理論を学び業界のルールチェンジに強くなる
最近のセミナータイトルには「××のテクニック大公開」や「××業界の事例紹介」といった個別具体的な話が増えているようです。こういった内容は、明日からすぐに活用できるので素晴らしい面はあるものの、マーケットの状況が変わったり、業界構造が変わったりすると応用が利かないこともあります。
たとえば「業界Aのメールマーケティングの事例を紹介! 開封率を倍にする分析手法を公開します!」というセミナーは、図版の左上の先端部分にあたります。一方、「令和におけるドン・シュルツの統合型マーケティングの有効性を学ぶ」というセミナーの場合は、図版の中央(マーケティング)の部分を指します。本来どちらのセミナーのほうが偉い、偉くない、という話ではないのですが、このような話をすると、業種間、世代間のギャップによる争いが発生しがちです(前回の記事でも取り上げましたね)。デジタルマーケティングから業界に入った方は、デジタルマーケティングがマーケティングのすべてだと思ってしまいがちなので、図版で言うと、特定の業界の三角の先端部分だけとても詳しい、という状態になりがちだったり、「学術的なマーケティング理論を知って、机上でコネ回しても、具体的に業績を改善できるものではないよね」と考えてしまったりするようです。
たしかに具体的なテクニックを知っていれば、即現場で使えますが、その効果は短期的なものとなります。SEOの例はわかりやすいですが、小手先のテクニックを知っていても、アルゴリズムのアップデートによって、常識が一変したことは今までも何度もありました。他にも、3rd Party CookieやGDPRなど、大きなルールチェンジはたびたび起きるものです。そして、テクニックは具体的であればあるほど、特定の業界でしか活用できないものが多く、業界自体に変革が起きたり、異業種へ転職した際には役に立たないことも多々あります。一方、マーケティングの理論は短期間でコロコロ変わるものではないので、テクニックに比べて長期的に役立ちますし、やはりベースとなる理論をわかっていたほうが、「なぜ、その施策をするのか?」もしくは「しないのか?」といった判断ができるようになります。
デジタルからマーケティングの世界に入った方々にはぜひとも、業界が変わっても、ルールが変わっても役に立つマーケティング論を改めて学んでみることをおすすめします。特に長きに亘って読まれている本がおすすめで、「Cookieって何? 食べられるの?」なんて言われるかもしれませんが(笑)、1回りと言わず2回りぐらい上の先輩マーケターが推奨する本を読んでみてはいかがでしょうか?
結局、最後まで具体的なデータの分析手法の話は出てきませんでしたね(笑)。個別具体的なテクニックは検索すればいくらでも出てきますので、今回は取り上げませんでした。大切なのは、分析を行う前に気をつけておくことがある、ということ。そして、分析もあくまでテクニックのひとつですので、ドメイン知識やマーケティングの理論をしっかりと押さえるのも大事です。最後に、世代や業界における断絶は不毛なので、ぜひとも垣根を越えて前向きに情報をシェアできるようになるといいですね。
データの先には人がいる
「自治体の方々はこのコンテンツが好き」「この資料をダウンロードする人の商談化率は高い」など、データから様々なことがわかります。すると、社内の誰よりも顧客を理解していると勘違いしがちですが、“データの先には血の通った人がいる”ことを決して忘れてはいけません。私は商談や、顧客サポートなどの現場にも定期的に参加しますし、事例記事の取材も行っています。データも大事ですが、顧客からじっくりと話を聞くことで、有益な情報が得られることがありますので、(酒好きなだけかもしれませんが)飲みに行って率直な意見を聞かせてもらうこともします。顧客を正しく理解するのはマーケティングの基本で、泥臭い方法でしか得られない情報があることもお忘れなく!
