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電通グループのデジタル領域3社が描く、DXの最前線(AD)

イノベーションを起こすAI活用人材を一から育成 ダイキンとISIDが取り組む「企業内大学」の裏側

 AI・IoT分野の目覚ましい発展により、DXへの取り組みが必要不可欠な時代となりつつある。企業間での人材獲得競争が繰り広げられる中、ダイキン工業は自社社員をAIのプロフェッショナルへと育て上げるべく、ISIDからの支援を受けて「ダイキン情報技術大学」を開講。自社DX人材の育成に心血を注いでいる。本稿では、同学のキーパーソンである、ダイキン工業の下津直武氏、電通国際情報サービス(ISID)の久保田敏宏氏に詳しい話を聞いた。

新入社員100人をAI活用人材に育て上げる企業内大学

――まずは、下津さんの現在ご担当されている業務と、ダイキン情報技術大学の概要について教えていただけますか。

下津:私はダイキン情報技術大学の事務局で、立ち上げ当初から企画・運営を担当しています。

ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター 管理グループ 担当課長 下津直武氏
ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター データ活用推進グループ主任技師 下津直武氏

 ダイキン情報技術大学は、AIやデータ活用に優れた、いわゆるDX人材の社内育成を目的として、2017年12月に設立されました。新入社員100名を2年間預かり一から指導することで、AI技術の活用と推進を実現できる人材へと育て上げることが、我々のミッションです。

 新入社員の教育以外にも、既存社員や基幹職層向けの教育も併せて担当しております。

 2023年度までに、AIに関する専門知識と技術を要した社員を、ダイキン全体の10数%にあたる1,500名まで増やすことが当面の目標です。

――どのようなカリキュラムで運営されているのでしょうか。

下津:1年目は、座学と演習が中心のカリキュラムです。まずはコンピュータの基礎について学び、AIについての専門的な教育は、包括契約を結んでいる大阪大学の講師に来ていただいています。

 2年目はPBL(Project Based Learning)といって、当社の各部門が抱える課題に対して、受講生自らが提案と解決を行います。OJTのような、実務ベースの演習がメインです。

ビジネスイノベーションのためには、DX人材の確保が必須

――AIやデータ活用に優れた人材の育成を目的にされているとのことですが、ダイキン情報技術大学の開講以前は、DX人材の確保についてどのような課題を感じていたのでしょうか。

下津:ご存じの通り、当社はIT企業ではなくモノづくりの会社です。当時の社内では情報系人材が不足しており、その中でもAI領域に知見を持つ人材は、2~3名しかいないような状況でした。私自身、元々は空調機の集中管理システムのソフト開発を行っていましたが、AIの技術者が足りず、現在のプロジェクトを任された経緯があります。

 自社で抱えるAI活用人材に何ができるのか、彼らの技術を業界内で見比べたとき、どの程度のレベルに位置しているのか、そんな基本的なことすらわからないのが当時の実情でした。

 価格競争力の高い新興国メーカーや、コトづくりのできる異業種の参入。競合他社との競争が激化する中、世間のDX化についていかなければ、次のビジネスイノベーションを生み出せない。とはいえ、キャリアのある人材は引く手あまたで採用が難しい。そこで、経営側の決断として、新入社員をAI活用人材として一から育てよう、ということになりました。

 基本方針における大きな特徴は、新入社員を特定の部門に配属することなく、2年間しっかりとAIについて学ばせる点ですね。受講生は勉強に集中できるため、自身の専門としてAI活用技術を伸ばせるメリットがあります。

ダイキン情報技術大学による講義の様子(2019年)
ダイキン情報技術大学による講義の様子(2019年)

下津:今期の受講生100名のうち約85%が、機械系、化学系、材料系などの非情報系学部出身者です。

 受講生が元々持っている、大学で培った専門分野と、ダイキン情報技術大学で学ぶAI活用技術。2つの専門分野を持つ「Π(パイ)型人材」を育てたいという想いが、同学の開講の背景にありました。

