コロナ禍で検索数が減少した業界は?
MZ:ここまではプラスの影響を受けた業界の話が中心でしたが、一方でマイナスの影響を受けた業界はどういったところなんでしょうか。
宮村:たとえば、「旅行業界」に関する検索数などは明らかに減っています。ただこのような場合、我々は「結果の分解」が大事だと思っています。
旅行業界の場合、特に海外旅行への関心が著しく減少しており、それが業界全体の関心を引き下げる結果となりました。その一方で、「緊急事態宣言が解除される」という報道が増えたタイミングで、特定エリアの検索が増加し始める動きも見てとれました。
旅行関連の検索キーワードは、ゴールデンウィークや夏休みなど年間の中で検索が伸びる時期に周期性がありました。しかし、新型コロナウイルスの影響で1週間、短いものだと毎日検索動向が変わるような状況に変化したのです。
この他にも、バイト領域などでコロナの影響を受けた「人材業界」も全体で見るとユーザー行動は少し減少しています。しかし、例えば転職活動の影響は少なく、特にハイクラス系の転職は影響をあまり受けてないことがわかりました。
このように、新型コロナウイルスの影響がマイナスに出ている業界内でも、影響が少ないもしくは上向きのカテゴリはあります。そこを見極めてマーケティングプランを検討することが、各マーケターには求められていると思います。

その他にはこの状況下でもあまり影響を受けていない業界もあります。具体的には、自動車・不動産・通信インフラなどです。どの業界も前年比約100%で横ばいとなっています。在宅時間の増加から検討する時間が増え、単価の高い耐久消費財系の商材はあまり影響を受けていない傾向があります。
そのため、良い悪いだけではなく、変化のないものへも着目してみると、新たな打ち手へのヒントになるのではないでしょうか。
コロナ禍で求められた情報とは?
MZ:この状況下において、どのような情報が求められるようになっていると思いますか。
宮村:新型コロナウイルスの影響でユーザーが求めている情報として多かったのは「医療」「消費財」「小売」の3つですね。
直近の2020年4~5月では、徐々にAfterコロナやWithコロナなど新しい生活様式に向けての関心が高くなっています。若干減少傾向ではありますが、1月から断続的に「医療」カテゴリへの関心は高く、検索キーワードもマスク関連から呼吸器関連のマニアックなものまで幅広いキーワードで検索数が増加していました。
日用品などの「消費財」の検索も自粛による在宅時間の増加で顕著に伸びていましたね。さらに、「小売」の中で伸びていたのはフードデリバリー関連の検索キーワードです。最初は自粛でやむを得ずの部分が大きかったのですが、様々な領域でフードデリバリーが行われるようになり、結果としてその文化が浸透していったのだと思います。
海外の事例を見ても、宅配サービスやECでの買い物は第1波が収まった後も伸び続け、生活者のスタンダードになりつつあると言われています。日本でもこれらが急速に発展していく可能性は高いのではないでしょうか。