Eビジネス戦略の実態
Eビジネスはアパレル業界が最も進んでいるが、中でもオンワード樫山の2019年度のEC売上は約200億円で、自社EC比率が90%に達している。大手メーカーでこれほどの高い自社EC比率を叩き出している企業はないのではないだろうか。
同社はECと店舗の壁を取り払った設計になっている。在庫やポイントが共通化されていることはもちろんだが、人まで共通化されている。人の共通化とは、ECサイト内に販売員がコーディネートをアップするオウンドメディアがあり、ここで紹介されリンクを介してEC決済された売上はすべて販売員の店舗に社内計上されるのだ。ある地方のショップでは一人で8,000万円をECで売る人まで誕生している。
販売員はどちらのチャネルで売ってもよいのである。人気の販売員にはファンが多く付き、店舗とECの両チャネルで購入するオムニ顧客も増加する。その結果、店舗でしか購入しない顧客に対してオムニ顧客の年間平均購入金額は2.4倍(2019年度)となっている。
また、ECサイト内で店舗在庫も表示されているので、Webルーミングの手助けも行っている。このような仕組みは自社ECだからこそできることである(以上、白井秀樹著)
広告会社にも変化が求められている
広告・マーケティング会社として、企業のDX/D2Cビジネスのパートナーとしての対応と変革は急務である。長年得意としてきた広告のプランやアイデアあるいはブランディング施策に関する提案だけでなく、その顧客の売上や成果、体験価値向上や評判形成、さらにロイヤル化、ファン化に寄与するまでの役割が期待されている。
この領域には、コンサル、広告会社、ネット専業代理店、プラットフォーマー、ソリューションテクノロジーベンダー、データプロバイダーなど多くの企業がひしめく。
広告会社がこの領域で力を発揮できるのは、先ほどのファネルで見たように、顧客インサイトを鑑みたマーケティング全体の設計から、以前から得意なブランディングやクリエイティブ、コンテンツ、統合メディアプランニング、これに加え、顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)まで考えたD2Cモデルのデジタルマーケティングの戦略とその具体的な実施がすべて一貫してできることである。
たとえば以下のようなソリューションが考えられる。

D2Cモデルの再構築:D2Cモデルの顧客体験に関して、カスタマージャーニー全体を俯瞰して見直すコンサルティングと実施案を提供
顧客動線の統合マネジメント:オンオフ横断のメディア最適化やクリエイティブ、コンテンツのアトリビューション改善など顧客に最も届いて効くコミュニケーションを提供
Eビジネス化支援:リアル施策のデジタル化やオムニコマース化などデジタルを活用した事業拡張を支援
ファンを作るCRM:顧客との継続接点を作り、ブランドと顧客の関係値に合わせ、徐々に関係を深める体験を創出
顧客の再発見分析:獲得し蓄積した顧客DBから次の顧客のヒントを発見し、新しい顧客との接点やクリエイティブ、オファリングを創出
どの業界・業種もDXからは逃れられない
広告業界は「デジタルシフト」で最も影響を受けている業界のひとつである。従来の戦略や手法だけでは、「ディスラプション」されうる業界のひとつとなってしまう。
ADKも7月に新たに策定したビジョンで、「顧客体験創造会社」として生まれ変わることを決めた。その主要な戦略である「D2C」は、ますます進化するデジタル環境下で我々にとっても必須のソリューションである。幸い多くのプロフェッショナルも参画してきてくれている。
これからはどんな業種、業界であろうが、DX化からは逃れられない。経営者としてもビジネスマンとしても、意思決定や実行は迅速にやっていかないと生き残れないと感じている。