製造業支援の知見から、制度設計や業務プロセス改革まで支援

――ISIDでは、ダイキン情報技術大学の計画段階より同学をご支援されているとのことですが、本プロジェクトにおける御社の業務領域について教えていただけますか。

久保田:ISIDにはAIソリューションの開発やプロジェクトマネジメントを担う、「AIトランスフォーメーションセンター」という組織があります。AIやデータ活用の分野にてコンサルティングやプロダクト開発を行うメンバーで構成されています。私はその中でもAI関連のプロジェクトに特化した「AIコンサルティンググループ」に在籍していて、データサイエンスにおける戦略策定と実行部分を主に担当しています。

電通国際情報サービス(ISID) AIプロジェクトマネージャー/データサイエンティスト 久保田 敏宏氏
電通国際情報サービス(ISID) AIプロジェクトマネージャー/データサイエンティスト 久保田 敏宏氏

 本プロジェクトにおいては、ダイキン情報技術大学の開講以前、初期の計画段階から支援に携わってきました。現在は、支援を行うISIDのメンバーもさらに増え、受講生がプロジェクトを進める上で直面した課題や、技術的な問題についてアドバイスを行う他、報告会の講評など、PBLに寄り添う支援を行っています。

――PBL領域における御社の強みとは何でしょうか?

久保田:一言でいえば、「ITにおける実現力」だと思います。

 ISIDは日本におけるCAD、CAEの普及など、数十年にわたり製造業の支援を行ってきました。単にシステムの知識があるだけではありません。長年に渡り培った設計・開発業務そのものへの知見により、組織までを含めた深い課題認識ができるコンサルタントを多く有しています。このことから、システム部分だけではなく、業務プロセス改革やそれらを支える仕組み作りについてもお引き受けすることが可能です。

 本プロジェクトにおいては、教育サービスだけではなく、業務プロセス改革の提案や要件定義、システム設計・運用までを包括的に支援できる部分が、我々の強みだと考えています。

PBLのノウハウ部分をISIDが全面支援

――ISIDが、本プロジェクトを支援するに至った経緯を教えてください。

久保田:当社では本プロジェクトに関わる以前から、空調システムの故障予知に関するデータ活用についてダイキン工業様の支援を行ってきました。その後、ダイキン情報技術大学の前身となる、既存社員向けのAI技術開発講座において、PBLコンサルティングに携わったのが最初の経緯です。

 そちらの支援をきっかけに、2017年の冬頃、教育プログラムの策定や研修の運営方針などを、最初から一緒に考えるところから支援できないか、とご相談をいただきました。2018年から既存社員向けのPBLを開始するにあたって、私はそれらを一緒に考えるところから携わりました。

 PBLの大きな要素として、まずは実行計画を考えるフェーズがあります。取り組む課題は何で、目指す結果は何で、誰が使うのか。どのようなアルゴリズムを用いるのか。まずは、課題からゴールまでをしっかりと明確化するところから支援を始めました。

――既存社員向けの講座がパイロット版となり、現在のダイキン情報技術大学へつながったのですね。

下津:はい。当時はまだ新入社員向けではなく、既存社員向けの講座でした。我々がPBLに関するノウハウを持っていなかったため、ISIDさんへ全面的なご支援を依頼しました。

――ISIDを、コンサルティングとして起用するに至った決め手は何だったのでしょうか。

下津:AIの知識や製造業への深い理解はもちろんですが、組織や人のことをしっかり考えてくれる会社だと感じたからです。単に一つのプロジェクトを成功させるのが目的ではなく、プロジェクトを取り巻く組織や人がどう成長していくべきか、という部分まで考えられていて、我々から依頼していないことについても進んでご提案いただける点が好印象でした。

 あとは、久保田さんをはじめとした担当者の方々の人柄ですね。こちらのお願いに対して、基本的に「お断りします」ということがないんですよ。親身になって考えてくれる、真摯に対応してくれる点に魅力を感じました。

