32歳で事業会社のマーケターに。大変だったことは?
野崎:ここで本格的にマーケターへの道を志すわけですね。失礼ながら、このときはおいくつだったんでしょうか。
酒井:32歳ですね。
野崎:このご年齢からマーケティングキャリアを目指すのは、日々キャリア相談を受ける身からすると正直遅めで難易度はとても高いです。しかしながら、不動産ポータルサイト運営企業からマーケティング職で内定をもらったんですよね。まさにオールドルーキーと言えます。入ってからはどのようなお仕事を?

酒井:最初は広告運用をしている広告代理店のディレクションですね。
野崎:今回の転職も前職のECコンサルティングとはギャップがあるように思います。どのように埋めていったんでしょうか。
酒井:前職でネット広告を取り扱っていたこともあり、各メニューの利用目的は理解していました。ただ、具体的な運用方法などはわからず、こちらが提案しても「それはできません」と広告代理店の方に反対されることも多く、ギャップを感じたし悔しかったですね。
でも、その分セミナーにたくさん行ったり、メディアの記事を読んだりと独学で勉強して徐々に勘所をつかんでいくことができました。
野崎:酒井さんが事業会社のマーケターに転身した際のギャップや悔しい経験は、特に若手マーケターの方には非常に勉強になります。似たような状況の方にアドバイスはありますか。
酒井:とにかく社内外のミーティングで出てくるわからないキーワードを検索して、知識として蓄えることですね。
あと、ディレクション業務でも、とにかく各広告媒体の管理画面をひたすら見たほうがいいと思います。様々な設定の目的などを意識して管理画面を見ていると「この設定は変えたほうがいいのでは?」と思える箇所が出てきます。私自身は、そういったことを相談した際に広告代理店の方のレスポンスが遅く、自ら改善していったほうが早いし効果も上がるのではと思い、上司に提案して内製化を進めました。
野崎:実際にインハウス化を進めたことで結果は出せたんですか。
酒井:CPAを大幅に下げることに成功しました。ECコンサルティングの時代から課題となる部分を探し出す力が身に付いてきて、どこを直せばCVRが上がり、CPAが下がるのかを考えひたすらに打ち手を考えるのはとても楽しかったです。
あえてリソースのない会社に行くのも選択肢
野崎:オールドルーキーながら、デジタルマーケティングスキルを高速で磨いてきた酒井さんですが、なぜ現在のナイルに転職されたのでしょうか。
酒井:2つ理由があって、1つは自分が広告運用で成果を改善しても事業成長にはつながっていなかったから、もう1つが資金力のない会社に行きたいと思ったからです。前職は資金力もある会社だったこともあり、極論大量の予算をかけて強引に成果を出すこともできました。でも、それではつまらないなと。
野崎:この考え方はおもしろいですね。リソースが限られている環境の方が、自分の介在価値が多岐に渡りやすく、業務範囲を拡充しやすいです。実施にナイルに入ってみていかがでしたか。
酒井:今の仕事は非常に楽しいです。前職から予算は下がった分これまで以上に頭を使うようになりましたし、それで結果が得られたときは嬉しいですね。
若くてマーケターになることを志している方は、早い段階でリソースの少ない会社でアイデアを武器に戦う環境にいたほうが、思考力という観点では成長につながると思います。
野崎:それは同意です。転職シーンでもリソースが潤沢な環境でキャリアを作ってきた場合、よりベンチャー感のある他社では再現性があるのか、はよく見られている部分です。最後に今後の展望を教えてください。
酒井:今後も運用型広告やアドテクノロジーに関わっていたいです。そして、もっとデジタル広告に対する生活者の認識をポジティブに変えられるようなコミュニケーションを仕掛けたいと思います。
野崎:ありがとうございました。酒井さんは32歳からマーケティングキャリアがスタートしたオールドルーキーでしたが、決して過去の経験をムダにすることなく、マーケティング感覚を養っていらっしゃいました。現在支援会社などで働く若手の方にも役立つ示唆がたくさんあったのではないでしょうか。
転職という手段に限らず、自分がワクワクするチャレンジができるとキャリアの幅も広がります。特にデジタル時代は流れが早いので、チャンスは多いはずです。
