「今だったらこうした方が良い」と、全部を作り直して、何とかやったという感じです。