年内には配信準備が完了予定
高橋:実装によりファーストパーティデータの活用が進みますね。パブリッシャーやSSPの反応はいかがですか?
今井:年明けごろから温度感が上がってきています。特にパブリッシャーの関心が高い印象を受けていますね。
最も影響を及ぼしているのは、今年1月に発表されたChromeのCookie制限ではないでしょうか。これまでもSafariにおけるITP制限などいくつか動きがありましたが、Chromeの使用シェアは日本でもとても高いので、業界への衝撃も大きかったように思います。
プログラマティックの取引においては、ノンリタゲとリタゲを比較すると、リタゲのほうが高いCPM(※)で取引がされているのは皆さんご存じの通りですが、現状はCookieベースでのターゲティングです。その手法ができなくなると、DSPもマーケターもターゲットとなるオーディエンスが見つけづらくなり、CPMを下げざるを得なくなります。このことへの危機感はパブリッシャーの方が大きいですね。
(※)Cost Per Mille::広告インプレッション1,000回あたりの広告料金のこと。
高橋:現在、配信準備はどのくらい進んでいますか?
今井:グローバルのSSPにおいてはIndex Exchange、PubMatic、Magnite等と、日本のSSPではfluct、YieldOne、GMO SSP、Ad Generation等と連携を進めており、日本市場でも新しいエコシステムの構築が進んでいます。年内には配信に関する準備が整う見込みで、IDベースの買い付けもさらに進んでいくでしょう。

高橋:GAFAに代表される大手プラットフォーマーとの連携は進むのでしょうか?
今井:そういったプラットフォーマーは独自のウォールドガーデンをお持ちのこともあり、他のIDとの連携実装が進むのは少し時間がかかるのでは?というのが正直なところです。
市場に対してソリューションを提供している背景には、まさに大手プラットフォーマーのウォールドガーデン以外でも、デジタルマーケティングができる別の有効な選択肢を作りたいという思いがあります。実はユーザーのデジタルメディアへの1日あたりの接触時間を見てみると、GAFA以外のサービスに接触している時間が約半分を占めているにも関わらず、投下されている広告費は半分以下なのです。であればGAFA以外のサービスにも、この接触時間に比例したメリットがもたらされるべきではないかと考えています。人ベースIDでターゲット可能なパブリッシャーがいわゆる“連合軍”を作ることで、収益性を高めていただきたいと考えています。
当社は大きなミッションとして「中立性」を掲げています。IDを紐づけるコネクティビティ(接続性)という観点から見たときに、どこか特定の企業やグループに属している場合、企業・グループに配慮したビジネス戦略を立てざるを得ない側面が出て来る可能性がありますが、それに対して私たちは独立した立場であることから、広告主、パブリッシャー、プラットフォームなど様々なステークホルダーとのパートナーシップを確立できます。