デジタルを駆使して「ブランドを象徴する場所」にファンを招待
高橋:今回のイベントは急な企画だったとのことですが、KPIはどのように設定されたのですか?
寺門:リアルで開催してきたイベントは参加人数をKPIとしていたことが多いのですが、初めてのオンラインイベントだったので「最初から最後まで視聴し続けてもらうこと」を指標にしました。エンゲージメントの濃さを「参加人数を持続させること」に置いたんです。
また、イベント後にSNSでどれぐらいポジティブなコメントをいただけるかも指標としました。この時重視したのはコメントの量ではなく、質。つまり定性的な部分です。最終的には、「楽しかった」「また企画して欲しい」というコメントが多かったので、新しいイベントの可能性が生まれたなと感じています。
高橋:狙い通りのKPIを達成できたわけですね。このようなお取り組みは今後も続けていかれるのでしょうか。
寺門:はい。グローバルでも、6月14日にデンマークにある「レゴハウス」というミュージアムのバーチャルツアーを実施しました。ミュージアムでガイドがレゴの歴史や作品を解説する様子をデジタル上で配信し、チャット機能で質問を受け付けるというものです。
高橋:デジタルを駆使すれば、レゴの世界観を感じてもらうことが可能になりますね。ブランドを象徴する場所に足を運んでもらうことが難しい今、ブランドがファンに歩み寄り、体験やサービスを届けていくことが一層大切になっています。
寺門:これまでも全国の店舗でリアルイベントを開催するのは難しく、歯がゆく感じるところもあったのですが、オンラインなら場所の制約を超えてファンとつながることができます。オンラインの活用は、コロナ禍における限定的なものではなく、今後増えていくのではないかと思います。
今ブランドにできることは?部署横断で考える習慣を
高橋:今回、寺門さんにお話をうかがって最も印象的だったのが、現場の発想からアクションを起こし、その後からそれぞれの動きを統一する傘となるコンセプトを作ったという順序の部分です。
レゴでは普段から「誰に届けたいサービスなのか」ということが明確になっていて、だからこそ、今回どんなアクションを取るべきかすぐに決めることができたのではないでしょうか。
寺門:そうですね。まさに「子ども中心」が大きな指針となりました。また、社員それぞれが、企業の目線ではなく、日本や世界中にいる親子の身になって、今必要とされているものは何かを考えられたことも大きいと思っています。「これは営業が考えるべき課題じゃないよね」とか「この部分はマーケティングに任せておこう」と役割で区切ってしまうのは、もったいないことです。
部署やポジションに関係なく、世の中で今何が求められているのか、企業として何が提供できるのか、という軸で考えたアイデアを自由に発言できること。それについて皆が聞く耳をもち、建設的な議論ができる環境が大切なのではないでしょうか。
高橋:おっしゃる通り、役割で固定された組織では、刻々と変化するニーズに対応するのは難しいと思います。平時から、ファンはブランドに何を求めているのか部門横断で考えるための習慣と、その根底にある企業文化が浸透しているからこそ、今回のような状況にもしなやかに対応できるのではないかと思います。寺門さん、本日はありがとうございました。