サービス構想のきっかけは専業主婦の母と研究者の父の姿から
江端:まずは、メリービズの成り立ちから現在に至るまでの話を聞かせてもらえますか。いつ頃から現在のような事業を展開しようと考えていたのでしょうか。
工藤:メリービズの前身であるリブを立ち上げたのが、2011年。当初はコンシューマー寄りのサービスを提供していました。ただコンシューマーの関心を得るのは本当に大変で、なかなか上手くいかなかったので、方向転換することにしました。改めてテーマを選ぶにあたり「どうせやるなら自分の人生をかけられるものがいい」と考えるようになり、幼少期の原体験が思い起こされたんです。
江端:どんな原体験だったのですか?
工藤:両親それぞれにまつわるエピソードがあります。まず母親は、私が生まれたことでそれまでに築いたキャリアを手放し育児に専念することを選びました。そうして育ててもらったことに感謝している一方で、母親の幸せを考えるとその選択がベストだったのか、もっと良いバランスがあったのではと思っていました。
一方で父親は、カナダの国立研究所で働く研究者でした。根っからの研究好きで、寝食を忘れて研究に没頭していたような人。研究所にいながら小さな会社を持っていたので、税申告の書類の作成などを作るのですがそうした作業に不得手で苦戦している様子を見ていました。そんな姿を見て、子どもながらにやりたくないことに時間を割かざるを得ないのは何故なのか、疑問に感じていました。
その原体験がメリービズをおこす大きなきっかけとなり、また自分にも子どもが生まれたことで、子どもに対してより良い社会を残すことを本気で考えるようになりました。色々な課題が世の中にある中、ビジネス領域で何ができるかにチャレンジしているのがメリービズです。
社名のMerryは「楽しい」、Bizは「ビジネス」の意味で、ビジネスを楽しくするのが我々のビジョンであり、そういう世界を構築することが私たちの究極の目標です。
江端:なるほど。その結果として、元々経理に携わっていた主婦も含めたいろんな方々のスキル・経験を活用した経理業務のアウトソーシングサービスというビジネスモデルが誕生したんですね。
工藤:そうですね。最初はレシートや伝票の入力代行から始まったサービスでしたが、ユーザーニーズは別にあったことがわかり、紆余曲折も経ながら、今の「バーチャル経理アシスタント」サービスの形になりました。
経理業務を代行する「バーチャル経理アシスタント」
江端:「バーチャル経理アシスタント」について、仕組みや特徴を教えてください。
工藤:端的に言うと、“オンラインなのに隣にいるような”経理チームがつくれるサービスです。お客様の経理業務の「特性」や「業務量」、「難度」に基づいて、基準をクリアした累積登録者数約900名(2020年10月現在)の経理人材の中から専属のプロジェクトチームを組成して、オンラインで経理業務を担当します。
導入にあたっては、コンサルタントがヒアリングして経理業務の棚卸しやフロー整理をし、マニュアルとして明文化、タスク分解してスタッフに振り分けます。組織デザインと業務デザインの両方をしっかりやって、持続可能な形にしていくためにチームをお貸しするようなイメージです。
「経理やバックオフィスの人手が足りない」「経理専門人材の採用が難しい」といった企業課題を解決し、本業に集中してもらえるよう環境を整えること、もう一方で、有能なのにライフステージの問題で働けない環境にいる人達に対し、適切な量・レベルの仕事をお渡しすることで、双方にとってハッピーな状況を作りたいと思っています。
そのためにも働く側を原価として搾取するのではなく、個々のスタッフのレベルを上げながらさらなるバリューを生み出し、コーディネートすることによって適正な価格をお支払いいただくような形でサービスを展開しています。