AI技術を実装した新サービスが早速登場

――講座を修了された方の配属先や、現時点でのご活躍について教えてください。

下津:今年の4月に、一期生が講座を修了しました。配属先は研究開発部門の他、営業系、サービス系、サプライチェーンマネジメントと様々です。

 一方で、現時点ではAIやデータ活用の体制ができていない部門もあります。そのような部門の支援を目的として、ダイキン情報技術大学の修了者で構成される部署を新たに設立しました。

――新たな部署の設立までされているのですね。その部署ではどのようなご支援をされているのでしょうか。

下津:各部門の抱える課題をテーマとして公募し、新設部署がソリューションを提案します。ダイキン情報技術大学のPBLを一歩進めて、技術者の育成と業務遂行を同時にする体制です。

――ダイキン情報技術大学の受講生が実際に取り組んだテーマなどあれば教えてください。

下津:コーポレート系のテーマですが、「新卒採用において、学生からの質問に24時間いつでも答えるチャットボットを導入したい」という相談があり、LINE上に公式アカウント「DAIKIN RECRUITMENT」を本年3月に開設しました。就活生にとって気軽に情報収集できるツールであると同時に、当社にとっては採用における質疑対応工数の削減が見込まれます。本チャットボットは、人事本部採用グループとダイキン情報技術大学の受講生が共同で開発しました。

LINE公式アカウント「DAIKIN RECRUITMENT」のトーク画面
LINE公式アカウント「DAIKIN RECRUITMENT」のトーク画面

下津:他にも、季節による空調の需要変動予測や最適化など、年間何百というテーマに取り組んでいます。多産多死しないといいモノは生まれないので、そういう意味では今、経験値の積み重ねができているなと感じています。

人材の高レベル化と課題に沿った内製化へ

――今後はダイキン情報技術大学を通じて、どのような形で事業の発展を実現していきたいとお考えですか。

下津:現在、当社は「ビジネスイノベーション」と「プロセスイノベーション」、2つのミッションを抱えています。ビジネスについては、モノづくりだけではなく、コトづくりへの挑戦ですね。プロセスに関しては、無駄の多い事業や業務の革新を進めたい。AI技術を活用して、2つの大きなイノベーションを生み出すことが今後の目標です。

 そのためには、単なる人数合わせではなく、自ら課題を発見しテーマを作れるような人材育成について、今後もISIDさんにご協力いただきたいと思っています。

――ISIDとしては今後どのような形でダイキン工業を支援されるのでしょうか?

久保田:今後のダイキン工業様は、製品強化や業務プロセス改革を目指した社会実装、要件定義やシステムの設計に取り組み始めるフェーズだと考えています。新たなフェーズでは、データサイエンスに関する知見だけでなくAIを含めたシステムを設計・運用するための技術や知識が求められる点において、これまでとは異なります。

 当社は、ダイキン工業様の内製化を本気で支援するつもりです。その上で、引き続き足りないリソースを我々が提供したいと考えています。難易度の高いエンジニアリングやシステム開発の人的リソース、さらにISIDが長年の知見をもとに作り上げたAIプロダクトなども活用できるテーマがあれば、是非我々を頼っていただければ、と思っています。

製品強化や業務プロセス改革に役立つ「AIプロダクト」をWebで紹介中

 ISIDでは、本記事でも紹介したAIの知見と技術を、より迅速に各企業へと届けるため、AIプロダクトを続々と開発しています。文書活用AIソリューション「TexAIntelligence(テクサインテリジェンス)」、図面チェックAIソリューション「DiCA(ディーカ)」、ユーザー主導型AIモデル開発と自動化のソリューション「OpTApf(オプタピーエフ)」といった各プロダクトの詳細が見られるWebページはこちら

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この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/12/23 10:00 https://markezine.jp/article/detail/35014