興味層の取りこぼし防止に向けて
それでは、イベントAの現地観戦「意向層」にはどのような特徴があるでしょうか。まずデモグラ属性の構成比をイベントAの「興味層」と比較しますと、居住エリア・性年代・家族構成・世帯年収すべてについて「興味層」と大きな差はなく、「興味層」から「意向層」への移行は属性の影響ではなさそうだとわかりました。ただし、「意向層」は「興味層」以上に年齢層や世帯年収が高めで、「興味層」の特徴がより濃くなっているとは言えそうです(図表3)。
デモグラ属性による影響でないのなら、「意向層」へ移行しなかった人はどのような特徴があるのでしょうか。一度は興味を持ってもらえたのに「意向層」へ移行せずターゲットを取りこぼしてしまったのはもったいなく、イベント開催に向けて再度アプローチをしていく必要がある人だと考えられます。
そこで、「興味層」から取りこぼしてしまった人を「離脱層」とし、「離脱層」の価値観特性について生活者360°Viewerを使い見ていきます。
まず、PC・モバイルの使い分けについて「離脱層」と「意向層」を比較しますと、離脱層はPC・モバイルの利用が両方とも多い人が35%(「意向層」より−23.0pt)、モバイル利用は多いもののPCは中程度の人が34%(「意向層」より+9.0pt)、モバイル利用が多くPC利用は少ない人が24%(「意向層」より+19.0pt)とモバイルに偏りがありました。「意向層」の特徴的な価値観特性(情報)として「情報が必要になったときの調べ方がすぐにわかる(「離脱層」より+5.4pt)」があり、日常の中で情報を調べる機会が多いと推測できます。PCもモバイルも多く利用している人はおそらく用途に応じて積極的に端末を使い分けており、また情報を調べる機会も多いということで「離脱層」よりもITリテラシーが高そうだと考えられます。そのため結果として「意向層」に移行しやすかったのかもしれません。
では、「意向層」に移らず離脱してしまった「離脱層」を取り込むために、その他の特徴を見てみましょう。「離脱層」の特徴的な価値観は図表4のとおりです。
「現実を忘れてパーッと騒ぐことが好きだ」「イベントや友人との集まりなどに参加するのは好きだ」「大勢で遊びに行ったり飲みに行ったりするのが好きだ」など人付き合いに積極的で、賑わいのあるイベントや楽しい場所を求めているようだとわかります。消費価値観では「話題になりそうなことを見つけて、広めたい」「ジャンルを問わず、流行は常にチェックしている」というように流行りに敏感なことがわかります。
購買行動では「生活を楽しいものにするためにはお金も時間も惜しまない」「新しいものを積極的に取り入れたい」という価値観を持っていることからも、楽しいことが好きで新しいものや流行に敏感なことがうかがえます。
離脱層をどう取り込むか?
チケットが高額で、かつ入手方法がインターネットに絞られたことにより、イベントAのチケット申し込みに至るには経済面とITリテラシー面の影響があったことがわかりました。また、一度「興味層」として取り込めたにもかかわらず約4割の離脱があったのも事実です。せっかくの大イベントですので「離脱層」をもう一度取り込んでイベントを盛り上げていきたいですよね。
では、「離脱層」を取り込むためにはどうしたら良いでしょうか。「離脱層」は人付き合いに積極的で大勢でわいわい楽しみたい傾向があるので、お祭り気分で楽しめるパブリックビューイングは有効な手だと考えられます。イベントAの開催は夏ということもあり、地域の夏祭りと合わせてイベントをすることで、会場近辺だけでなく、会場からは遠い地域の活性化にもつなげられるかもしれません。ただし、パブリックビューイングを開催する場合は主催団体について制限があるようなので注意が必要そうです。
最初のチケット販売は抽選制でしたが、チケットに当たる・当たらないの運だけでなく、また経済状況にかかわらず万人が参加できるようなイベントを企画し、みなさんが参加できる取り組みが必要となりそうです。
