ソフトバンクが仕掛けた、インサイドセールスの意識改革とは
では、2018年のデジタル化推進の開始から2年弱でどのように成果を上げていったのか。藤長氏はデジタルマーケティング・営業の高度化のポイントとして「意識改革」「マーケティング基盤の再構築」「効果的なコンテンツ作成」の3つを挙げた。
1つ目の意識改革で特に変化したのは、インサイドセールス。これまではコールセンターの延長で、顧客からの問い合わせに受け身で対応するのみだった。そこで藤長氏は、対面営業のエースをインサイドセールスのトップに据え、営業マインドを浸透させる様々な取り組みを実施した。

たとえば、顧客から追加の注文が来た際のアップセルやクロスセルの実施を徹底したり、他に困りごとがないか話を聞いたりして、チームで案件を獲得するような体制にしていった。また、営業と同等の評価体制で競争を促進。そうすることで、各メンバーの新規獲得に対する意識を高めていった。
また、営業部も顧客対応のみに集中できる営業部と、案件管理や事務処理を対応する営業支援部に体制を変更。効率的に案件に向き合えるようにし、その他にも成功事例やトークスクリプトの雛形共有なども積極的に実施。その結果、営業生産性は2019年同時期の約2倍に向上した。
「弊社のインサイドセールスには、対面営業のレジェンドであるシニア層も多く配置しています。これまでデジタルとは縁遠かった世代も、今の取り組みを非常に理解し、いろいろなチャレンジをしてくれています」(藤長氏)
顧客データの統合でメールのクリック率も3倍に
マーケティング基盤の再構築については、データ連携の課題を解決した。それまでもMAは使っていたものの、SFA(営業支援システム)とほとんど連携していないという弱点があった。そのため、顧客理解ができないままに、自社のタイミングで自社が知らせたいことを伝えるという、非効率的なアプローチとなっていた。

そこでソフトバンクは、新たな基盤としてWebマーケティングのツールを導入してMAとSFAを連携。これらはグループ会社であるTreasure DataのCDP(カスタマーデータプラットフォーム)を使い、一元的に管理をしている。
これにより、Web上の行動履歴から顧客の関心を知り、関心の高いコンテンツをメールで配信し、見込み客を作っていくというアプローチができるようになった。
「以前は低かったメール内のURLのクリック率が、一部の施策では、3倍にまで増えました。成果が出ていることを実感しています。ツールは日進月歩で変化していくので、各分野のスペシャリストを育成し、最新の使い方や他社事例なども日々勉強するという人材育成も行っています」(藤長氏)