コロナ下でブランディングに成功した企業4社
情報発信自体を一度ストップして様子見をしたり、今までどおりのスタンスで情報発信をしても特に共感を呼べなかったりと、多くの企業がコロナ下のブランディングに苦労していました。そんな中、発信すべき情報をしっかり目利きし、スピーディーに情報発信したことでブランディングに成功した企業があります。
株式会社メンバーズ
自社独自のノウハウを社会に還元する目的で外部公開した企業がWeb運用大手のメンバーズ社です。元々働き方改革の先陣企業として、残業時間削減と年収アップの同時実現や2017年には女性管理職比率30%を達成するなど、様々な取り組みを行っていた同社ですが、オリンピック期間中に選手村となる東京晴海に本社オフィスがあることから、大会期間中は出社が困難になると考え、その間をテレワークで乗り切る方針で、昨夏、東京エリアの勤務者全員(約500名)が2週間のテレワークをしていました。
この結果から、一斉テレワークに必要な準備や課題、今後の展望を取りまとめ、社内用の「テレワーク導入マニュアル」を作成しオリンピックに備えていましたが、コロナ感染拡大防止を目的に企業のテレワークが推進されたことを機にこのマニュアルを外部公開したところ、テレワークに必要なノウハウが一から解説されているということで広く支持を集めました。また、現在全国でテレワーク中の社員約1,500名へアンケート調査を実施し、そのレポートを公開している点も社会に還元する動きとして評価されています。
クロスロケーションズ株式会社
自社の独自データを活用し、社会性ある情報を定期的に発信することでブランディングに成功した企業が、Google Japanで戦略事業担当執行役員を務めた小尾氏が代表を務める位置情報ビッグデータAI解析のクロスロケーションズ社です。
同社は、全国の位置情報ビッグデータからAIが推計した、コロナ下における銀座や京都などの主要繁華街の「人の流れ(人流)」を分析し、プレスリリースで発表しました(図表2)。

外出自粛やコロナ対策として主要繁華街や観光地の人流動向は世の中から非常に関心が高く、社会性のある情報であったことに加え、全国の繁華街・観光地の訪問者数がコロナの影響で減少している様子が鮮明にわかる結果だったことも相まって、日経新聞や産経新聞、テレビ東京「WBS」「ガイアの夜明け」やフジテレビ「Live News it!」、日本テレビ「ZIP!」ほか、多数のメディアで紹介されました。また、その後も定期的に人流調査を発表し、コロナ下における訪問推計速報として重宝されています。
反響の大きさや記者からの相談も相次いだことから、通常有料である自社サービスをメディア関係者に無料提供し、報道時に活用してもらう取り組みも次に実施しました。これらの一連の動きにより、同社は認知が向上したほか、位置情報データ活用のリーダー企業としてのブランディングに成功し、位置情報を活用したマーケティング施策を積極化したい企業への導入が増えるなど、確実なリード獲得へとつながっています。
株式会社クラッソーネ
自社ネットワークを活用し、コロナにより業界がどのような影響を受けたのかを独自調査したのが、解体工事の一括見積もりWebサービスを展開する名古屋のIT会社クラッソーネ社です。
全国2,300社の解体工事会社ネットワークを活かし、「工事会社の9割が影響あり・7割強が売上減」という実態を明らかにした調査結果は、業界へのコロナの影響度が客観的に見える化されていると重宝され、新聞やWebニュースなどで多数掲載されました。同社は、業界に関連する法改正など社会的に大きな動きがある際に調査を行っており、最新の業界実態やトレンドを把握している企業としての有識者ブランディングに成功しています。
また、自社のコロナ対策としてテレワークを導入し、従業員同士の雑談を促す施策や在宅勤務手当制度などを取り入れています。これらについても、他社の参考になればということで積極的に発信し、毎日新聞や人事専門誌大手でのインタビューに至っています。
コグニティ株式会社
コロナ対策のための新サービスを新たに開発し、話題を集めた企業が、プレゼンや営業トークなどのAI解析技術を擁するコグニティ社です。テレワーク拡大にともないオンライン商談が急増していることから、オンライン商談時の営業トークをAIがチェックし、成約につながる営業トークかどうかを検定する新サービス「テレ検」(てれけん)の提供を6月に開始しました。
これは、コロナ下で急増するオンライン商談に関して、対面商談時の営業トークが通用しないといった声や、商談相手に気持ちが伝わりづらく、商談の手応えがわからないといった課題を受けて、5月頃から構想し約1ヵ月で開発しました。スピード提供へと至った点が特徴的で、Webメディアを中心に計15媒体で一斉に報じられ、サイトへのアクセス数や問い合わせ数が大幅に増加するなど、大きな反響につながりました。